【TOR】2021年ドラフトレビュー

随分と時間が経過してしまいましたが、2021年のドラフトについてまとめました。

1順目 ガナー・ホグランド RHP

高校生の頃からPITから1順目補完で指名された有望株で、ミシシッピ大学に進学した。2年次からはミシシッピ大のエース投手として活躍していたが、5月にTJ手術で全休に。ブルージェイズのスカウト陣はTJ後のホグランドと定期的にコンタクトをとっていたようだ。
2年次までは直球が89~93マイル程度だったが、3年次は92~95マイルを計測してスタッフ面でも成長が見られた。最終年度は奪三振率13.8、与四球率は2.4とスタッツも優れている。変化球はスライダーとチェンジアップで、平均以上のクオリティでしっかりとコマンドできる。
サマーリーグでは野手としてもプレーしていた。マノアもそうだが、この球団は二刀流選手を好んで指名する傾向にある。

3順目 リッキー・タイドマン LHP

ブライス・ハーパーが在籍していたJC(ジュニアカレッジ)の出身。昨年も2~3順目指名クラスの有望な選手だったが、コロナの影響もあってかJCに進学した。今月で19歳の選手で、年齢的には高校生と変わらない。昨年から球速、体格ともに伸びてきており、直球は93~94マイルでを計測する。ややバラつきはあるものの、年齢の割にはコントロールも良く完成度も高め。チェンジアップはプラスのピッチ、スライダーも平均レベルで、ソリッドな先発投手に成長することが期待される。

4順目 チャド・ダラス RHP

JCから4年制のテネシー大学にトランスファーした選手。ピアソン指名からの傾向だが、ブルージェイズのスカウトはJCにかなり力を入れている。21年シーズンはハイレベルなSECで奪三振率は10.7、K/BBは6.1と素晴らしい成績を残した。直球は最速で97~98マイルを記録し馬力は十分にある。MLB.comのレポートではカッターの評価が高く、Baseball Americaのレポートではスライダー、チェンジアップが高評価。180cmとやや小柄で中継ぎ転向のリスクはあるものの、BAのレポートでは先発に留まれると太鼓判を押されている。

5順目 アイブ・カーター RHP

PHIドラ1のアンドリュー・ペインターに次いでフロリダ州内で有望とされる高校生投手。体格に優れ、直球は最速で95マイルを計測する。大柄かつアスレティックで先発としても十分に活躍が期待できる一方で、メカニクス、コントロールの評価はスカウト内でもやや割れている。元々はカーブをよく投げていたが、現在はスライダーがセカンドピッチで、チェンジアップも投げ始めている。
マイアミ大のコミットメントでサインは難航が予測されたが、5順目のスロットの350Kを大きく上回る850Kで契約に成功した。

6順目 ヘイデン・ジェンガー RHP

ミズーリ州立出身の右腕。カレッジ時代はほぼ一貫してリリーバーとしてプレーしている。90マイル中盤から最速98マイルの直球が最大の武器。スライダー、チェンジアップも平均レベルのクオリティがあり、先発適性もありそうなクリーンなデリバリーで投げる。コントロールも比較的安定している。
既に1A+で6位試合に登板しており、10回を19奪三振、2与四球と圧倒的な投球成績を残しており、即戦力リリーバーとしての期待がかかる。

7順目 ジェイデン・ルッド OF

高校生ながら野球IQの高さを評価されている完成度の高いタイプ。ギャップヒッターでソリッドなコンタクト能力を持つ。身体能力の高いタイプではなく、プロではLF向けと評されるが、マイナーではCFを守っており、成績もまずまず。

8順目 ハンター・グレゴリー RHP

シニアの選手で、今年で23歳になるややプロ入りは遅くなった選手。オールド・ドミニオン大学というややマイナーカンファレンスの大学出身だが、カレッジではまずまずの水準を残している。年齢的にもマイナーで早期に結果を残したい。

9順目 コナー・ラーキン RHP

ペンシルベニア州立大出身でこちらもシニアの選手。1年次から実戦登板が多いが、やや伸び悩んでいる感もある。直球は最速95~96マイルを計測するのでリリーフ転向の可能性もあり。スライダーがセカンドピッチで、チェンジアップも時折投げる。

10順目 コナー・クック RHP

2年次までは中継ぎだったが、3年次は好成績を残して先発投手としてもプレーすることの多かった投手。平時は90マイル前後だが、最速で93~94マイルを計測する。セカンドピッチのカーブが強力でプラスのピッチ。

11順目 トレントン・ウォラス LHP

アイオワ大のエースで、10順目以内の指名が有力視されていた投手。直球は90マイル前半で変化球もプラスのピッチがあるわけではないが、実戦的な投手で、21年シーズンも73回106奪三振と高い奪三振率能力を有する。一方で、与四球率がやや高めで、プロ入り後のマイナーリーグの成績も四球の多さに苦しんでいる。

12順目 ライリー・ティロッタ 3B

3年次までは平々凡々の成績だったが、シニアの今シーズンはOPS1.147と一気に覚醒した選手。プロ入り後もOPS1.001と好調を維持している。盗塁数も多く、今年の好調をプロ入り後も維持できれば面白い存在になりうる。

13順目 マット・スバンソン RHP

こちらもシニアの投手。21年シーズン序盤は90マイル前後だった球速が、シーズン終盤では90マイル中盤まで向上した。大柄な体格で、球速がさらに伸びれば化けるかもしれない存在。

14順目 ダミアーノ・パルメジアーニ 3B

ベネズエラ生まれカナダ育ちの選手。元々は4年制の大学に在籍していたが、JCにトランスファーして異次元の打撃成績を残した。パワーポテンシャルは非常に高く評価されているが、一方でパワーツール以外の能力の評価は低め。守備も3Bは厳しくLFへコンバートが有力視されており、好投手相手のコンタクト能力もやや疑問視されている。それでもパワーツールの評価は高く、10順目以内の指名が予測されていた選手。

15順目 ギャレット・スペイン OF

オースティン・ペニー州立大というマイナー大学でプレーしていたシニアの選手。カンファレンスのレベルは高くないものの、大学通算でOPS.926と好成績を残している。プロ入り後は主にLFでプレーしている。

16順目 ミカ・バックナム RHP

カナダ人高校生で最速95マイルを計測する素材型投手。ブルージェイズは下位でカナダ人を指名して、結局サインできずに進学するパターンが多いが、バックナムもその例に漏れず、ブルージェイズとサインせずに進学。

17順目 クーパー・ベンソン LHP

昨年はシーズン中断で登板は4試合のみ、今年は2試合目の登板後にTJ手術となりカレッジでは結局27イニングしか投げられなかった投手。球速は90マイル程度で、飛びぬけた変化球があるわけではないが、プラスのコマンドで好成績を残せる選手。

18順目 ジミー・バーネット LHP

3年次までイリノイ大でプレーしていたが、最終年はセント・レオ大というかなりマイナーな大学でプレーしていた。カレッジの成績ではやや制球に苦労している。

19順目 フアン・ゴンザレス C

JC出身。同姓同名に有名な野球選手がいるが、ベネズエラ出身なので関係はなさそうだ。20歳とJCの選手でも比較的若い。

20順目 ルーク・ホールマン RHP

父親もマイナーリーガーで3Aまでプレーしていた。しっかりとした体格から93~94マイルの直球を投げ込み、アスレチックな選手でもある。アラバマ大のコミットメントで、スカウトはサインできると見込んでいたが、結局下位までスリップし、ブルージェイズともサインせずに進学。

総評

シャトキンス体制になってから、ドラフト2位以降の指名は疑問符がつく指名が多かったです(現在のところ順調と言えるのは2順でビシェット、5順でビジオを指名した2016年くらい)。今年はスプリンガーの獲得により2順目の指名権がありませんでしたが、その割には充実感ある指名と評価できます。

1順目のホグランドはややハイフロアー過ぎる感はあるものの、元々は全体10位以内の指名が有力視されており、手堅い指名と言えそうです。21年シーズンは球速も上昇しており、アップサイドもまだまだあると判断したものと考えられます。先発有望株の層が手薄なブルージェイズが必要とする即戦力のカレッジ投手で、23年シーズンにはメジャーデビューの可能性も十分にありえます。

加えて、3順目以降の指名についても例年と比べると好印象。タイドマン、ダラス、カーターは3順目あたりで指名されてもおかしくない選手で、ハイレベルな投手3人と契約できたのは評価に値します。特にカーターのサインは難航が予測されていましたが、しっかり口説くことに成功しました。
カーターの契約金に相応の資金を投入したものの、6巡目のジェンガーは既に1A+で好成績を残している即戦力性の高い中継ぎで、7巡目のルッドもプロデビュー後まずまずの成績を残せています。

10順目以降でも、トレントン・ウォラスや、ダミアーノ・パルベジアーニといった10順目以内で指名されてもおかしくない選手を複数指名しており、充実度は高いです。欲を言えば、ミカ・バットナム、ルーク・ホールマンの高校生のどちらかとサインできれば最高でしたが、カーターのサインに相応の契約金を要したため、サインできなかったのは仕方ありません。

野手に比べて投手の有望株にやや欠くチーム状況下で、チームのニーズに合わせて19人中14人が投手となりました。即戦力の高いカレッジ投手、アップサイドの大きい素材型投手を獲得し、今年はかなり巧く立ち回ったドラフトという印象です。もちろんドラフトは蓋を開けてみなければ評価できませんが、このような指名が続けられれば今後もマイナー組織は平均以上のレベルを維持できそうです。



いいなと思ったら応援しよう!