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DAY-28 彼女の後ろ姿
今日バイトに行く途中、家の近くで小学校の同級生を見かけた。彼女は中学受験をしてカトリック系の女子校に通っている。家に遊びに行ったりする程度には仲が良かったはずなのに、もう4年近く話していないことになる。久しぶりに姿を見かけた彼女は、紺色のハイソックスと私よりも丈の長いスカートを纏っていた。
声はかけなかった。彼女はもう家に半分入っていたし、私は時間がだいぶぎりぎりで焦っていたから。
本当は、少し、勇気がなかったから。
昨年の1月22日、私は高校受験をした。私立の推薦の上に通信制だったので、作文と面接だけであっけなく終わった。面接に至っては、正直5分もかからなかったのではないかと思う。昨年は月曜日だったが今年は水曜日。曜日は変われど例年通り、今日も多くの私立高校で推薦入試が行われていたはずだ。
入試があるということは、在校生は登校しないということ。
それなのに、彼女は制服を着ていた。ローファーだったし、通学用らしきリュックを背負っていた。彼女は今日も学校に行ったのだろうか。
気になって検索をしてみた。彼女が通うその学校は中高一貫完全型で、高校からの新入生の募集はないそうだ、通りで。
彼女はきっと今までの3年間と10ヶ月も、これからの2年間2ヶ月も、毎朝早く起きて週6日、あの制服と共に学校に通うのだろう。
初めて出会った時には三つ編みだった彼女はミディアムボブに切り揃えていたし、小学校まではずっと裸眼だった私も今は眼鏡なしでは生活できない。
あの頃、教室という空間を共有していた私たちは、お互いに変化をして、生活は交わらないようになった。
大体の私立高校に通う高校生たちは、今日は学校は休みだったはずだ。私も今日は、生徒登校禁止日だった。
ではなぜ、そのことに実感がないのか。簡単だ。私は通信制高校に通っていて、入試があろうがなかろうが、大抵の平日を学校に行かずに過ごしているからだ。
もう慣れてしまった。「学校に通わない」ことが当たり前の日々に。
そのことに、少し虚しさを感じてしまう私は、どこかで選択を間違えたのだろうか。
これもまた、別の機会に思う存分書こうと思う。
今日見かけた彼女の後ろ姿を思い出して、文字を綴って、画像を探しながらふと考えた。
彼女は、私が創る「君」の姿に似ているかもしれない。
やっぱり、声をかければよかった。
かけれれば、よかったのに。