未来予想図は前撮りで
何だかよくわからないまま時は過ぎ、2021年になっていた。「2020年って、何だったんだろう?2021年ってどうなるんだろう?」そんなことを思いながらも……新年を迎えられたことにまずは、「おめでとう!」と思うことにする。1月のビッグイベントは、成人式である。今回のかきあつめテーマは、「成人式」。私の成人式の思い出話にちょいとお付き合いくださいませ。
そうは言ってみたものの、成人式など、もう遠い昔の記憶である。しばし考えた結果、思い出したのは、そう……前撮りだ。最近の成人式の前撮りって、後ろにセットがあったり小物があったり、面白そうだなと思う。正直、羨ましい。私の時は背景は白、小物などなかった。そう、自分一人で勝負しなければならないタイプだったのだ。
確か、前撮りは、成人式を迎える前の年の秋頃だった。私は、昔々、そのまた昔に母親が成人式の時に着た着物を身に付け、ベストコンディションで撮影に臨むはずだった。しかし、実際は一週間ほど前に風邪をひき、大変な高熱を出し、病み上がりでふらふらしながらの撮影となってしまった。
撮影当日のことは忘れもしない。メイクさんに、大変立派なつけまつげを付けられ(あんなの二度としないぞ!)、いちいち視界に入って鬱陶しくて「これは必要なのか?」と不信感を感じ、母親に「私の眉毛は、あなたに色素を持っていかれたのよ」と言われるぐらい濃いめの眉をもっと濃くされ(こんなに濃くしてどうすんだ、つながるぞ!)、病み上がりでふらふらしながら帯で身体をきつく締めつけられた当人は、笑えるわけがなかった。ただでさえ、カメラが苦手なのだ。「はい、笑って」と言われても、笑い方がよくわからない。おまけに結構な人見知りだ。「……何故、知らない人に向かって笑わなくちゃいけないんだ。こっちはくらくらよ。このまつげなんだよ。こんなに塗りたくってどうすんのさ。」と、心の中は文句でいっぱいになった。
一方……撮影を見学していた母は、母の世界を生きていた。彼女は、カメラマンの後ろで何度も目頭を押さえていたのだ。きっと、これまでの子育てを思い出し、感極まったのだろう。そうだ、この私を育てるのはきっと大変だったはずだ。私は、何だか申し訳ない気持ちになり、無理やり口角を上げた。言われるがままに傾いたり振り向いたりした。「もう、嫌、吐きそう……」と思いながら。
出来上がった写真は最悪だった。
どう見たって笑ってないのよ、特に目が。
後日、完成した写真を店頭に受け取りに言った時、偶然、そのお店で働いていた中学時代の先輩に会った。先輩はカメラマンを目指してそこのお店で勉強をしていたのだ。出来上がった写真と普段メイクの私を見比べた先輩が、後日、先輩がメールをくださった。「当日は、メイクは薄めにすること。」というアドバイスが書かれていた。メイクさんの腕が微妙だったようだ。先輩に感謝しつつも、複雑な気持ちになった(...…なんだよそれ)。
成人式当日。先輩のアドバイス通り、メイク薄めで参加した。成人式の会場で、久しぶりに出逢った友人たちと撮った写真には、空の青さの背景とマッチしてとても清々しく、みんなの笑顔に囲まれて嬉しそうな私が映っていた。そしてその写真たちは、今でも大切な思い出の一つとなっている。
それから数年が経ったある日のこと。押し入れの整理整頓をしていたら、母の成人式の写真が出てきた。カメラに向かってはにかむ、振り袖姿の母は、あの日の私とそっくりだった。その写真を見た時、「...…ああ、大丈夫だ。」と一人涙を流したのを覚えている。だって、私の憧れの人は、母なのだから。これが私の忘れられない成人式の思い出だ。
最後に...…新成人並びにご家族の皆様、ご成人おめでとうございます!ようこそ、大人へ!
お付き合いいただきありがとうございました。
編集:らいむ
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