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名づけられた「わたし」なのだから
生まれて初めてもらうプレゼントは、「名前」だと思う。きっと名前には「こんな子に育ってほしい」、「こんな人生を送ってほしい」という周囲の大人たちの願いや想いが込められているのだと思う。今回のかきあつめテーマは「名前の由来」である。ごゆるりとお付き合いいただけたら嬉しいです。
『名づけられた葉』という合唱曲をご存じですか?
中学生の時に歌った覚えがある。内容は、ポプラの葉と人間を比較して、ポプラの木にポプラの葉は沢山あるけれど、その葉は全て「ポプラの葉」としか呼ばれない。一方で、私たち人間は、小さな存在でありながらも一人ひとり名前を持った、「名づけられた『特別な葉』」なのだというものだった(あくまで私の解釈です)。宜しければ歌詞を味わってみてください。
名づけられた葉
(作詞:新川和江/作曲:飯沼信義)
ポプラの木には ポプラの葉
何千何万芽を吹いて
緑の小さな手をひろげ
いっしんにひらひらさせても
ひとつひとつのてのひらに
載せられる名はみな同じ
わたしも
いちまいの葉にすぎないけれど
あつい血の樹液をもつ
にんげんの歴史の幹から分かれた小枝に
不安げにしがみついた
おさない葉っぱにすぎないけれど
わたしは呼ばれる
わたしだけの名で 朝に夕に
だからわたし 考えなければならない
誰のまねでもない
葉脈の走らせ方を 刻みの入れ方を
せいいっぱい緑をかがやかせて
うつくしく散る法を
名づけられた葉なのだから 考えなければならない
どんなに風がつよくとも
(Uta-Netより引用)
名前の由来はよくわからない
突然ですが、時は遡りまして……
私には、兄がいる。兄が母のお腹にいた時、周囲の者は、「男の子が欲しい」と期待したそうだ。昔ながらの古い考えを持つ彼らの、口にこそしないけれど感じとれてしまう空気に、若き母は戸惑っただろう。母は直感が鋭い。だから、ある時からお腹の子の性別が男であることが、何となくわかったそうだ。しかし、母は周囲にこう伝えた。「お腹の子は、女の子だ」と。医者に性別を尋ねなかったので、生まれるその瞬間まで性別はわからなかった。
私が母のお腹の中にいた時、母は「女の子が欲しい」と思ったそうだ。そしてしばらくして、お腹の子の性別が女であることが、何となくわかった時、母は周囲にこう伝えた。「お腹の子は、男の子だ」と。この時も医者に性別を尋ねなかったので、生まれるその瞬間まで性別はわからなかった。
母が、周囲や母自身の望みと逆の性別を伝えた意図は、「生まれてくる我が子が、一瞬でもがっかりされる(する)ことのないように」だった。……生まれる前から気を遣ってもらうなんて、母には一生叶わないなって思う。
そんな理由で、私達兄妹は、周囲の予想と逆の性別で生まれた。つまり、兄には女の子の名前が、私には男の子の名前が準備されていた。……いや、これって結構、大変なことなのではないか。我らの命名は急ピッチで進められたことは間違いないだろう。名前の由来は……正直よくわからない。だけど、自信を持って言えることがある。それは、私は、私の名前が大好きだってこと。人生の初めに両親から最高のプレゼントをもらったと思っている。
冒頭に挙げた合唱曲『名づけられた葉』にあるように、私はこれからも「名づけられた『特別な葉』」として、自分の頭でよく「考え」、「誰のまねでもない」自分の人生を歩いていこうと思うのだ。そう、「どんなに風がつよくとも」。
お付き合いいただきありがとうございました。
編集:べみん
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