〈スタイリスト稲垣友斗氏×ブリンクベース田代純一 インタビュー〉 「今の時代にふさわしいサングラス」について話してみました。NY発〈District Vision〉
「今の時代にふさわしいサングラスってなんだろうか。」
世の中にたくさん溢れているが故に、どのようなサングラスを選べば良いのか迷っている方も多いはずです。色々考えた中の一つの選択肢として、アクティブな機能性やデザインを持ち合わせたサングラスはどうだろうか?という提案が出てきました。
例えばその中でも、2015年にTom Daly氏とMax Vallot氏の二人によってニューヨークでスタートしたアイウェアレーベル「District Vision」(ディストリクト ヴィジョン)は、スポーティな印象の中に都会的な空気感も持ち合わせたデザインが持ち味のブランドはどうだろうかと。
今回はファッションという視点から、今にふさわしいサングラスの選択肢の一つとしての「District Vision」(ディストリクト ヴィジョン)をテーマにスタイリストの稲垣友斗さんお招きしてお話ししてみました。
【"ゴープコア(Gorpcore)"の流れ】
田代:では今回「今の時代にふさわしいサングラス」として「District Vision」のようなアウトドアなサングラスはどうだろうか?ということをテーマにスタイリストの稲垣友斗さんにお越しいただきました。
稲垣さん:宜しくお願いします。
田代:まず最初に、何故このテーマしたかというと、お客様に「流行のサングラスって何ですか?」のような質問をよくいただくんです。眼鏡やサングラスは大きなトレンドはないのですが、自分なりに考えた時に、今の時代にフィットしているサングラスって、意外とアウトドアや機能性のあるアクティブなサングラスなのではと思いまして、ファッションのスタイリストをお仕事にしていて、且つDistrict Visionを使っていただいている稲垣さんにお話し聞けたらと思いました。
稲垣さん:興味深いですね。お力になれれば。
田代:僕は服に関して全然素人ですけど、やはり最近ここ何年かの流れでアウトドア系のウェアを日常着に取り入れるみたいな流れってありますよね?
稲垣さん:2017年くらいからかな、アウトドアウェアをシティに入れるみたいなことが一気に増えてきて、いわゆる”ゴープコア(Gorpcore)”みたいな流れが。
“ゴープ(Gorp)”っていうのは「Good Old Raisins and Peanuts」の頭文字をとった略語で、ハイキングやトレッキングの際に持ち歩くレーズンやナッツといった栄養価の高い必需品みたいなもので、それをとって”ゴープコア(Gorpcore)”っていうアウトドアのムードをデイリーにしたもの、という言葉ができたんです。
【機能するアウトドアユースのものを日常に】
でもシティ向けにモダナイズしたものもあるけど、その中でどっちが格好良いか考えると、自分はシティ向けにモダナイズしたものより、ちゃんとリアルなシーンで機能するような、アウトドアのシーンで使えるものの方が良いと思っていて、それと一緒でDistrict Visionの本来の用途としてはアウトドアやアクティブだけど、デイリーなスタイリングの中にリアルなアクティブサングラスをはめ込むことが面白いなと思ってます。仕事のスタイリングでも意識していますね。
稲垣さん:他に選択肢としてそういうアイウェアって何があるかって、まずみんな某スポーツサングラスブランドとかが思いつくと思うけど、なんかやっぱり個人的にはちょっと強すぎる感じはしますね。
やっぱりそういうブランドとかが似合う服ってストリート系で若い子とかはいいかもしれないけど、自分は今34歳で、そういう大人がかけるってなった時に、Distorict Visionのマットな質感と過剰ではないデザインはいい塩梅で馴染んでくれると感じていますね。
田代:今の気分としてはガッツリなストリートとかではないんですね。でも強すぎるっていうのはとてもわかりますね。
稲垣さん:あと例えば90年代のステューシーのサングラスとか、格好良いと思うけど、やっぱり立ち位置はストリートで、自分としては今はもうちょっと綺麗に合わせられるものが良いんですよね。
【District Vision成り立ちの背景】
田代:確かに綺麗に合わせるスポーティなサングラスってあまりないですよね。やはり稲垣さんが考えているような綺麗な合わせ方ができるのって、District Visionを立ち上げた彼らが元々MaxはSaint Laurentでプレスディレクターで、TomはAcne Studiosでデジタルストラテジストをやっていたバックグラウンドも影響してるかもしれませんね。
稲垣さん:彼らはなんでDistrict Visionを始めようとしたの?
田代:彼らは多忙な毎日を送っていたらしく、徐々に心身の不調を感じ始めたところで、自分の健康を保つという目的で、多くのニューヨーカーがするのと同じようにヨガとランニングを始めて、体調を改善していったんですね。そこから「フィットネスの分野において、本当に実用的なプロダクトを開発したい」と思い立って、マーケットに溢れる「なんとなくフィットネス」なものとは一線を画する革新的なアイウェアを開発してDistrict Visionができたんですよね。
稲垣さん:なるほどそういうことだったんだね。
【District Visionをどう合わせる?】
稲垣さん:機能はガチだけど、アスリートに全振りしたデザインではないのは、あくまでニューヨークという街がきっかけになっていることで、デザインに都市感や日常感が現れているのかもね。
田代:そうなんですよね。でもやっぱり今までスポーティなサングラスを手に取ってこなかった人たちにとっては、多分苦手意識というか、こういうスポーティな見た目のサングラス=日常着には合わせにくい、どう合わせたら良いのかわからないみたいなイメージは多少あると思うんですよね。
稲垣さん:確かにそれはあるかもね。でも過剰なデザインのものが洋服は結構流行っていたけど、またなんかジャケットみたいなモードさが最近は強くなってきていて、そういうミニマルなテイストのものに、さらっとDistrict Visionのようなアイテムを加えて、違和感をアクセントにするみたいな提案は今後面白そうだと思うけどな。
稲垣さん:例えばだけど、なんだかんだジャケットとかワンピースのウールの質感とか、カッティングが綺麗な服とかにも、ゴアテックスとか化繊とかの、アウトドア・テックウェア系のアイテムって、意外と相性良いと思うし、綺麗にハマると思うよ。
田代:確かにそう言っていただくとすごく合いそうだな、と想像つきますけど、そういうアドバイスや視覚的なヒントがなくて、且つファッションをお仕事にしてない方だと、想像しにくいというのもありますよね。
田代:だから稲垣さんとかがスタイリングで表現したりすることで、すごくヒントになっているというのはありますよね。
稲垣さん:なってる?
田代:めちゃくちゃなってますよ!自分もバイイングする前は、「こういうのは何と合わせるだろう」って、イメージが浮かばないことは正直多々あります。ただそういう風に稲垣さんたちのお仕事での作品を通して、どんどんスタイリングのヒントが増えていけば、自然とDistrict Visionのようなアイテムを日常に取り入れていくのは増えてくると思うんですよね。
【都市とアウトドアの棲み分けをなくす】
稲垣さん:あと本気でスポーツとかで使うとかじゃなくても、もちろんランニングとか自転車乗るとかで使うのも良いし、あと思うのは、街でも結局半端ない雨だって降るし、ビル風もとても強いし、日差しも街だと照り返しきついしさ、なんかもう別に都市もアウトドアも棲み分ける必要ないくらい街も過酷な環境だよね。
田代:確かにそうですよね!もう街で暮らしていたって何もオアシスじゃないですよね笑。
稲垣さん:そういう環境下でも、ただのサングラスじゃなくて、機能をしてくれるサングラスだから、街で着けていても身につけることに矛盾が生じないというか。
田代:本来の用途を街でもしっかり機能させられるって、着ける側も気持ち悪くないですよね。ちなみにこういうムーブメントって過去にはあったんですかね?
稲垣さん:さっきの話と少し被るけど、過去にも90年代と2000年代初頭にそういうムーブメントみたいなのはあったね。その頃の流れとしてはストリート感強かったから、今のこの流れとは全然違うよね。
田代:それで見ると、District Visionは2015年に始まって、ゴープコアな流れからの、またモードなファッションの流れにはとてもフィットする時期に来ているのではと思いますね。
稲垣さん:まさにそうだね。
【稲垣さんが実際に仕事のスタイリングで使ってみて】
田代:稲垣さんがブランドのルックとかで使ってみて、実際にしっくりきたスタイリングありましたか?ぜひ読者の方にも紹介したいです。
稲垣さん:そうですね、仕事で色々合わせてみてしっくりきているのが、女性にDistrict Visionのサングラスを合わせるのは結構しっくりきていますね。女性がかけた時の方が違和感が生まれやすいというか。
田代:それは良い意味での違和感ってことですね。
稲垣さん:そうそう、例えばMERRELL(メレル)の撮影で使ったのもすごく良かった。ワンピースみたいな女性らしいシルエットのものを
稲垣さん:あとは田代くんも言ってくれたけど、GOLDWIN(ゴールドウィン)で使ったのもとても相性良かったと思ってる。
田代:あれは個人的にめちゃくちゃツボだったので、思わず連絡しちゃいましたね!。まさにこういう風にDistrict Visionをかけてほしい!っていう感じでした。
田代:こういう形で、District Visionを合わせていけば良いかというのは、ルック写真とかを通すと本当にヒントになりやすいですよね。
稲垣さん:District Visionみたいな、ミニマルだけど、わかりやすいアクセントになるアイテムが使えば、一個足すだけでトレンド感は補えるよね。
田代:今後も稲垣さんが何かのルックで使用することがあれば、是非ブリンクベースのアカウントではシェアさせていただきたいですね。
稲垣さん:ぜひぜひ使ってください。
田代:ありがとうございます。最後に稲垣さんのおすすめ何本か選んでもらって、着用していただいて写真撮っても良いですか?
稲垣さん:良いですよ!僕も使ってる「Takeyoshi」とかも良いけど、もっとスポーティな「Nagata」のデザインも良いし、少し派手すぎるって人には「Keiichi」とか全然合わせやすいと思う。
text:Junichi Tashiro