君も一人芝居をやろう
私はすごくずっと一人芝居をやっている。
13年前にとあることで作った作品がなんだかいろんな方に気に入って頂き、13年間で9か所の都市で上演。本番の回数としてはおそらく30回は超えるんじゃないだろうか。
それはインディペンデント、という企画によって作ることになった一人芝居で、30分ないくらいのものである。
この作品を通してとてもいろんな経験をさせてもらったし、とても多くの人と出会わせてもらった。
その恩返しをすべく、この文章をかいている。
私がすべき恩返し、それは、1人でも多くのトライアル参加者を増やすことだと思った。
そんなわけでこの文章は、全ての若手演劇人、俳優のみならず、演出家、脚本家、など様々なエンターテイメントに属するものを「やるのだ」と決めた人たちに読んでもらいたくて書き綴りました。
どうぞ!
インディペンデントシアターとは
大阪にアグレッシブな劇場がある。
インディペンデントシアターという。
すっごくアグレッシブって書いてある。
そのアグレッシブな劇場のプロデューサーであり責任者でもあるアグレッシブなおじさんこと相内Pが自ら実行、運営しているのが
「最強の一人芝居フェス INDEPENDENT 」
最強の一人芝居フェス INDEPENDENT とは
どこまでお読みいただけただろうか。
ともかく毎年大阪を拠点に一人芝居をワサッと集めて上演し、その後は札幌、仙台、津、名古屋、福岡、沖縄で、その年に大阪で上演した作品を幾つかと、それぞれの地域で作られた一人芝居をまたワサッと集めて上演しておられる。
その最強の一人芝居フェス「インデペンデント」に出るにはどうすれば良いのか。
基本的には演劇界でその名を轟かせ、インディペンデントから直々にオファーをいただく。
もしくは直々にオファーを頂いた方から「この人とやりたい」と指名してもらう。
あとはその名を轟かせ、「今だ!」というタイミングで相内プロデューサーの視界に入り「INDEPENDENT出させて下さい」
と言う。
そしてもう一つ、真っ向からその扉を叩き、自分でこじ開ける方法がある。
それが「トライアル」
トライアルとは何か
オープニングアクトを公募。
つまりは通常4日間行われる一人芝居フェスINDEPENDENTの各日程の1本目に上演される作品だけは、募集の上選ばれているのである。
このトライアル、応募できる資格としては
「志のある表現者ならどなたでも応募可能」
となっている。
年齢制限もない。
舞台の出演経験も問われない。
志があればいいのである。
それでは志とはなにか。
目標に向かって動くこと、心に決めた目標や目的。
ざっくりこんな意味である。
それでは私自身がトライアルに参加した段階でのスペックと志をひとつ例としてここでご紹介しよう。
私がトライアルに挑戦したとき
当時、私は25歳。
ミュージカルスクールを卒業後、大阪を拠点に友人が立ち上げたプロデュース劇団の初期メンバーとして活動中。
出演経験=ほぼその劇団の作品のみ。
劇団は主に年に1〜2回の公演を打つ。
春先にその劇団の公演が終わり、あと半年後にはまた自主公演が始まる。
その半年間、わたしを除く劇団のメンバーには何かしら舞台出演の予定が決まっており、私の半年間の予定としてはアルバイトのみ…。
おこられる。
このままでは主宰に怒られる。
ただでさえ声は小さい、滑舌が悪い、演劇の経験も少ない。
何かやっておかないと間違いなく主宰に怒られる。
そしてなにより自分自身のためにもならない。
しかし知り合いも少なく、ましてや半年間以内のいい感じのタイミングで公演なんてあるものか。
そうだ、オーディションを受けよう。
オーディションを受けたんだ、という既成事実さえあれば、結果はどうあれ行動した実績は認められる。
そんな退職後にハローワークで失業保険をもらうための就活実績のような考えで当時手元にあった挟み込みの束をパラパラとめくる。
今となってはお馴染みの、赤と黒を基調としたINDEPENDENTのチラシ。
タイミングから考えてその年の本選出演者のお知らせのチラシだっただろうか。
その下の方に「トライアル出演者募集」の文字が飛び込んできた。
これだ!
INDEPENDENTはその前の年のものを何本か見た。
その頃はあんまりその仕組みもわかっておらず、知り合いが出るとのことで気楽に見に行ったものだ。
なんだかわからんがやってみよう。
トライアルに勝ち残った場合、その年のINDEPENDENTの日程はどう見ても自劇団の冬の本公演の1週間前だけどいいだろう!
やってみよう!
とにかく怒られたくないから!!!
以上がわたしの志だった。
ずいぶん低いが志は志だ。
結果トライアル2位で勝ち残り、本選、各地のINDEPENDENT、セレクションツアーと続き、13年経った今でもやっている。
どのように選ばれるのか
トライアルの選考基準とはなんなのか
最初は書類審査。
これは余程の不備が無いか、そもそもルールを守っていればおおよその人が通るものだと思う。多分。
そして観客審査である。
当日お客さんには、出演者の名前が書いた紙が配られる。
お客さんが面白かった、応援したい、と思ったらその紙に丸をつける、全部に丸をつけたっていい。つけなくったっていい。
その得票数上位のものが勝ち残る。
そして近年では「プロデューサー枠」というものがある。
観客審査という基準の手前、どうしても笑いに特化したものや、元々の人気のある人、100人いたら90人が「好き」というような作品が選ばれやすい。
それは決して悪いことじゃ無い。
かく言う私も「笑い」と「インパクト」で選ばれたようなものだから。
大衆の支持は得られらなかったかもしれないが、この作品はもっと多くの方に見てもらうべきだ、と判断されたものには本選出場のチャンスが与えられる。
選考は「プロデュースチーム」とある。
相内Pを筆頭とする演劇界に精通するメンバーなのだろう。
相内Pが年間に見ている芝居の数、映画の数、読んでいる本の数、触れているエンタメの数。
全てを知っているわけではもちろん無いのだが、小耳に挟む程度でもかなりの数と多岐にわたるジャンルのものを見られている。
たとえ100人中10人が「好き」というような作品でも、相内P率いるプロデュースチームが「おもしろいもの」を見落とすわけがない。
ぜひ色んなことにふりまわされず、「自分らしいもの」をぶつけて欲しい。
チームを組もう!
自身が役者で、作演がアテがない…など、一緒にチームを組んでくれる人が思い当たらないとき。
私自身もそうでした。
まだ何者でもない自分にどんなことができるのか、どんな作品をやりたいのかも分からない。
やったこともないくせに「まぁさいあく誰も見つからなかった自分で書いて自分で作ろう。」
なんて夢みたいなことを考えてました。
結局はひとづてに良い作家と演出家を紹介してもらい、初対面での組合せでしたがとてもいい作品を作ることができた。
知り合いが少ない人や、やり方がわからない人は人伝に紹介してもらう、というのも一つの手段としていいと思います。
初対面での場合でも、私の場合は脚本家の方の作品も演出家の方の作品も見たことがあったのでそれはとても安心材料のひとつでした。
(逆に思えばお二人は私の出演の様子を見たことなかったのに。よく引き受けてもらえたな…と今になって思う。もちろん映像資料は渡したけど多分2人とも見てないだろう。)
あとは原作ものという方法もあります。
権利や著作権の問題は難しいですが、青空文庫にはまだまだ素敵な作品がごろごろ転がっています。
太宰治はこのINDEPEDNENTに合計4回参加しています。
いろいろな役者と演出とともに。
そしてもちろん自作自演の役者さんも毎回おられます。
私的にはこの完璧1人体制の作品が毎回大好物です。
トライアルは面白い
演劇人の見本市、とも称されるINDEPENDENT。
30分の一人芝居という性質上、複数人が登場する90分〜120分の芝居を一本見るよりも役者、脚本家、演出家の存在がより強くでる。
トライアルは一般のお客様はもちろん、多くの演劇人が見ているのだから、この人いいな、一緒にやってみたいな。などと、次の機会につながることもきっとある。
たとえ本選に残らなくても、自分の存在を知ってもらうひとつの手段でもある。
なのでぜひ、「まだ自分には早い」とか「あと◯年後にはやってみよう」と思っている若手のみなさんにぜひ、今、チャレンジしてみて欲しい。
トライアルは、若手の皆様のものなのだから。
最後に。
長々とお読み頂きありがとうございます。
これを頑張って書こう、と思った経緯は冒頭の恩返しの気持ちもありますし
ここ数年、トライアルの時期になると相内PのXで「今年はトライアル少ない…」とつぶやかれるのを観ると、昨今のINDEPENDENT本選のレベルの上がりっぷりに伴うトライアルのレベルの上がりっぷりに対して若い方々が挑戦しにくくなってるんじゃないかな、と思った為、こんな拙い文章ではありますが、13年前の自分自身の背中を押すつもりで書きました。
あとは知ってる若い演劇人の、あの子もあの子もやればいいのに、というエールの気持ちもあります。
相内さんは常にINDEPENDENTの話をするときに「一人芝居はベテランだけのものじゃない」と言い続けておられます。
上手い下手だけじゃない、「おもしろみ」で勝負ができるINDEPENDENTだからこそ、いろんな人にチャレンジして欲しいです。
わからないこと、困ったことは、どんどん色んな人にコンタクトを取って聞いてみたらいいと思います。
やってみたいな、と思った方の周りでは、知り合いの知り合いくらいまで辿ればINDEPENDENTに関わったことのある人に辿り着けるはず。
きっと優しく親切に教えてくれます。
そんなわけで、百聞は一見にしかず!
今年のINDEPENDENTは今月22日から始まります!
まずはコレを見なきゃ話は始まらない!!!
そして今年はインディペンデントシアター東京進出のニュースもありました。
面白いことを思いついたらもうやるっきゃないおじさんこと相内P。
きっとINDEPENDENTもトライアルもこれからどんどん面白くなるので、ぜひ、今だ!とおもうタイミングでチャレンジしてみてください!