ジジババは同じ話を何度もする
ジジババの話をしたい。
ジジババとは魔女の宅急便のジジのババなどという、およそジブリ映画からは掛け離れたスカトロジーの類ではない。言うまでもなくお年寄りを表すジジイとババアの意だ。
ジジババは同じ話をする。いつも何度でもする。「その話は前も聞いたよ」という事が幾度となくある。
だいたいはジジイの「昔は俺もちょっとしたワルだった」と、ババアの「昔はこれでも小野小町の再来と言われていた」とか閻魔に100万回ベロを引っこ抜かれても文句も言えぬ不届きな嘘と相場は決まってる。
嘘と決めつけるのは良くないが、でもあなた方の言う事を額面通りに受け取るのであれば、日本全国津々浦々、ちょっとしたワルと転生した小野小町だらけになってしまう。
年齢を重ねていくと新たに作られる思い出が少なくなるので、必然ジジババは過去の思い出に浸る事が多くなるのだろうか。だから事あるごとに昔話を何度も反芻して語るのか。
わたしが一つ決めているルールがある。ジジババが何度同じエピソードを披露しても「その話は前に聞いた」の一言は絶対に言わない。何度でも、まるで初めて聞いたかの様な新鮮な反応で聞く。
ジジババをボケ老人扱いしているわけではない。彼らの昔話は、そのまま彼らの歴史だからだ。人の歴史を「前に聞いた」の一言で片付けたくはない。だから敬意を払って何度でも聞く。
多くのジジババは、恐らく犯罪に手を染めず真面目に懸命に生きてきたはずだ。ジジババは若者が思うより簡単に老害と一刀両断してよい存在ではないと思う。
でもジジババが昔語りを始めると、いつも義妹が「その話は前も聞いたよ!」の一言で切り捨ててしまうから、わたしはいつか義妹に肩パンチをお見舞いしようと思う。