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【無料記事】山田隆司・小山龍介対談|仕事を芸術化する仕組みとしての合同会社
法務省の登記統計によると、2018年、11万6000社が登記され、そのうち合同会社は約3万社。なんと4社に1社が合同会社なのです。実は、GoogleもAppleもAmazonも、そして乃木坂46も、合同会社。
具体的に合同会社にはどんなメリットがあるのか。2018年9月から、23人の中小企業診断士が協力して作成された著作 合同会社設立・登記・運営がまるごとわかる本 「合同会社まるごとわかる本」プロジェクトチーム (著) 日本法令 (2019/11/19)。出版された日がちょうどご自分の誕生日だったという山田隆司さんに、合同会社についてお話を伺いました。
この記事では、講演の後半、小山龍介との対談をお届けします。
利益の配分問題を解決できる合同会社
小山龍介(以下、小山) 複数人で起業しようとするとき、すごく困るのが、人によって最初の出資金の金額がバラバラになってしまうこと。たとえば、ひとりが200万、ひとりが50万となると、ここで4倍の差がありますよね。当然、配当金もそうなりますね。
それを回避するには、役員報酬で差をつけて、配当では差をつけないようにする。とはいえ、役員報酬は、年初に金額を決めたら一年間はそれを変更できないですから、「めっちゃ利益が出た!」というとき、配当で出したいですよね。そうなると、完全に出資金で割合が決まっちゃいます。これは不便ですよね。間違いなく。
一人でやる場合には、株式会社でも合同会社でも問題ないですが、複数人で、しかも、スキルセットがそれぞれ違う、たとえば、すごく貢献することはわかっているのに、いま手元にお金がない、というようなときには、合同会社のほうが圧倒的に便利ですね。
山田隆司(以下、山田) そうですね。お金だけを基準にするとどうしても不公平が出てきてしまいますね。目に見えない能力、それを評価できるのが合同会社といえます。
小山 気の合う仲間で会社をやろうとしたら、選択肢は、合同会社しかないと思うんです。覚悟を決めてみんな同じリスクを負いましょうというのはわかる。同じ金額を出す。でもだいたいそういうときって、いまちょっと忙しいからあんまり手伝えない、とか、いま時間があるからリソースが割けるとか。この報酬問題、合同会社のほうがシンプルに行けますね。
合同会社の最終的な配分は、締めたあとに決定するんですか?
山田 基本的には定款ですべて決めるんです。定款で決めさえすればいいので、どのタイミングでも変えられます。利益出そうになったら定款を変えるのも可能です。
小山 働き具合で変えられますね。意思決定機関は?
山田 社員総会ですね。参加者が半数以上で、3分の2以上だったら、合意とか、そこも定款で決められます。
小山 たとえば「働きが少なかったから配分を減らされるなんて気に入らない」という人が出てくることも考えられますが、合意の条件を定款で決めておけばいいんですね。
仲間内でやったときに、仲間割れというか、意見の食い違いも出てきますよね。株式の買取が難しいんですよね。株式会社で設立すると、株式が創業当時から利益があがって何年か順調に回していくと、額面の金額より上がるんですよね。最初は、たとえば額面1万円だったとしても、何年か後に、こんなに利益出てるのに、額面の金額で買い取るのは、おかしい、ということにもなりかねませんよね。でも、それをいくらで買い取るか、大変じゃないですか……。
山田 時価総額を計算して、一人あたり減益額はどのくらいか出すんですよね。会社として減益額が流出する。お金をあげたくてもあげられなくなりますね。
小山 そこで、ネゴシエーションするときに、客観指標もないし、困ったということになる。究極、裁判沙汰になる。そういう意味では、合同会社で社員が抜けるときは、出資したお金を抜くだけ?
山田 そうですが、全員の合意が必要ですね。出資金を返還する。
小山 その出資金には、キャピタルゲインが入りませんよね。IPO目指すなら別ですけど、エンジェル投資を受けて、どんどん、ということならのらないと投資する意味がないですが、。
でも仲間内数人で軽く始めるときは、変にキャピタルゲインがつくと途中で抜けるのがめちゃめちゃ大変になる。だから先のリスクも含めて、メンバー変更もありうると思ったら、合同会社一択になる。
山田 たしかにそうですね。
小山 株式会社、めんどくさいですね(笑)。Facebookの映画の中でもありましたよね。揉めてましたね。
兼業、副業をちょっとした仲間でやるとしたら、合資会社が抜群にいい。揉めるとしたら最終の利益配分を定款で決めるとき。そこさえクリアできれば、途中で抜けるときも圧倒的に楽だし、キャピタルゲインもないし、経営と所有の分離がないからひっくり返されたりすることもない。変な話ですが、嫌がらせで、反社会勢力に株式売るなんてこともできちゃいますからね。定款のなかで制約つけておけばいいですけどね。
そう思うと、経営と所有の分離という株式会社のコンセプトが時代に合わなくなりつつありますね。昔は出資者がいるので、大きな工場が建てられました、というキャピタルセンターですよね。資本集約的。そこから、改めて、労働集約的なビジネスになってきて、知的財産によって経営していく世界になってきたときに、経営と所有の分離がそもそもおかしくて、能力もっている人はその能力自体そのものに価値がある。「所有される」という概念がおかしいですね。
山田 株式会社は、小さな資本をたくさん集めて大きな資本として動かすのがメリット。現状、合わないですね。大量生産大量消費はもう終わりましたからね。個人がアイデアひとつで自分でできる環境が整っていますから、そういうメリットは必要ないですもんね。個人が、より働きやすいスピードが出せる合同会社がいいのかなと思いますね。
小山 そういう意味では今の時代にぴったりですよね。これで上場しようとか、一人でやるというならそれは違いますが、そうでなく、個人の能力に負って事業が成り立つ。資源も(昔であれば相当な資本が必要でしたが、今では)、Cloudなら使った分だけ払えばいいなど、インフラ上の制約がなくなってきました。今は、合同会社のほうが断然メリットがある。
合同会社が、労働に芸術性を取り戻す仕組みとして機能する
小山 自分のストーリーで紐付けていうと、最近は、ジョン・ラスキンやウィリアム・モリスを研究しているんですが、18世紀、19世紀に産業革命が起こって、まさに、所有と経営、労働の分離が行われた。そのなかで、なんの意味があるかわからないけど、このベルトコンベアーで作業している、というように、労働に喜びがなくなってくる。ここで、もう一回生活に芸術を取り戻そう、灰色の労働にもう一回光を当てて、芸術的な喜びを回復させよう、ということをやったのが、ジョン・ラスキンやウィリアム・モリスです。
日本でそれを受け継いだのは宮沢賢治。灰色の労働(農作業)を終えて、そのあと音楽や演劇などで、芸術的な生活、彩りをもたらそうということに取り組んだ。
今の時代、AIが出てきて人間が家畜化されかねないときに、もう一度、芸術性を取り戻す、と考えると、合同会社が労働を芸術に組み直していく仕組みと捉えてもいいんじゃないかと思う。
山田 「働くのが辛い」というところから、面倒なものは機械に任せて労働の楽しさだけを追求できる世界、ですかね。日本古来の考え方は、職人的な考え方で、働く喜びを大切にしてきた。原点回帰と今の制度を合わせると、合同会社は今こそ使われるべきですね。
小山 資本主義の次、ネクスト資本主義が議論されるときに、ハイパーな資本主義とかいろんな言い方ありますが、地味な話かもしれませんが、合同会社のような在り方が、次の資本主義の在り方を若干先取りしている要素があるんじゃないかと思いました。
対談動画はこちらからご覧いただけます
山田隆司
オフィス・グロウスアップ 代表 (中小企業診断士)
岐阜県各務原市出身。前職ではトヨタ関連子会社にて純正カーナビ用のデジタル地図を制作会社で、自社開発CADの社内SE・データベース設計・コンテンツ企画に従事。国際認証を持つ名古屋商科大学大学院にて経営学修士(MBA)を、2017年には中小企業診断士を取得して独立。一般社団法人ビジネスモデルイノベーション協会の認定コンサルタントとして、中小企業を中心としたビジネスモデル変革の支援に携わる。2019年には、プロジェクトチームの一員として『合同会社設立・登記・運営がまるごとわかる本』を出版、創業から既存事業の経営支援、事業承継など幅広く活躍している。
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