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我々家族のベビーカーの使い方

 我が家にベビーカーがやってきたのは、ひなちゃんが生れてから3ヶ月以上が経った頃だった。
そもそもベビーカーは必要なのか。それがまず我々が考えたことだった。
当たり前のことだが、ベビーカーは後ろから押すものである。普段白杖で前を確認しながら歩いている我々が、白杖の代わりにベビーカーを前に持って歩いたとしたら。考えるまでもない。
それではなぜ今回ベビーカーを検討したのか。
 普段我々が外出する際は、だっこひもを使っている。妻がひなちゃんをだっこし、僕が3人分の荷物をリュックに背負って前を歩く格好だ。そうすると、歩いていて障害物にぶつかったとしても、ひなちゃんが当たることはない。
3人で歩くカタチとしてはそれで問題なかった。ひなちゃんが大きくなればなるほど重くなるという別の問題はあるのだが。
ただ、何度か外出を重ねていくうちに、だっこひもではカバーしきれないポイントも見えてきた。それは飲食店などで食事をする時である。
それまでは頑張ってかわるがわるひなちゃんを背負いながらご飯を食べていたのだが、これは二人して早々に根を上げた。ひなちゃんが重くなってきたのもそうなのだが、だっこひもが揺れていないとひなちゃんがわーわー文句を言うようになったからだ。
早い話、我々がご飯をゆっくり食べるためにひなちゃんの居場所がほしかったわけだ。
今回ご縁があって7ヶ月以降の月例で使えるベビーカーを譲っていただいた。それを本格的に使う前に、練習もかねてまずは今の月例からでも使えるベビーカーを購入することにしたのだ。
 普段からひなちゃんを載せて押すのではなく、あくまでじっとしている時のひなちゃんの居場所になるものだ。そうなると、ベビーカーを選ぶポイントも変わってくる。
まず我々が第一に考えたポイントは軽さである。移動時に使わないということは、その間は逆にベビーカーを持って歩かなければならない。
そう考えた時に、片手で軽く持ち上げられることは非常に重要だった。特に我々の場合エレベーターをすぐに探せるわけではないし、普段よく知っている場所でも階段やエスカレーターばかりを使っていて、エレベーターの場所を知らないことも多い。
そこでベビーカーでは比較的軽い3.9kgのものに決めた。何度か店に足を運び、実際に持ってみてこれぐらいならストレスなく持ち上げることができると思ったからだ。
ネットなどでも調べてみたのだが、そもそもこれまでベビーカーを持ったことがない我々にとって、重さの数字だけでは全くイメージができなかった。
 実際に使ってみた感想としては、一番に外食が快適になった。ひなちゃんもベビーカーの居心地は悪くはないようで、ずっと寝ていたり辺りをきょろきょろ見回してみたりまた寝てみたり。食事やお茶をするぐらいの時間であればいい子にしている。
そして移動時のストレスもそれほど感じないのは大きい。これまで試合の時などによくスーツケースを持って移動していたので、感覚としてはそれとほぼ同じである。
 ただ、やはり使ってみて見えた課題もある。狭い店内や混雑した電車やバスなどでのベビーカーの置き場所だ。
先日たまたま入った飲食店が思ったよりも狭かった。入ってから、正直しまったと思った。
ただでさえ忙しいお昼時に、視覚障碍者が二人(一人は赤ちゃん連れでもう一人は手にベビーカー)ときている。店員さんもさぞかし戸惑ったことだろう。
そんな中でもテーブルの隙間を空けてくれたり、我々の様子を見て端の席を代わってくれたお客さんまでいた。その心遣いが本当にありがたかった。
帰りに妻が言った。
「やっぱり迷惑になるよね。ああいう店でベビーカーだと」
たしかにそうだ。今回はお店の人や周囲のお客さんの優しさに救われたのだ。それも踏まえた上で僕は言った。
「いっぱい失敗すればいいやん。最初から誰にも迷惑をかけずにうまくいくわけないんやし。」
迷惑をかけることがいいとはもちろん思わない。ただこの先、そうした状況も起きるということを、まずは自分たちが受け止める必要があると思った。失敗しないと気づけないことだってあるのだから。
 親になってまだ3ヶ月半。これからもきっと失敗の連続だろう。
それらを繰り返すうちに、我々なりの方法を見つけられるようになるはずだ。そこまでにはまだまだ時間が必要である。

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