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好きな曲を好きなだけ ミクスチャーロック/ニューメタル編
ミクスチャーロック/ニューメタル。ヘヴィメタルからドラマ性や華美なギターソロを排し、リフワークを基調としミドルテンポでノリを重視した曲調に、ヒップホップやEDMの要素を採り入れた音楽スタイルの総称。オルタナティブメタルとかラウドロックとかそういう括りの1カテゴリーみたいな感じ。
Linkin Park - Papercut
このジャンルと言えばリンキンパーク。鮮烈なデビューからVo.チェスター・ベニントンの自死まで精力的に楽曲をリリースし続け、ミクスチャーロックの進化とメジャー音楽シーンへの台頭に多大な影響をもたらした。
他のバンドがヒップホップ性を重視した陽の楽曲、メタル性を重視した陰の楽曲に極端に振れがちだった当時に、そのどちらにも振れないスマートでスタイリッシュな世界観、アップテンポもバラードも難なく乗りこなす高い音楽性、ギターもドラムも極限まで無駄を排したソリッドなコンセプトを一貫したスタイルはまさに「Linkin Park」というジャンルそのもの。ファッションやアートワークも含め世界中に熱狂的なフォロワーを生み、似たようなバンドの乱立により早々に勢いを失ったミクスチャーロックシーンの未だ折れない屋台骨として君臨し続けている。
Korn - Blind
陰、陰、陰。当時、登場したばかりの7弦ギターを用いた凄まじい低音のリフとほとんど打撃音にしか聴こえないベース、鬱蒼としたねっとりボイスで悲痛に絞り出される歌声はニューメタルの最も濃厚なネガティブをコトコト煮込んで濃縮したドス黒い部分を形にする。
また、既存の音楽カテゴリーにインダストリアルをプラスして明確な姿にした功績は大きく、ニューメタルだけでなく他のジャンルにも多大な影響をもたらし、〇〇+インダストリアルという流行の一端を担う。また、その音楽性はEDMにも調和し、多種多様なリミックスが世界中のアーティストにより作成され、ダブステップの雄、Skrillexとのコラボレーション楽曲も存在する。
Slipknot - Before I Forget
マスクを被った9人組の大所帯。名前は知らずとも彼らの珍妙な姿はどこかで目にしたことがある人は多いはず。ターンテーブルにサンプラーにパーカッション2人。多くないか?いらなくないか?曲に音入ってなくないか?そんな感想はライブ観たら一発で覆ります。
音楽性は(楽曲によるものの)80%はメタル要素なので一聴しただけではニューメタルだと感じることは難しいかも。しかしながら、骨太で無駄のないギターのリフワークは一般的なヘヴィメタルから見れば断然インダストリアルで、ゴリッゴリのボーカルもノリはかなりラップに近い。
マスクのデザインで楽曲リリースの時期がひと目でわかるため、slipknot初心者はピンと来た時期の曲を見つけてそこから聴き始めよう。時期によって音楽性がそこそこ違います。
Limp Bizkit - Rollin'
ミクスチャーロック界の陽キャ代表格。
音楽性もさることながら、キャラクター先行でこのバンドを語ることも容易。簡単に言えば、Vo.フレッド・ダーストのメンタリティがあまりにもラッパーすぎて、ロックシーンでめちゃくちゃ浮いていた。名指しでディスりディスられて、いろんなアーティストとケンカして…。
社会への不満を持つ若者の気持ちを代弁し、鬱屈したマインドを過激に形にするミクスチャーロックが評価される中、大金稼いで遊ぶ!高い車買って女抱く!ヤクをキメる!と歌い上げ、いとも簡単に他のアーティストを名指しで批判し、本業のヒップホップアーティストからはニセモノだと叩かれ、ファンを公言すればロック好き、ヒップホップ好きの両方からバカにされた。憚らずに言うと、ニューメタルの寿命を大幅に縮めさせた存在(この辺のエピソードは永野のYouTubeチャンネルですごくわかりやすく解説されているので是非)。
ただ、メジャーシーンで大人気になるだけあって楽曲のカッコ良さは半端じゃなく、特殊メイクの変態ギタリストウェス・ボーランドの奏でるオリジナリティ溢れすぎてる奇怪なリフ、そのままでもトラックとして使えそうなヒップホップ純度100%のビート、そして切れ味抜群のラップが高い次元で融合し、いくら足掻いても他が真似することは不可能。そして年月が経ち、(1周も2周も回って)今や伝説の存在として世界中で評価されるまでになった。あとこんなキャラだからファンはいても真似するバンドがいないって言うのも大きいよね、と思う。
Zebrahead - Hell Yeah
陽と言えばゼブラヘッドも。どちらかと言えばこちらはポップパンク+ヒップホップのミクスチャーロック。
底なしに明るいアップテンポのパンクを下地に、キレキレのラップが冴えるキャッチーでブチアゲな楽曲に隠れ、メタル仕込みが隠しきれないテクいギターソロも花を添える。
とにかくサウンドトラック映えのする曲が多く、ソニック・ザ・ヘッジホッグの主題歌をはじめとしてあらゆる洋ゲーに曲が収録されており、ゲーマーの俺はここにもゼブラヘッド!とニヤついたもんです。
Static-X - The Only
自分たちの音楽性を「イビル・ディスコ」と称する、ロサンゼルス出身のバンド。
テクノやEDMを基調としたインダストリアルなキーボードを採り入れた機械的な楽曲に、スラッシュメタル然とした怒声に近いボーカルスタイルが特徴。誕生以来複雑化・高度化し、曲が難解になっていくバンドが多かった中でシンプルでキャッチーな楽曲を多く発表し、ミクスチャーロック好き以外にも広く評価された。髪をツンツンに逆立てたボーカリスト ウェイン・スタティックは2014年に死去。RIP。
山嵐 - 山嵐
湘南出身の7人組ニューメタルバンド。90年代から本場の空気ムンムンに漂うガチなヘヴィサウンドを奏で、後発のDragonAshやORANGERANGEと言った日本におけるミクスチャーロックブームの土台を作り上げた偉大な存在。いち早く7弦ギターを取り入れた攻撃的なリフとガンガンにブチ上がるグルーブ感に埋もれがちだが、一貫して日本語を用いたラップ(しかもめちゃくちゃレベルが高い)は洋楽の真似に一切収まらない国産ミクスチャーならではのスタイルを提示している。
Liv - Without you
お騒がせ俳優、押尾学のミュージシャン名義。
変な意味じゃなく、俳優が音楽やる時にこんなちゃんとしたミクスチャーロックやる?!それ選ぶ?!という驚きがあった。実際、MVの世界観やバンドメンバーのファッションや楽器はバキバキの本物志向だし、バイリンガルだけあって英語の発音はガチだし、外タレにはまずいない甘い声質の微妙な違和感も斬新でカッコイイ。
他の楽曲では7弦ギターを使用していたり、バックバンドのメンバーが後年に凄いプロデューサーになっていたりと、ロックオタクが見逃すにはあまりにも勿体ない逸材。
Pleymo - United Nowhere
フランス出身の6人組。アメリカに次ぐヒップホップ大国のフランスからセンセーショナルなデビューを果たし、当時珍しかったフランス語でのラップとslipknot譲りのゴリゴリに攻撃的な楽曲で唯一無二の存在だった。
メンバーの演奏も少々特異で、ワウペダルやアーミングを多用し奇怪な音を奏でたと思いきやBメロ全てピックスクラッチによる効果音担当になったり、タッピングもスラップもこなすバカテクベーシストにサイドボーカルに徹しすぎてほとんどターンテーブルの前に居ないDJなど、キャラクター性も高い。またかなりの親日家であり、MVもサマーソニック出演時の映像。メンバーも一様に日本製の楽器を使用している。
97年のデビューから現在までフランスでは高い人気を誇るカリスマバンドであり、彼らから影響を受けたバンドもフランスに多数存在している。
RISE OF THE NORTHSTAR - Welcame[Furyo State Of Mind]
こちらもフランス産ニューメタル。ニューメタルに珍しくかなりテンポの速いスラッシュメタル系から影響を受けており、ダイナミックなギターソロも展開するが、ボーカルスタイルはかなりラップ寄りといういそうで居なかった独特の音楽性を持つ。
また、特筆すべき点は見ただけでわかるジャパニメーション信仰。メンバー全員が学ランに身を包み、MVは全曲日本語歌詞付きという丁寧さ。バンド名は北斗の拳が由来で、歌詞にもドラゴンボールやROOKIES関連のワードが頻繁に登場し、ボーカリストはベジータを名乗っている。
とにかくノれる楽曲とそのキャラクターは早い段階で世界中で認知され、日本を含む各国での大規模なライブを成功させている。
Blind Channel - Balboa
フィンランド出身の若手バンド。長らくニューフェイスがいなかったニューメタルに彗星の如く現れた。最初名前見た時YouTuberかと思たよ。
ツインボーカルがごちゃ混ぜにラップもスクリームもメロディーもこなす珍しいスタイルに、メタルコア強めに質実剛健にリフワークに徹するギター。楽曲を華美に彩るターンテーブルは今どき珍しくスクラッチプレイ多めでめちゃくちゃ好み。あとこのターンテーブル担当が曲を作っているらしい。だからか。
若手なだけに曲のサウンドはチャラめだが決して軽薄ではなく、流行のポップスやヒップホップの要素を幅広く採り入れつつもあくまでニューメタル!の軸がブレていない。これからも期待のバンドです。
Seo Taiji(ソ テジ) - Ultramania
韓国のバンドではなくソロの歌手。楽曲はKornから大いに影響を受けているのがわかるが、そもそもこのジャンルの楽曲が流行からすこし遅れた時期にも関わらずヒットする韓国の音楽シーンが羨ましいな…と思う。
また、このタイプの高い声(ラッパーで例えるとRed eyeみたいな)は他のバンドには一切見られない特徴であり、リフやビートで大きな差を付けづらいニューメタルにおける、声質という武器の強さを再確認させられた。
あまり詳しく調べていないけど、ソ・テジはかなり幅広く音楽をやっているらしく、見た目も良いから多分向こうだと及川光博みたいな存在なんじゃないかと思われる。だとしたら、その若手時代のデビュー作がニューメタルってすごいな。
Deftones - Be Quiet And Drive(Far Away)
「名前知ってるけどちゃんと聴いたことない」みたいなロック好きが多い(体感)バンド。確かにそうだと思う。「ヘヴィロック界のレディオヘッド」の異名をとるDeftonesの楽曲は、とにかくよくわからない。歌はなんかふにゃ〜〜っとしてるし、ギターも微妙に不協和音みたいなコード弾いてるし、変拍子も多い。
最盛期のニューメタルの持つミーハー性、カジュアル性みたいなモノを微塵も持たず、とにかく実験的で先鋭的。ギター1本には少々荷が重いのでは?とすら感じさせる空間的なコードワークに、それに負けないほど空間的に、艶やかに響く歌声と叫びの対比。そのユニークさを持ちながら驚異的なレコードセールスを持ち、3枚のプラチナディスクを誇るモンスターバンド。
近年だとその先鋭性に拍車がかかりすぎており、特にギターのステファン・カーペンターは9弦ギターまで使用するようになっている。もういいぜ!誰も弾けないぜ!
Ill Nino - What Comes Around
あらゆる民族音楽の匂いを採り入れることも可能なのがニューメタルの良いところ。イル二ーニョはニュージャージー州出身ながら、メンバーは皆南米にルーツを持ち、ラテン音楽とメタルを融合させた楽曲を奏でる。
ボンゴを叩くパーカッションにクラシックギター仕込みのギタリスト、スクリームからレゲエ風のラップまでこなすも、甘く太い声を余すことなく発揮するボーカルは唯一無二で、ヘヴィな楽曲に差し込まれる情熱的なラテンパート(?)がユニークな変化をもたらし、それでいて音楽性が散らかることもない。
ちなみに現在はオリジナルメンバーの殆どが一斉に脱退し、最早別のバンドになっているのでご注意を。
相変わらずカッコイイんだけどね。
Attila - About That Life
す〜〜んごい下品でワル。音楽性そのものの括りは最早メタルコアもといデスコアに接近するほどヘヴィでブルータルだが、驚くほどノれるしブチ上がるテイスト。ラップとグロウルの振り幅が広いかなり極端なボーカルは一度聴いたら病みつきか拒絶反応のどちらかがハッキリ分かれる。筆者も初めて聴いた時は「ウッ……」となったが10回程聴いてジワジワ癖になり今や人生ベストソング30には入る程好きなバンド。
金!女!パーティ!をここまで全力で叫びステレオタイプど真ん中のブリンブリンファッションに身を包む姿はまるで「そんな感じのキャラを演じている」ように見える領域だが、ここまで振り切ったバンド自体がシーンに皆無だったためかなり注目された。
みんなもこのバンドのモットー「SUCK MY FUCK」を叫ぼう。
AfterLife - Pain & Pleasure
前述のAttilaのボーカルがプロデュースし彼らのレーベルからデビューした若手ミクスチャー。両極端なボーカルスタイルを持つ彼が見出しただけあって、キレキレのラップとバチバチにメタルコア仕込みのグロウルが曲を彩り、ズクズク刻むリフがしっかりヘッドバンキングを誘う。安易なクリーンボーカルのサビに走らないところも硬派で、プロデューサーのキャラに似合わずかなりいぶし銀なスタイルでこれからに期待が高まる。