『きよしこ』
この話は、主人公のきよしが「吃音」で言いたいことが言えずにいたところ、夢の中で出会う「きよしこ」によって気持ちが救われるというものだ。
初めて『きよしこの夜』の歌を聴いた時、自分の名前に似た部分が「きよしこ」だと勘違いする。
ただ、「きよしこ」って何?と聞きたかったけれど、吃音で「き」がうまく発音出来ないから、そのまま「きよしこ」という、思ったことがなんでも話せる夢の中の友達だと思うことにした。
きよしはいつも思ったことがちゃんと言えず、悲しい思いをしていた。
学校でも、家でも。
クリスマスイブの日、きよしはクリスマスプレゼントをもらうが、「ありがとうと」両親に言いたかったのに、いつものようにうまく言葉が出てこなかった。
「ありがとう、は?」
と母親に促された時に、いつもは悲しいという感情だったものが、苛立ちへと変わった。きよしはプレゼントの包みを何度も何度も泣きながらタンスにぶつけた。
その夜、初めて「きよしこ」と話すことになる。
姿は見えないけれど、優しい声の「きよしこ」にきよしは学校のこと、友達のこと、家族のこと、漫画のこと、ダジャレのことなど、なめらかに淀みなく、歌うように喋った。
たくさん楽しい話をした後、「きよしこ」はきよしに悲しかった話を聞かせてといった。
そこできよしの話を聞いた「きよしこ」は、イイコトを教えてくれた。
「誰かに何かを伝えたいときは、その人に抱きついてから話せばいいんだ。抱きつくのが恥ずかしかったら、手を繋ぐだけでもいいから。
君の本当に伝えたいことだったら・・・伝わるよ、きっと」
(中略)
「君はだめになんかなってない。ひとりぼっちじゃない。抱きつきたい相手や手をつなぎたい相手はどこかに必ずいるし、抱きしめてくれる人や手をつなぎ返してくれるひとも、この世界のどこかに、絶対にいるんだ。」
次の日の朝、きよしは勇気を出してお母さんとお父さんに抱きついて、ちゃんと気持ちを伝えることができた。
読んでいて、きよしの気持ちや勇気が伝わったことで、お母さんとお父さんときよしの間の空気がぽっと暖かくなるのを感じた。
そして、きよしが作り出した「きよしこ」の教えは、もしかしたらきよしが一番欲しかったクリスマスプレゼントだったのではないかと思う。
とても気持ちが暖かくなる素敵な話だった。