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『月夜のでんしんばしら』と賢治
ドッテテドッテテ、ドッテテド
「見出し画像」の写真を見て、このフレーズが頭をよぎりました。宮沢賢治の童話『月夜のでんしんばしら』の一節です。
と同時に、意識の奥深くに眠っていた「あの感覚」が、よみがえりました。初めて読んだ時の「あの感覚」。それが、いつだったか。思い出せません。
ざわざわとした不安感と、心細さ。
それに、なんとも言えぬ、不穏な雰囲気。
とても、不思議な物語です。
(青空文庫)
宮沢賢治。多才な人でした。「詩人」であり、「童話作家」。そして、教師や農業指導者・技師としても活躍していました。
この作品は、賢治初めての童話集『イーハトヴ童話 注文の多い料理店』に収められています。刊行したのは、1924年(大正13年)12月1日。ちょうど100年あまり前です。
代表作『注文の多い料理店』をはじめ、『どんぐりと山猫』『かしわばやしの夜』など、収められた9つの作品の中でも、とりわけ独特の世界を醸し出しているのが、『月夜のでんしんばしら』です。
不気味すぎて、幼心に「おののいた」というのが、正直な印象でした。
ところが、ウェブサイトで、絵本になった『月夜のでんしんばしら』に対するコメントを見ると、小さなこどもたちに、とても人気のある作品のようです。特に、読み聞かせでは、「ドッテテドッテテ、ドッテテド」と、リズミカルなフレーズが繰り返し登場するたび、こどもたちの心をつかみ、ウキウキさせてくれるみたい。
賢治は、こんな言葉を残しています。
雲からも風からも
透明な力が
そのこどもに
うつれ
『あすこの田はねえ』下書稿(二)
「透明」という言葉を好んだ賢治。
けれどもここはこれでいいのだ
すべてさびしさと悲傷とを焚いて
ひとは透明な軌道をすすむ
『小岩井農場 パート九』
その感性で、たくさんの作品を通じ、何を伝えようとしたのか。あらためて、読み直してみたいと思いました。
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