モダンオープンTOP8に聞く!リビングエンド解説
皆さんこんにちは。和歌山勢の白井選手がモダンオープンのTOP8に入賞されたということで、インタビューして参りました。
リビングエンドとは?
概要
サイクリングをもつクリーチャーでドローを続け、《断片無き工作員》もしくは《暴力的な突発》を探し当て、続唱から《死せる生》を唱える。サイクリングによって墓地にいたクリーチャーが全て場に戻ってきて、そのまま圧殺するというデッキだ。
予想される主な対策カード
・《ドラニスの判事》《アゾリウスの造反者、ラヴィニア》《塔の長官、ボロミア》《時を解す者、テフェリー》
・《法の定め》《エメリアのアルコン》
・《忍耐》などの墓地対策
・《虚空の杯》
リビングエンドの変遷
モダン黎明期~
リビングエンドはモダン黎明期から存在しているが、これはエクステンデッドのものを源流としている。《超起源》?モダン永久出禁カードの話はやめような?
この頃は黒赤緑カラーで構築されており、《悪魔の戦慄》が使われていた。
《悪魔の戦慄》は必ずクリーチャーを対象に取る必要があるため、クリーチャーの少ないデッキに対して実質続唱のカードが4枚しかないという致命的欠陥があった。これはモダンホライズン2(以下MH2)まで抱えることになる。
また黒いコンボデッキであるにも関わらず、続唱の関係上軽量ハンデスを用いることができず、見切り発車前提のぶん回りデッキの様相であった。
アモンケット~
ここで数多くの軽量サイクリング生物を獲得することになるが、当時はジャンドカラーであったため《砂漠セロドン》《遺棄地の恐怖》などが注目された。
また一部界隈で《予言により》を使ったタイプも見られた。
2021年2月15日~
《猿人の指導霊》が禁止となり減速を余儀なくされる。現在の《厚かましい借り手》や《否定の力》などの青い妨害が採用されているのもこの影響が大きい。
モダンホライゾン2~
《断片無き工作員》を得て、先のアモンケットで得ていた青いサイクリング生物が軒並み高性能かつ1マナでサイクリングできることもあり、青赤緑カラーに変更される。
さらに続唱に引っかからないハンデスである《悲嘆》を得たことで対カウンター性能に磨きがかかり、モダンのメイン最強デッキの名を欲しいがままとする。
《激情》《緻密》も得ているが、《忍耐》《対抗呪文》《否定の力》などのアンチカードも増えてしまう。
加えてアモンケット以降《予言により》を用いたマイナーかつ同種であった続唱デッキであるカスケードクラッシュが台頭。
そのアンチアグロ性能の高さにより一躍トップメタへと躍り出た。この煽りを受けカスケードクラッシュに効くカードは軒並みリビングエンドにも効いてしまうので、しばらく雌伏の時を経ることとなる。
指輪物語:中つ国の伝承~
せっかくなのでここからは白井選手に解説をお願いしよう。
伝説が終わり、歴史が始まる
インタビュー
緊張ほぐし
ーモダンオープンTOP8おめでとうございます。私も現地にてお祝いしましたが、改めまして今のお気持ちをどうぞ。
「マネーフィニッシュ自体が初めてだったので戸惑いましたが、感無量です」
ースリーサイズは?
「上から100-100-100です!」
ードラえもんでも600族でもねえドラム缶みたいな身体してんな。
ーリビングエンドとの出会いは?
「2016年から使っています。和歌山でモダンの大会があるということで構築しました。当時も安いデッキだったので」
ー確かに安かった。《死せる生》って今いくらするか知ってます?普通に2kしますよ。時のらせんリマスターで再録したのに…。
「ええ…」
デッキ解説
ー今回のリビングエンドの構造を解説してもらいましょう。
ーでは指輪物語:中つ国の伝承でリビングエンドがどの様に変わったのか、解説していただきます。
「コモンで土地サイクリングを1マナでできる生物が登場しました。《オリファント》《気前のよいエント》の2枚です。回転率がよく、スペックが高い2枚です。
1ターン目に土地サイクリングすることで、3マナまで到達しやすくなり安定性が向上しました。
ー《オリファント》についてですが、赤いカード…ピッチスペルのコストになりづらいのでちょっと使いづらいかなと思っていますが。
「ショックランドを連れてくるだけでなく、トランプルを持っていてチャンプブロックを許さないことがあります。時間稼がれる事態が回避できるようになりました」
ー確かに。2体いたら16点クロック。これは勝ってまう。
ー《気前のよいエント》を見たときは変な声出ました。青がスペルで良かった…。
「森サイクリングによって《血染めの月》をケアできる点が大きいです。《虹色の終焉》や《邪悪な熱気》が効かない、ブロッカーとしても育ち切っていない《濁浪の執政》をブロックできるのも大きいです」
ーライフまで回復できる上に到達持ちは心強いですね。
ー《厚かましい借り手》の2枚はよく考えたら珍しいですね。あんまり見ない気がする。
「お守り感覚ですね。1枚のレシピは見かけますが、《時を解す者、テフェリー》に抗えるのに加え、メインから入っている墓地対策にも有効です。これ以上増えるとサイクリングの邪魔になりますので2枚にしました」
ーバウンスで思い出しましたけど《天上都市、大田原》って使いました?これもお守りですか?
「結局1回も使わなかったです。できることは一緒なんですが…。4マナで構えて《時を解す者、テフェリー》をバウンスして続唱という使い方もできるんですが…」
ーリビングエンドはコスト軽減もできないしちょっときつそうですね。
ー土地が14枚。これがMtGの歴史の中でもかなり珍しい枚数ですね。パウパーにおけるチェーンコンボ、サイクリングストームが土地6から12枚程度なのでこの14という枚数は本当に珍しい。
「TLや大会の情報を元に、土地サイクリング8枚で試しで組んで回してみたら特に問題なく回りました。
オープンの10回戦でも、土地がなくてマリガンはありましたが、土地が無くて負けというのはなかったですね」
ー強い!そういえば土地14枚のリビングエンドが他にもありまして…
https://www.mtggoldfish.com/deck/5694944#paper
ーこれ白井選手が結果残したのと同日で、しかも8-1という好成績を残されているんですよね。けど《波起こし》ってどう思います?自分も何回か使ったことあるんですが、2マナの働きじゃないと思うんですよね。
「スタッツも除去耐性もいいんですが、土地サイクリングが増えた今は…
・1ターン目:土地サイクリング
・2ターン目:土地サイクリング→土地セット→サイクリング
…という動きがしたいんですよね。2ターン目の動きに合致しないので抜けてしまいました」
ーわかり味が深い。正直指輪物語以前でも2か1が適切だったと思うんですよね。
ー得手不得手のデッキを教えてください。
「得意なのはクリーチャー主体のデッキですね。ハンマータイムなどは妨害も薄く有利です」
「(不得手なのが)イゼットラガバンやマーフォークを始めとするカウンターをもつデッキ。特にクロックパーミッションですね。あとはとにかく《時を解す者、テフェリー》」
ー最近の独創力は《一時の猶予》を取っている型もあるんでかなり強く意識されている気配がありますね。
「ラクドス想起は動きから何まで全部きついです。ハンデスで土地サイクリングを抜かれて動きを止められるのもですが…《ダウスィーの虚空歩き》がきつい。
知っている人は後攻からハンド超過したんでこれを捨ててエンドって言われるんですよ。《死せる生》を撃つと《ダウスィーの虚空歩き》の起動型能力で《死せる生》を再利用されて…」
ー(それガヤの人がやってる手口じゃねえか)
ー(ガヤガヤ)
ー細かいテクニック等がありましたら教えていただければ嬉しいです。
「サイクリングのタイミングを意識します。土地を引くかサイクリングしきるまで土地をセットしない。きちんと土地を伸ばします。《否定の力》を構えるとかも重要なところです」
ー一回でもマリガンしたらきついと思いますが、そこはどうですか?
「結構マリガンします。ランド1土地サイクリング2とかのキープ基準はしっかりしましょう」
ーTOP8に入られたデッキを改良するとすれば、どこを改良しますか?
「土地の枚数を16を増やします。ロングゲームにおいてサイクリング生物のハードキャストも考えると、増やして安定性を増した方がいいと思っています」
ーおおっと。せっかく削り切ったのに。
「スロット的にも余裕ありますので。あとは《悲嘆》ですね。土地のバランスを考えるとハードキャストできないので本当に要るのかと疑問に思っています」
ーメタ次第といったところですね。
「後は4Cオムナスの《喜ぶハーフリング》からでカウンターできない《時を解す者、テフェリー》に対して後出しで対処できるカードが欲しいです」
ー会場で悲嘆していましたが《激情》ですか?赤カウントが10程度できついですが。
「サイクリングの生物を調整して…《意思切る者》を変更したりですね」
ー正直聞けば聞くほど《激情》欲しすぎてたまらん…。
サイドボード
ー《避け難い裏切り》はカスケードクラッシュがサイドに取っているのをよく見ましたが、リビングエンドが…それを3枚も取っているのに驚きました。正直土地14よりも驚いています。
「例えば4Cオムナスの《機械の母、エリシュ・ノーン》を抜き取ります」
ーあちらの《孤独》も効かないですからね。完全に機能不全にできる。
「あとは独創力にも入れるかなといったところです。自分のクリーチャーよりも強いクリーチャーを使うデッキに対して入れるイメージでいいと思います」
ーアミュレットタイタンはどうです?
「正直微妙かなと。あとスパイに対して、《欄干のスパイ》を奪うと相手がライブラリーアウトしてしまう謎プランもあります」
ーあ、ホントだ。イージーウィンできるし使うなら覚えておきたいですね。
ー一般的な質問ではないのですが、土地ベースに黒を足して色気を出すのはどう思いますか?具体的には《やり場のない悔恨》の事なんですが。沼サイクリングである《カザド=ドゥームのトロール》がメタメタに強いんで全然ありかなと思うんですよね。
「テフェリーが増えるならありだと思いますね。
ただそうなると《砕骨の巨人》でもいい気がします。クロッカーとしてもブロッカーとしてもいいですし」
ーぐぬぬ。
ーサイドinoutはしっかり決められていましたか?
「正直あんまり決めてないです。モダンは個々人のチューンが激しいので。
基本的な指針は…
・《否定の力》や《悲嘆》が必要か。転じて置物破壊系の方が有効か。
・《忍耐》が入るデッキに対して《緻密》は確実に入れます。トロンなど《大いなる創造者、カーン》が入っている場合にも。
といったところです」
ー最後に。私は基本初心者向けの記事を書いています。よろしければリビングエンドに興味ある方、使ってみたい方へアドバイスがあればお願いします。
「リビングエンドに限らずカスケード系のデッキは、続唱8枚を用いる再現性の高いデッキです。特にリビングエンドは序盤も単純なので扱いやすいです。ちょっと興味のある方は触ってみてはと思います」
ー他のデッキより安いしね。
「そうですね」
ーお忙しいところインタビューに応じて頂きありがとうございました。これからの活躍も期待しております。
スペシャルサンクス
改めて白井選手ありがとうございました。
またこの記事の作成を後押しして添削もしてくれたマナソース和歌山の常連の皆様、ありがとうございました。