一枚の皿
今日
某都内の高級レストランの洗い場のバイトに
タイミーで行ってきた
もう高級すぎて入り口がどこかわからない
スタッフの皆さんは
短髪ショートかなりキリッとした女性や
黒木華みたいな穏やかさにしっかり芯がありそうな女性や
オールバックにした the料理人みたいな男性や
その中にひよこが放り出されてしまった
とにかく皿を丁寧に割らないように拭いてください
とだけ言われて
とんでもない緊張感の中ただ渡された皿だけを拭いていく
そのうちシェフが現れて
早くしろよー!大丈夫かー!
と
後ろからスタッフたちを畳み込んでいく
ちらりと
シェフと目が合う
やることがなくなって
手持ち無沙汰になっている小娘の背筋がひやりとする
シェフが隣のスタッフの女性に耳打ちする
あの子にもなんか仕事させてね
と
小声なはずなのに
しっかりと聞き取ってしまう我が地獄耳
見たことない形のお皿たち、
ふきんは2枚に分けて
お皿によってはアルコールをしたり
グラス用の布巾に変えたり
説明は一度きりなので不安と緊張の中ただ皿と見つめ合う
スタッフさんが洗った、その皿を拭くことしか許されていないので
ちょっとでも勝手なことを良かれと思ってしようもんなら
これあなたがやった?
とぴしゃりと注意される。
すみません…
蚊の鳴くような声とはこういうことか
カシャン
静寂の中に緊張感のある音が響き渡った
もう一人のタイミーさん(わたしより何度もここに入っていてむしろベテランと思われた)
が
洗っていたカトラリーをひとつ洗面台のなかで滑らせて落としてしまった
スタッフさんがささっと詰め寄り
あのーー、
音は鳴らさないでください
怒られてない私もつられてしゅんとした
皿を見つめながら思った
この皿一枚の価値より
わたしの価値は低いんだなぁと
たった2時間で
皿の価値を
己の価値を知った話。
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