仲井戸CHABO麗市 [THE Duet] 2005.05.09. ティアラこうとう
例年の鎌倉で行われていたふたり会が残念なことに無くなってしまったが、
今年からはこのTHE Duetがある。第1弾の今回は、僕は詳しくないのだが、フリー・ジャズ界ではそれなりに名があるミュージシャンで、麗蘭のベーシスト早川氏とも活動しているチェリスト、翠川敬基さんとのコラボである。
会場は都営新宿線の住吉駅、またはJRの錦糸町駅の近くの公園の中に建っている。すぐ脇には川があって、下町の雰囲気がいっぱいな、なかなか良い場所であった。建物は立派で大きく、キレイだ。開場時間で中に入ると、何ともこういう表現をしていいのか迷うが、とても可愛いホールであった。客席数が140ということだからある程度の想像はしていたが、本当に小さくてとても良い感じだった。
まず、開演前に会場に流されているBGMが素敵だった。誰の何という曲だろうか? 定刻から5分遅れで開演。まずはチャボがひとりで2曲。オープニングはこの季節にはぴったりな「庭」。しかし、最初はチャボも客側もどんなコンサートなのかお互いに探ってしまったのだろう。物凄い緊張感の中で進んでしまった。これは前回の鎌倉のイメージがあったのかな? 「あぁ~緊張した~。お前ら適当に騒いでくれよ~」と、曲が終わってのチャボのMCで一気に緊張が解けた。そして「SWEET HOME ティアラこうとう」と続く。ここからはいつものペースであった。
3曲目から翠川さんが登場し、ここから最後までふたりでの演奏になる。ふたりでの1曲目は「夏の色調」。初めてまともに聴くチェロの生音はまさに弦楽器!という素敵な響きで、僕はこの1曲で感動してしまった。「BLUE MOON」「You are the sunshine(of my life)」と続いた前半はうれしかったなぁ。中盤には間違いなく今回のハイライトだろう、ポエトリー・リーディングのパートとなった。「だんだんわかった」「本棚の詩」。そして「荒野で」「アイ・アイ・アイ」「自由の風」「DREAMS TO REMEMBER」「カルピス」「HORIZON」。翠川さんが弾くスタンダード・ナンバーとアドリブに乗って言葉を飛ばすチャボ。思い切り引き込まれる。
そしてポエトリー・リーディングのパートの最後は、新しく書かれたという雑文が披露された。「サンタドレスのテラス」。このタイトルは、印象派の巨匠、クロード・モネの絵のことである。この絵を図書館の閲覧室で観ているという風景から始まった、この亡き友人に捧げたであろうポエトリー。いや、チャボの想い、思い、叫び…。聴いていて胸がいっぱいになって、涙してしまった。「仲良し」という言葉は、とっても素敵な言葉だ。
後半は「打破」や「真夜中を突っ走れ!(Drive on)」などのハードなナンバーを挟み、ラストの「Song for you」までたたみかける。アンコールも入れて3時間。ラスト・ナンバーは「プレゼント」。実に感動的なコンサートであった。
細かいことを言えば、ギターとチェロが合っていないところがあったり、決まらない部分があったりしたし、照明ももう少し工夫して欲しいなどうるさい希望がありはしたのだが、全体的には満足いく内容だった。古井戸時代の「セントルイスブルース」を、チャボのギターとチェロでやるなんて新鮮な試みである。こういったものをもっと聴きたかった。
また、今回改めて感じたことがある。「打破」のようなダークで攻撃的なナンバーは、今のチャボにはもう似合わないのではないか? いまだに僕は、漆黒のソロ・アルバムと呼ばれた「THE仲井戸麗市BOOK」は大好きである。しかし、今のチャボがいるところは当たり前であるが違うのである。チャボの場合、あの当時の曲をやるのならば、その理由が必要だと思う。まさかサービスで昔の曲をやるような人ではないだろうから、その辺は何とも言えないのだが、僕の個人的な思いは、「もうBOOKじゃないんじゃないかな、チャボ」である。
THE DUetは定期的にやっていくようなことを言っていたが、既に7月公演は決定している。次は夏だ。こうなったら、このまま四季をテーマにしてやって欲しいと思う。<2005-05-10 記>