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夜更けと春

また1つ歳をとった。
でも当たり前のように何かが急に変わった訳じゃない。
私は私のままで別人になった訳では無いし、スーパーサイヤ人になった訳でもない。
能力値は普通どころか社会の歯車として機能していないポンコツ中のポンコツだ。
そんな私でも否応なしに歳はとる。憧れていた大人からはどこまでも外れたままその年齢を追い越していく。気付けばどこを見上げればいいのか分からなくなっていた。

桜が散る。春生まれ故に桜には思い入れが強かったりする。咲いている時にしか気付かれなくても他の季節には忘れられていても、出会った人の道に少しだけ花を添えられていたら、花道を作れていたら、そんな事を思ったり。でも微かな希望を抱くこともある。叶わぬ望みを願うことも。
どうか散ってしまっても私のことを覚えていてくれないだろうかと。
甘えだと分かっていても、わがままだと分かっていても、ほんの少し、私を記憶の片隅に置いてくれたら、なんて。

昔友人に言われた。
「自分の道は自分で花道にするから、一緒に歩いて」と。
とても嬉しかったのを覚えている。
今どこで何をしているか分からない人との一時が心の色を変えていったりする。
その友人にとても救われたし、その友人のおかげで私は余計桜に惹かれるようになったのは小さな話。いつかそんな人と道を歩いてみたいな、なんて思ってみたりもする。今日の私は若干夢見がちだ。

春が来て、桜が咲いて、憧れていた大人には程遠い毎日を生きて、桜が散っていく。
これが私の春。希望なんて桜の花びらを掴み取るくらいの難易度だけれど、今日も私は呼吸をしている。桜が散っても葉が芽吹くように、誰の記憶にも残らなくとも、ひっそりと呼吸をする。私だけのペースで、時々誰かと歩きながら、すれ違ったり、挨拶したり、手を離したり、繋ぎ直したり、そうやってなんとか今日をまた生きる。
明日のことを考えるのはまだ怖いから、今日だけ、今日の呼吸の仕方だけ考えて。

これを読んでくれた、通りすがっただけかもしれない、はたまたこれからまた出会ってくれるかもしれない貴方は、今日どんな日を過ごしていますか。朝が怖い私もなんとか今日を生きました。1つ歳を取りました。
好きだと思えるものに、最近出会えましたか
素敵だと思えることが、最近ありましたか
嬉しいと思えることが、最近ありましたか
大切な誰かはいますか

1つでもいい、当てはまるものが貴方の日常にある事を願いながら私は花道を作っています。きっと大丈夫、貴方の日々は大丈夫、貴方が過ごしている今は花道の途中だよって。
こんな拙い文章を読んでくれた貴方にどうか届きますように。
たとえ朝が怖くても、明日が怖くても、少しずつ、一緒に呼吸してくれる貴方へと。
生きるのは今日も重たいけれど、愛せない今日も貴方自身も、私は大切に想っています。
重たい荷物で下を向く時は花びらが落ちてるかもって思ってくれたらいいな。

それじゃあまた、眠れない夜に会おうね

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