ありがとう・・・
これは先輩から聞いた話。
先輩のお友達は結婚してから中々、子宝に恵まれなかった。二人とも子供は大好きだ。
出来るなら沢山の子宝に恵まれたいとすら思っていた。なのに毎月のお知らせと共に肩を落とす…。
不妊治療の甲斐もなく、ただただ焦燥感に駆られる日々になってきた。
そんな日々を送って結婚生活も長くなってきたら子供を授かるのを諦めて、可愛い子猫を貰ってきて、もの凄く愛して可愛がった。我が子同然のように。
その猫との生活は楽しくて動物特有の癒しを毎日与えて貰っていた。
その我が子同然の愛しいニャンコ。
外に出掛けても、規則正しく帰って来ていたのに今日に限って全然帰って来ない…。
嫌な予感と共に家のインターフォンが鳴った。
出ると近所付き合いのある方だ。
焦った声で「ねぇ!そこの国道で猫ちゃんが轢かれてるんだけど、お宅の猫ちゃんと似てるけど…?」
それを聞いて居ても立ってもられず現場に向かう。
道端に横たわっていたのは、紛うことなき我が子同然の猫。
その後の事は憶えていない。
近所の方によると、事故現場は酷いものだったらしく半狂乱になった奥さんが、飛び散った肉片をかき集めていたとだけ。
悲しい出来事。
立ち直れない奥さんの夢に亡くなった猫が出てきた。
「ママ…悲しませてごめんね…でも直ぐに逢いに行くから悲しまないでね……」
奥さんは号泣しながら、目が覚めた。
暫くして、妊娠は絶望的といわれていた、その夫婦に子供が授かった。
これを奇跡と言わずして何と言うのであろう。
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