未来×幸せ経営フォーラム第3期 第1回 「ココイチ流、真心の経営」セミナーレポート
12月2日、弊社主催のオンラインセミナー「未来×幸せ経営フォーラム3期」の第1回目を開催致しました。テーマは「人間力」。人間力を発揮する組織づくりをテーマに全4回のセミナーを行います。
その初回のゲストは、皆さんもお馴染みのカレーハウスCoCo壱番屋の創業者、宗次德二さんでした。謙虚で情熱的。70歳には見えないお若さで、引退された今でも毎朝3時55分に起床し、地域の清掃、花の植樹のボランティア活動、音楽の社会貢献活動に力を注いでおられます。
宗次さんの人生をお伺いしました。
孤児として生まれ、養父に引き取られたものの父親のギャンブルで子供時代は極貧の生活を余儀なくされます。電気もこない部屋でローソクの灯りで暮らし、落ちているタバコを集めて父親に渡すなどの過酷な日々にも関わらず、「その時代も幸せでした」と明るく語られています。そのような暮らしだったので、昔からやることは自分で決め、工夫し、人に頼らずに生きてこられたそうです。
そして青年期は名古屋で暮らし、不動産の仕事に就きます。25歳の時、不動産業として独立を果たしますが、日銭稼ぎに奥様と喫茶店を始めることに。しかし、素人の商い、三流立地の喫茶店にはなかなかお客様が来てくれません。それでも来てくれた時が嬉しくて嬉しくてたまらず、ご来店時に心の中で拍手を送っておられたそうです。当時はモーニングサービスが当たり前だった名古屋でしたが、そうした「おまけ」は一切つけず、「真心の接客」を武器に一人ひとりのファンを増やしてこられたそうです。そこから、宗次さんはこの飲食業の魅力にはまってしまい、不動産業をすべて廃業し、この商売に全力投球をされます。
お客様への感謝の思い。「お客様、笑顔で迎え、心で拍手」。25歳の時にお店に掲げたこの標語が、後のCoCo壱番屋の原点になっていくのです。
お店で出していた奥さんの手作りカレーが評判になり、カレー専門店を出すことを決意。それがCoCo壱番屋の1号店。特徴がない、家庭料理のようなカレーだけれど、どの店を食べてもうちのカレーがいちばん美味い!「ここがいちばんや」と思ったことから、この名前を考えられたそうです。
ただ、このお店も三流立地。しかし持前のお客様第一の精神で少しずつファンを増やしていきます。そして、もっとお店を増やしていきたいと思い、FC展開を始めます。
不動産から飲食への切り替えもそうでしたが、「これはいける!」と思ったら、すぐに方向性を切り替える。「私の経営はIBSです」と言われていました。IBS=行き当たりばったりのシステムという訳です。
フランチャイズのやり方も独創的。壱番屋の「のれん」を守ってほしいという思いから、独立希望者を数年かけて自社で育て、一人前になったら独立を許すブルームシステムというのれん分け制度を開発。企業としてのFCは受け付けず、ご夫婦での創業希望者だけに限定します。夫婦で乗り越えてきたあの喫茶店の思いを受け継いでほしかったからです。ロイヤルティも取りません。
そうして始めたフランチャイズも10年で500店、今は1400店を超えるまでに成長。そして約20年前。宗次さんは、素晴らしい後継者が育ってくれたと、53歳で役員を退かれました。
しかし、その間、どんなにお店が広がっていったとしても、貫いたのは「お客様第一主義」「現場主義」。毎朝5時には出社し、全国から集まった毎日1千通のアンケートはがき一枚一枚に目を通し、お叱りの声やご要望に耳を傾けては現場に伝え、店長を励ましていったそうです。
飲食業チェーンが良く行う、値引きキャンペーンは一切行わないもの宗次流。「安いから食べに来た」というお客様ではなく、「美味しいから食べに来た」というお客様に来てほしいと、徹底的に真心の接客に情熱を傾けられた人生でした。
誰も先駆者もいないカレー専門店チェーンを一代で築きあげられた宗次さんの人生の真ん中にあったのは、「人を喜ばせたい」という思いだけ。自分が儲けたい、自分の欲を満たしたいという利己的な欲望は一切なく、とにかく人が喜ぶ姿を見ているのが大好きという方です。セミナーの帰りも、仲間のためにたくさんのお土産を買って帰られました。
人間力がテーマでしたが、宗次さんはまさに人間力の塊です。誰に教わることもなく、自分の創造力と好奇心、挑戦心で未知の世界を切りひらき、人のために、世の中のために全力で貢献していく。コロナ後の世界で、こういう生き方が見本になるのだろうなと、深く心に残りました。
セミナーの冒頭で「なぜ成功したのですか?」と伺っても、ただ「目標を決めて、ただ一生懸命にやることが成功の秘訣です」と仰るだけでしたが、お話をずっと伺っていくと、やはりこの「お客様のために、ただ一生懸命にやる」ということが、成功するしないに関わらず、いちばん大切な生き方なのだと確信できるようになりました。
人間力とは未来を切りひらく力。宗次さんにその大切さを学んだ一日でした。
※次回の未来×幸せ経営フォーラムは1月27日。ゲストには、美容室バグジーの久保社長、元リッツ・カールトン日本支社長の高野登氏をお迎えし、人間力の第二弾「気づく力、感じる力」をテーマにホスピタリティや社員の心の育成を学びます。
※1回目に参加できず、4回コースをお申し込みの皆さまには、1回目(宗次氏のセミナー)の録画データをお送りいたします。