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「孫さんが直接手がけるのは生活インフラ事業」勝手に戦略考察ソフトバンク_03

これまで

01「非常識に見えて、基本に忠実な戦略」

02「自前のモノと技術にコダワらない強さ」

と、ソフトバンクさんを勝手に戦略考察してきましたが、同社グループの事業成長を語るうえで欠かせないのは、M&Aや投資を含めた、活発な新規事業への参入です。第三回はこの新規事業における”孫さんの時間という最強の経営リソースの振り分け基準”について考えてみます。

ちなみに、この「勝手に戦略考察」は、「経営者って、こんな基準で考えて判断しているのかも?」という判断基準を、読者の皆様と勝手に妄想イマジネーションして楽しむ?!のが主旨です。「いやいや、こんな戦略や判断視点もあるはずだ!」という異論や補足点があればぜひコメントをいただければ。では、本文いきます。


孫さんが直接経営して必勝を期すのは生活インフラ事業

同社は「情報革命で人々を幸せに」という経営理念に基づき、数えきれないほど多くの事業に投資し、多くの子会社が成長を目指しながら試行錯誤しています。
それぞれの業種やビジネスモデルは実に多様ですが、2000年以降に孫正義氏が本人自ら陣頭指揮をとる事業に絞って観察していると、明確に一貫した基準が感じられます。

・2001年に発表したYahoo! BB!は、インターネット回線事業(他社から回線を卸してもらい自社ブランドをつけて販売するのではなく、自社でADSL回線を敷設)

・2006年に買収したボーダフォンの日本事業(後にソフトバンクモバイル)は、携帯電話キャリア事業

というように、生活のインフラとして、ほぼ全ての国民が利用するライフライン=公共設備的サービスであり、国によって多くの規制がある業種となります。単にITということでなく、IT×生活インフラなのがポイントです。

ソフトバンクはIT企業というイメージ通り、数多くのインターネットサービス事業への投資や運営をしており、Yahoo!Japanをはじめ、「パズドラ」で急成長したガンホー・オンライン・エンターテイメントなど数多くのネットサービスもグループの一角となっています。
しかし、インターネット上のゲームやメディアなど、純粋なネットコンテンツのサービス事業を孫さん自らの時間を一定期間大きく割いて経営しているケースは聞いたことがありません。(最近買収したスーパーセルは、まさにネットサービスなので、おそらくご自身の時間は投入されないのでしょう)


生活インフラ事業は、参入障壁の高さと引き換えに、競合が少なく、国民の多くから収入を得られるチャンス

孫さんが直接自ら経営する生活インフラ事業というのは、国から許認可を得る交渉のタフさ、多額の初期投資資金が必要となるという意味において、非常に参入障壁が高いのが特徴です。

但し、参入後の競争に勝ち残れば、生活インフラ的なサービスだけに、国民の多くから薄く広く、場合によっては高い単価で幅広い層から収入を得られるという大きなチャンスも併存します。

競合は規模が巨大な企業(例:NTTドコモ、KDDI)が多いのですが、規制業種ということもあり、競合の数そのものは少ないのが特色です。

勝手な推測ですが、「生活インフラ事業は、参入に伴う初期投資の掛け金は高いが、競合の数は少なく、事業で勝てば投資リターンが桁違いに大きい」という見立てを持ち、孫さん自身の時間という貴重な経営リソースを優先的に投入しているのでしょう。
*以前何かの記事か書籍で「全国に何千もあるそば屋で1位になるよりも、3社しかないモバイル事業で1位になる方が簡単だ」という主旨のコメントがあった記憶があります。

もろもろ総括すると・・・

・ネットサービス事業は、参入障壁が低くて競合が多く、勝率が悪いため、数多く投資する多産多死の確率論を受容したアプローチ(経営者視点でドライに見れば、いくつか当たって大化けすれば、その影にある多くの失敗は取り戻せてお釣りがくる)

・生活インフラ事業は、参入障壁の高さと掛け金が巨額でリスクが高いことと引き換えに、競合が少なく、成功時のリターンも巨額なため、孫さん本人の時間を投入して必勝を期す

というのが、ソフトバンク最強の経営リソースである「孫さんの時間」配分の戦略になっているように見えます。



次世代の柱となる新規事業は、生活インフラ or 対象市場エリアの拡大

これだけ売上~利益規模が大きくなったソフトバンクが高い成長率を維持するには、市場規模が大きな生活インフラ事業にこだわって参入しつづけるのは、企業グループとしての成長戦略の面からも理にかなった判断と言えます。(小さな市場規模の事業を成功させても成長率は維持できません)

同社は常にサプライズな大型新規事業参入を発表しますが、類推すると

・私たち国民の多くが毎日使っている生活インフラの何か

・上記生活インフラ事業のエリアを変えた市場拡大展開(米国スプリントはまさにこれに該当)

新規事業は、この2つの線で常に検討をされているのではないでしょうか。

市場規模の大きな生活インフラ事業で、またそのうちアッと驚く買収を繰り出してくるかもしれませんね。(改めて規制産業である日本のテレビ局に目をつけるとか、まだまだ市場シェアの低いカテゴリのある金融事業とか・・・色々と洗い出し、すでに評価は実施済みだと予測されます)

ちなみに東日本大震災の後、孫さんが大規模太陽光発電のメガソーラー事業に参入を表明したことが話題になりましたが、まさに電力も生活インフラの規制業種です。
当時は意表をついた話として受け止められ、国の電力買取制度を利用するという話も出てきたため賛否両論の世論が沸き起こりましたが、生活インフラ規制業種への参入を狙っているという仮説が正しいのであれば、一貫した判断としてスムーズに理解できます。(もちろん参入背景には、日本のエネルギーのあり方に関して純粋な思いもお持ちかと思いますが、ここではあえてビジネスの合理判断としての側面のみを論じています。)

第三回はこのあたりで。次回は、これらの生活インフラ事業に参入する際に欠かせない「社会正義PR」に触れてみたいと思います。


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