或る小学生の日の思い出
私は喫茶店で珈琲を飲むと、小学校2年生の頃の担任の先生の存在を思い出す。
毎朝アコースティックギターを教室に持参し、毎朝クラスの皆で歌を歌い、よくダジャレを言う先生だった。
「先生〜!ゆずの曲弾いて!!」
「あーた!そんな先生が知らないアーティストなんて…ゆずさないんだからね!?」
そう言ったユーモアに溢れる先生の話を少しだけしたいと思う。
私はというと居残り勉強や、学習図書室で夕方まで読書ばかりをしていた子供だった。
たまにふらっと教室に立ち寄ったりして、誰もいない静かな教室を独り占めするのが密かな趣味であった。
ある日、教室のドアを開けると先生がいた。
ネスレの紙パックと、紙コップを片手に。
先生は、放課後も校内をうろちょろしている私を咎めず、一言。
「お前も、珈琲飲むか?」
初めて飲むブラックコーヒーを恐る恐る飲んだが、深みのある味わいで、割と嫌いではなかった。
最近自分のあらゆるおかしな部分に気づいたのだが、私は子供の頃から祖母の輪廻転生についてや食物連鎖の話、命の循環などの話をし始めると止まらない、そんな、ちょっとだけ変な子供だった。
そんな部分を全て汲み取った上で、通知表にも「ユーモアなセンスのある子」とある程度オブラートに包んだ優しいコメントをくれた先生と、ゆっくり珈琲を飲みながら先生と語らう時間は、何だかただの子供ではなく、一人の人間として向かい合ってくれているような感じがして、とても特別な時間に感じられた。
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