福山雅治ブランドを育てたマネジメント論
昨日からSNSでは福山雅治さんの結婚の話題で盛り上がり、女性たちの悲鳴の嵐が吹き荒れ(笑)ていますが、福山雅治さんが所属するアミューズというタレントマネジメント事務所は、所属タレントが長く売れるマネジメントがうまいと業界内で定評があります。
古くは、サザンオールスターズに始まり、福山雅治、Perfume、上野樹里、小倉久寛、奥山佳恵、BEGIN、ポルノグラフィティ、爆風スランプ・・・などなど、活動の息の長いタレントが多く、逆に一瞬売れてすぐに消える人が相対的に少ない印象です。→アミューズ アーティスト一覧
タレントビジネスの収益源のひとつとなるドラマやCMの出演料というのは、好感度や出演番組の視聴率スコアによって格付けされ、金額レベルの相場が形成されていくのですが、ドラマに関しては、タレント個人のパワーではなく、脚本・演出・他の出演者など、様々な変数があり、残念ながらタレントとして人気があっても視聴率が悪いことも起こりがちです。
これはエンタメ業界の方から又聞きのため真贋はわかりませんが
『アミューズは、自社タレントの出演ドラマで立て続けに視聴率が悪いと、テレビ局や世間から「もう数字がつくれないタレント」の烙印を押されてしまうため、出演ドラマがこけたらそこからほとぼりが冷めるまで1~2年はドラマに出さないようにする。目先の売上よりも悪い風評が根付かないようにマネジメントすることで、タレント生命を長く保つことを重視している。福山雅治も何度かドラマの視聴率がこけたけど、しっかりとダメージコントロールをしてタレントの価値を保ってきた』
という話を聞いたことがあります。
残念ながら、実際に記録を追って事実確認の裏付けをする時間的余裕はないのですが、多くのタレントのビジネス寿命を長く保ち続けているアミューズだけに説得力のあるエピーソードです。
あくまでも外から観ている印象論ですが、アミューズのアーティストマネジメントのポリシーは、細くても長くビジネスができるように、変に短期的なピークをつくらないように仕掛け、以前ほど曲が売れなくなったら何かの強みを見出してタレントとしての仕事をつくる(例:サンプラザ中野くん)など、タレント~アーティスト生命を長くすることが、顧客のLTV(生涯顧客価値)も最大化するし、ビジネスとしても儲かると考えているように見受けられます。
これは、スポーツ選手の引退後の人生問題と同じように、タレントも引退(を余儀なくされた)後、生きる糧で苦労される方も多いため、タレント本人の人生としてもとても良いこと・・・という、すべてのステークホルダーにとって満足度の高いサイクルが回っているように感じます。
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ここまで書けば、賢明なる読者の皆様がお気づきのとおり、福山雅治さんをはじめ、タレントのビジネスは、ご本人の才能と努力という魅力の核をベースに、丁寧にブランドを磨き、その価値を長期的に維持するというブランドマネジメントの視点が欠かせません。
アミューズに、息長く第一線で活躍されているタレントが多いのも偶然ではなく、このようなタレントのブランドマネジメントをする習慣を持っているのでしょう。(ただ、社内でこのような考え方と意志決定を、ブランドマネジメントという言語や意識で行われているかは不明です。おそらく優れた創業世代の経営陣の方々の経験則で培われ、継承されている判断基準と推察します)
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筆者は、タレントビジネスも企業と同じようにブランドマネジメントの考えを持つのは重要と昔から考えており、もう10年以上前ですが20代前半でこの仕事の駆け出しの時代に、当時avexの依田巽会長にお目にかかる機会に恵まれ、若さゆえの怖いもの知らずで、その考えを生意気にも正面からぶつけたことがありました。(今考えても恐ろしいことをしてます)
すると当時の依田会長は不躾な若者の物言いに対し
「あなたの言うように、タレントもブランドであり、ブランドやマーケティングマネジメントが必要というのは理解する。ただ、私が普通の商品のブランドマネジメントと大きく違うと感じるのは、商品シーズの発掘の仕方だ。浜崎あゆみの成功パターンを分析し、ヒットの法則をつかんだとしよう。でも、タレントやアーティストは生きた人間なので、第2の浜崎あゆみをそう簡単に発掘することはできないし、それは机上の空論とも言える。人が商品となるビジネスは戦略論を超えたアナログの世界もあり、モノの商品のようにはいかない」
と、すべてをブランド戦略論に押し込んで考える若く頭でっかちだった私を諭すような寛大なフィードバックをいただき、浅はかな自分が恥ずかしくなり、大いに反省した記憶があります。
*依田巽さんはavexの前に山水電気の経営陣だった経歴をお持ちで、プロダクトブランドとアーティストブランドの共通性と違いに関しての理解も深く、こんな若造に言われなくても先刻承知だったことでしょう。
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そんなこんなで、ちょっと時流ネタの福山雅治さん結婚にのっかって我田引水なブランド論に強引に引きよせてしまいましたが、あらゆるものを”ブランド”と見なしたとき、ブランド戦略のセオリーを理解していると、見えなかったものが見えるようになり、とても面白い。そんな感覚をシェアしたく、書いてみました。
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最後に、どうでもいい蛇足。
今回の福山雅治さん結婚ニュースに伴ない、私のSNSで流れていた情報として・・・
「福山雅治のライブ終了後、楽屋で見かけた時、お父さんが着るようなセーター、トラサルディみたいなものを着ていて、ダサくてショックだった」
「プライベート姿の福山雅治を見かけたら、おじさんくさいセカンドバッグを抱えていた」
という私服ダサい説の報告も。(ファンの皆様、申し訳ございません!)
ちなみに弊社のオフィスも福山雅治さんの住居から近いのか、私も時々プライベートな姿をお見かけすることがあったのですが
「Tシャツ~Gパン姿に似合わない変なオレンジのスニーカーを履いている人がいるな~」
と注視してみたら、福山雅治さんだったという経験もあり、私服はダサい説(自分を差し置いて本当に失礼!)は意外に多くの証言~目撃情報あり。
みっともない男の嫉妬混じりに野次りたいのではなく、要するに、我々が日頃メディアで目にする「男前でかっこいい福山雅治」は、おそらくスタイリストさんが「福山雅治」ブランドの魅力を最大限に引き出すために、マネジメントされた姿なのだろう、と。
今回はこんな感じで、福山雅治さんのご結婚を祝しつつ、その裏で見事なブランドマネジメントをされているアミューズに注目!というお話でした。
個人的には、アミューズはサザンオールスターズのベスト盤という伝家宝刀を抜きさえすれば、その期はかなりの売上~収益の見込みがたつため、目先の業績に汲々とせず、長期目線でのアーティスト育成がやりやすい優位性があるのだろうと感じます。
*そのサザンのベスト盤も乱発しすぎると、徐々に顧客に飽きられて後で苦しくなるため、ほどほどにせねばならないのも、これまたブランド資産の維持とマネタイズのバランスを取る定番の経営テーマです
エンタメ業界は、素直にそのプロフェッショナルなパフォーマンスを楽しむだけでなく、そんなブランド~経営目線で見渡してみると、また違ったマニアックな楽しみも発見できるかと思います。
自覚的~無自覚に関わらず、けっこうレコード会社やプロダクションによって、経営の考えが違うのだろうなと感じる事案多し。
ということで「成功するタレントの背景には、優れたブランド戦略あり」と主張しつつ、本日はこんなところで。