Kaidan 3夜目
今回のは、単なる経験談です。
まぁ、怪異には違いないのですが...。
以前住んでいたのは、いわゆる戸建の借家でした。
変わった作りをしていて、2階に2部屋あるんですが、廊下がないので、必ず1部屋をまたいでいかなければなりません。
当時、家族4人で暮らしていて、2階の一番奥の部屋は私が使っておりました。
そして、階段の上がり口の部屋は妹が使用しており、この部屋を通らなければ自分の部屋に入ることができません。
まったく不便なつくりでした。
ちょうど、大学受験の頃の話です。
夜中、部屋の電気を消して、デスクライトだけで勉強をしていると、時々衣擦れの音が聞こえるようになったのです。
夜の夜中に妹がこっそり後ろからやってくるような、ライトノベル的な展開はないので、不思議な感じがしました。
第一、襖を開ける音がしていない。
窓も開けていないので、風でカーテンが揺れているわけでもない。
だとすると、なんだろう?とは、思いましたが、何故かそれを無視して受験勉強に没頭していたわけです。
まぁ、我ながら猫並みの集中力があったと思いますがね(笑)
そんな事が、何夜か続いた後にそれは起こりました。
その日は、両親と妹がそろって外泊をしていました。私は受験生なので独り居残りだったわけです。
夜中に布団の中で、ふと眼が覚めました。
音がする。例の衣擦れです。
床に就いてから、この現象に会うのは初めてでした。
もともと寝つきはいい方で、一度寝るとなかなか起きない性質です。だから気が付いていなかったのかもしれませんが...。
しかし、今夜のはちょっと様子が違います。
だんだん、その衣擦れが近づいてくるんです。展開的にはその方向に目を向けることは、出来ないじゃないですか。
やがて、その音は寝ている布団の足元あたりまでやってきたようです。
ますますもって、目を向けられません。
やがて、足元あたりの布団に圧力を感じました。ちょうど人の足一つ分くらいの圧力です。
寝ている私の体をまたぐように、一歩一歩圧力は近づいてきます。
これはまずい。まずい展開です。
よくあるパターンなら、これが胸元まで来ていきなり大きな圧力がどーんとかかるのでは?
案の定、胸元の圧力は増しました。いよいよ眼が開けられません。
その時、これも定番の台詞を心の中で強く念じました。
自分には、あなたを助ける力がないから、このまま立ち去ってくれないか?
すると.....すっと、その圧力はなくなり、体も楽になったんです。
衣擦れの音もしません。だからといって、目を開けるのも、なにやら恐ろしいのでそのまま寝入ってしまいました。
朝起きて見渡すと、部屋の様子は変わったところはないように見えました。1点を除いては。
布団に、痕跡があったんです。
昨夜、圧力を感じた通りに、掛け布団がへこんでいる。
体をまたいで1歩1歩の。
その後は、何もなく、同じ怪異は訪れませんでした。
でも...そもそもどうして2階の作りはああいう作りだったんだろうか?
部屋をまたいでゆかなければ奥の部屋に行けないという......。
もうすでに引越してしまい、記憶のかなたになってしまいましたが...。
その後の展開はなく、このお話は、ここでおしまい。