ばかめ!
「ばかめ!」と、朝起きたら壁に大きくそう書いてあった、明朝体で。
なんだこれはと思い目を擦ると、その文字はもう消えていた。
俺って馬鹿なのかなぁと、大学の食堂で長澤に聞いてみた。彼はチキン南蛮定食を食べながら、熱心に六角レンチの話をしていた。
「人は誰でもある視点から見たら大なり小なり馬鹿だよ。」と、長澤。
俺はそういう一般論を聞きたいんじゃないんだと思ったが、彼はまた早口で六角レンチの話を始めてしまったので諦めた。六角レンチも奥が深いことが分かった。
夜はハルさんの家で映画を見た。吹き替えどころか字幕もついていないようなロシアの古い映画だった。内容はほとんどわからなかったが、流れた音楽や映像の質感が、粗目のやすりで磨くような心地よさがあってよかった。ハルさんもおおむね同じ感想だったらしい。
「俺って馬鹿なんですかね。」
「『馬鹿』ってそもそも人間の性質を表す形容詞ではないと思うわ。」
彼女はキャメルの6ミリを吸っていた。
ベッドに入って電気を消す、真っ暗な天井が現れる。明日の講義のことや読みかけの小説のことを考えて、寝た。
最近文章ばかり書いていて自分のnoteも始めたので、よかったら読んでください。
工藤祐次郎というミュージシャンが好きで、来週ライブに行きます。嬉しいですね。
このアルバム15分くらいしかないので全部聴いてください。
関口
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