見えない我々がひなちゃんにできること

 百本目の記事を書くに当たって、まずは私たちから読者の皆様へ感謝を込めて。
ここまで継続してこられたのも、いつも読んでくださっている皆様のおかげです。
すきをいただいたり、時にはコメントをいただいたりと、いつも見守ってくださっていること、心から感謝しています。
定期的な更新を目標にしつつも、今回のように長く空いてしまうこともありますが、これからも私たちのペースで発信をし続けていきたいと考えています。
今後も皆様には私たち家族を見守っていただけると嬉しいです!



 先日ひなちゃんを連れて旅行に出かけた。最近までママが前回の旅行の記事を書いていたので、Noteだけ読んでいると旅行ばっかりしている家族に見えるかもしれない。
今回の旅行には大きなテーマがあった。題して「ひなちゃん接待ツアー」だ。
 これまで旅行といえば、自分たちが楽しめることを一番に計画を立ててきた。旅行は楽しむために行くのだから当然のことである。
しかし今回は、最初から最後までひなちゃんが楽しめる旅行、というのを第一に考えてプランを決めた。
 今回の登場人物はひなちゃんと我々夫婦に加えて、いつも我々家族のことを気にかけてくれている友人の合計4人だ。「ひなちゃんのおばあちゃん」と自ら言ってくれるほど、いつも親しくしてもらっている。
今回は目の見える友人にも一緒に行ってもらうことで、我々だけでは難しい部分をフォローしてもらいながら、ひなちゃん接待ツアーを決行したのだ。
 行先を決めるところから「ひなちゃんの接待」は始まっている。大阪から片道2時間程度で行けて、かつ宿泊先もひなちゃんが楽しめる場所。
いくつかの候補地の中から、今回はママが見つけてくれた和歌山県白浜にある湯快リゾートホテル千畳に決めた。
 ここはホテル内に天然温泉のプールがある他、室内に大型の遊具やボールプールのあるキッズコーナーも併設されている。これだけ館内で過ごせる設備が充実していれば、ひなちゃんも楽しめること間違いなしだ。特に水遊びが好きなひなちゃんを、今回初めて大きなプールで遊ばせたいという想いがあった。
 この試みは大成功だった。プールに入る前から
「ぷちゃぷちゃ」
(ひなちゃんなりの水を表す表現)
と何度も言い、プールに入ってからもずっと大はしゃぎだった。
大人はというと、子供用の浮き輪からもまだすっぽり抜け落ちてしまうひなちゃんを、水の中でずっと支えているのは少し大変だったが、こんなにも楽しそうにしてくれるならなんでもないことだ。
 そしてキッズコーナーもひなちゃんには大ヒットだった。ボールプールやトランポリンで遊んでみたり、滑り台に行ってみたり。
そこにはなんと、今やひなちゃんの推しと言っても過言ではないアンパンマンの自販機まであり、
「アンパンマン、アンパンマン」
と連呼しては自販機を見に行ったりと、文字通り大忙しだった。
そう、余談だが最近になってようやくちゃんと「アンパンマン」と言えるようになったのだ。これもまた進歩である。
 チェックアウトぎりぎりまでホテルで思いっきり遊んだ後は、白浜といえば定番のアドベンチャーワールドに行った。一緒に行った友人の提案で、動物が好きなひなちゃんにパンダを見せてあげようということになったのだ。
 白浜に着いた時から、街のいたるところにパンダがいた。駅にはパンダの椅子が置いてあったり、バスの中にもパンダのぬいぐるみが飾ってあった。それを見ては
「ぱんま、ぱんま」
と連呼していた。ひなちゃんなりにアドベンチャーワールドの予習をしていたらしい。
 パンダは2匹いて、どちらも始めは寝ていた。それを見たひなちゃんは
「ぱんま、ねんね」
としきりに我々に伝えてくれる。ひなちゃんはもう、ねんねの意味も理解しているのだ。
1匹のパンダは途中から起きだして、笹を食べ始めた。それを食い入るように見ているひなちゃんを感じながら、我々はパンダの笹を豪快に食べる「バリバリ」という音に耳を傾けた。
 昼食にパンダ肉まんまでしっかり全部平らげたひなちゃんは、最後にお土産物屋さんでパンダの靴下を買って帰路に着いた。
 帰りの列車の中で、爆睡するひなちゃんを感じながら、ママと話をした。
「今回の旅行、ひなちゃんずっとはしゃいでたな」
「ひなちゃんが楽しめることを一番に考えたんだから」
「ひなちゃんはうちにやってきて幸せかな」
「きっと幸せっていうことすら考えないんじゃない、それが当たり前だから」
そう、我々だけでひなちゃんにさせてあげられることにはどうしても限界がある。
他の子どもたちもたくさんいる中でキッズコーナーで自由に遊ばせたり、アドベンチャーワールドのような広いテーマパークの中を自由に歩いたり。
でも、我々が視覚障害があることでひなちゃんの経験値を狭めたくはない。なんなら健常者の親に生まれた子供に負けないぐらい、たくさんの経験をさせたい。
 今回友人の力を借りることで、それを達成できた。我々家族にそこまで付き添ってくれて、何よりガイドではなく一緒に楽しんでくれる友人がいることには本当に感謝しかない。
 これからもひなちゃんには、そんな風に人に囲まれた人生を歩んでほしい。自分一人だけで完結しなくてもいい。足りない部分を補ってくれる誰かを巻き込んで、豊かに過ごせる生き方を、親として見せていけたらと強く思った。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?