アテネの悪夢
アークンさんの危機一髪というお題で書いた随分前の記事。
なんとなく投稿しそびれてましたが、ちょっとここのところ書く気力が乏しく、皆さんの記事を読むことだけに時間を費やしていましたが。
せっかく続いた毎週投稿を維持すべく、未投稿のものをあげてみようとエナジーセイブモードです。
よかったら是非。
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何か危機一髪ってハプニングあったっけ?と思い巡らせると、思い当たることがいくつかあって、結構色々あったんだなあと振り返ってみました。今回はこのアテネでの思い出で参加させていただきます。
おおっと危ない!と怖い思いをしたわけではなく、気づかず無傷で事なきを得たけれど、実は危なかった、そんな話です。
それは約30年近く前の話。
当時私は機内通訳として月に一度外資系航空会社のフライトに乗務していました。まだ仕事について間もない私は常にベテランの先輩とペアで乗務。その時もショートカットがとてもよく似合う綺麗なT先輩と一緒でした。
8時間近くの乗務を終え、そのまま休みたいところなのですが、時差を克服するべく先輩に誘われるまま、アテネ市内のプラカという場所に出かけることにしました。無理せずのんびりウィンドウショッピングを楽しみ、いい時間になったのでタクシーを拾おうとしたその時です。
「こんにちは、日本人ですか?」
とても流暢な日本語で話しかけてくる男性がいました。こういう人は要注意。私も先輩も警戒します。でもそんな私達に話す隙を与えず、次から次へとまあよく喋ること。そして話は結構面白いのですが、とにかく長い。
頭の切れるT先輩は誘導尋問チックな彼の質問に更に質問で返して対抗。彼の話を要約すると。
空手の有段者
世界の大会で優勝経験アリ
日本に何度も行ったことがあり長期で滞在したこともある
日本に友人がたくさんいる
日本の事はとても詳しい
と言ったところ。これをすごいスピードで話す。
「私が神なら地球上の人みな殺す。殺して新しい世界を作りなおす」みたいなちょっと壮大な思想論も盛り込んでくる。
「日本人はみんなダメ。昔は良かった。でも今はダメ。もう空手の大会も日本人優勝しないよ。おかしいよ。」と問題提起、そしてダメ出し。本当にこの人かなり面倒臭い。
でも最終的な彼の目的は私達を食事に誘いたいということ。そう、ナンパだ。採算「日本の心」とやらの蘊蓄を聞かされ、20時間以上睡眠をとっていない私はもう心ここに在らず。イライラが怒りに変わった。
約1時間近く続いた討論は先輩の最後の一撃でめでたく終了。
「本当に日本の心がわかるなら、私達がこの会話に迷惑していること、今すぐあなたの前から去りたいことはわかるよね!それじゃ。」と彼が息を吸った瞬間に言い放ち、それを合図に私と先輩は歩き始めた。
「あなた達普通の日本人じゃない。」と苦笑いして、小走りで追いかけてくる。
「記念にこれあげる。」
と先輩によくわからないポスターのようなものを押し付ける。
足を止めることなく、そのままタクシーを拾いホテルへ。タクシーの中でそのポスターを開けてみると、紛れもなく今話していた怪しい彼が柔道着で蹴りを入れてる。どっかの空手トーナメントのポスター。もう笑うしかない私達。
先輩に押し付けられ結局私がホテルに持って帰ったポスター。だけど触るのも嫌でそのままホテルに置いてきてしまいました。
滞在中も帰りの乗務でもT先輩と、強烈だった彼の話が止まらない。合流した他の同僚にも話すと、「えー変な人!でもちょっとみてみたい。」などと盛り上がり、「どうしてポスターを持って帰ってこなかったのー」と同僚に叱られてしまいました。
さて、その後数ヶ月が過ぎ、そろそろギリシャでのこの変な出会いのことを忘れかけたある休日。家でのんびりワイドショーをみていた私は息が止まります。
嘘でしょ!!
テレビの画面一杯にで見覚えのある彼の写真が容疑者としてアップで映っていました。
まさか。。。?
その名前も確かに聞き覚えがあります。彼は当時ちょっと日本を騒がせたイラン人。イタリヤで卒業旅行に来ていた日本人学生を6人強姦したという事件の容疑者。
あまりのショックで事態の収拾が追いつかない私はすぐにT先輩に電話します。私の電話にすぐに出てくれたT先輩。
「あ、メイメイ(私のこと)も見てた?」
良かった。説明する手間が省けた。二人でやっぱりあの人変な人だったよね!絶対怪しかったよね!と思いっきり振り返って覚えていることの詳細を擦り合わせました。
笑い話だったのに笑えなくなってしまった。一つ間違っていたら私達も被害者???絶対にあの人について行くことはないにしても、かなり強引だったし、とにかく弁が立つ。何だか急に世界が小さく感じられました。
被害者の大学生達には何と言ってあげたらいいのか、後味の悪いニュース。この事件に色々と酷評する人がいたけれど、「あなたは彼を知らないでしょ?」とちょっとイラ。
本当に言い表せないスケールの大きい変な人。頭も異常に切れて、とにかく相手に話させない。あの人ならそういうことするかも、と妙に納得してしまったりも。
当たり前だけど、危険はいつも隣り合わせ。安全そうに見えても、旅慣れているつもりでも、ちょっとうっかりは大惨事に繋がる、そんな教訓を得た出来事でした。
オチのない話ですいません。
皆さん、国内でも国外でも、旅行中の開放感を楽しむ中気づかないうちに惨事に巻き込まれることのないよう、くれぐれも気をつけてくださいませ。
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