いつかの未来の自分のためにInverted Angelの感想を書く
導入
Inverted Angelがとても面白かったので、ネタバレにはならない程度に踏み込んだ感想を書きます。数十年後の未来にSteamというプラットフォームがまだ存在していると誰かが保証してくれるのならこんなことしなくてもいいのですが、残念ながらそうもいかないらしいので数十年後の自分が思い出せるくらいに、あるいは人によっては「これはネタバレだ!」と言ってしまうかもしれないくらいに踏み込んで書かせていただきます。
もちろん、数十年後にnoteという投稿サイトが残っている保証もないので、この文章はそっくりそのままドキュメントファイルに保存しています。破損とかのことも考えるとアナログ媒体の方がいいんですかね?難しい……
とか何とか悩むくらいには、このゲームのことが好きです。何作目かな、未来でまた触れてみたいと思う作品は。
まあ余談はさておいて、感想に移らせていただきます。
自分が良ければいいの精神で書くので、あんまり惹かれない内容になると思います。
あらすじ
家に突然やってきた、恋人を名乗る知らない少女。
偏執的で、狂気的。ストーカーのようにも思えるけれど、他人と断ずるにはあまりにも自分のことをよく知りすぎている。
とある事情から、そのまま放っておくわけにもいかないと思った主人公は、話を合わせながら少女の正体を探っていく。
特筆すべき点として、この物語に確固たる真相というものは存在していない。彼女の正体、そして主人公の状態というのは貴方の想像によって輪郭を得て、形作られていく。
彼女はストーカーなのか、それとも本当に恋人?あるいは──
感想
訪問者、知らない人、彼女、少女、呼び方を決めてしまったら定型の何かが産まれてしまいそうで嫌ですね。とにかく、その少女が結構好みでした、ロジカル、ラテラルな言葉遣いなのに都度都度感情的だったりして、昨今のなんかズレてるヤンデレに食傷気味だったので、ああ、やっぱりヤンデレってこうだよな、みたいな。
シンプルに文体も好みでした。作者さん、他に何か物書きしてたりしないかな。してますか?数十年後の私に聞いています。
とりあえず、それぞれのルートの感想を書きます。
Invalid Angel
『私はあなたの恋人』
一番最初にたどり着いたエンディングです。自分以外にもこれが最初だった!って人は結構多いんじゃないかな。
ありがちと言えば、ありがちなのかな。好きか嫌いかで言えば、すごく好きです。
残念なのは、このルートが見られるのが一回限りっぽいこと。あんまり好きなゲームの実況動画とか見たくないんだけど、もうそういうのでしか見られないのかな。
Higher Girl Pudding
『女子力は自分のために』
二番目にたどり着いたエンディングです。
最高です。好きとかきらいとかじゃなくて、面白くて最高だった。
カスタードプリンの花言葉、良すぎる。
Cheesecake Hallucination
『明後日の方向の綺麗な明日を』
三番目にたどり着いたエンディングで、個人的に一番好きなエンディングです。前二つは推理パートがないので、このルートで初めて推理パートを遊べました。そのせいで印象に偏りがあるのかもだけど一番、叙述トリック的面白さがあったのもこのルートかも。
このルートの彼女が一番好き。なんとなく、このルートの二人が一番幸せになりそうとも思っています。主人公は幸せになってほしい性格してるし、彼女は幸せを掴み取れそうな性格してる。
Chocolate Hideout
『やたら綺麗に汚れた記憶』
四番目にたどり着いたエンディングです。一番ハッピーエンド風味だったのもこのエンド。一番シナリオがわかりやすく通っていたのもこのエンディングな気がする。推理も詰まらずにすらすら解けた。
このルートは主人公の心情がとても良かったです。正確に言うと、物語開始前の主人公の心情になるのかな。
彼らが幸せなのかどうかは、僕には少し難しい命題です。それでも、遠い未来などと贅沢なことは言いませんが、ちょっと先の、数日後の彼らがきっと幸せであることを願っています。
Scarlet Icecream
『あまくてすっぱい味がしたの』
五番目にたどり着いたエンディングです。一番うわぁ……ってなったのもこのエンディング。比較的たどり着きやすい分岐に居るので、Chocolate Hideoutの直ぐ後に見た人自分にもたくさんいるだろうけれど、全員うわぁってなったと思う。主人公がとか少女がとかではないです、全部うわぁ。
それはそれとして、終盤の彼女の行動?思想?に一番わかる~となったのもこのルートでした。いや実際に自分がされたことあるとかではなく、昔から時折そういう愛され方の妄想をしていたので、同じ考えの人も居るんだなと、少し嬉しくなりました。
さっきから引用してるこれ、推理パート導入の口上で、全部めちゃくちゃ"始まる"って感じで良いんですが、これが一番好きかもです。「言葉にできることは考えていることのほんのひとかけら」って台詞が作中何度も出てくるのですが、それを体現しているような気がする。
どれだけ言葉を尽くしたところで、人と人が完全に分かり合うことはできない。言語の世界にε-δ論法は存在していないしね。それでも理解しようという姿勢は大事だし、無限の果てに分かり合えないことがお互いわかったのなら、それは分かり合えたと、少なくとも思い込んでもいいだと思う。無知の知みたいになって、少々癪ではあるけれど。
Rusty Caramel Cage
『みんな生活が人質みたい』
六番目にたどり着いたエンディングです。一番印象的……って、言えばいいのかな。少なくとも、どろどろ絡みついて頭から離れないのは確か。Higher Girl Pudding~Chocolate Hideoutの流れで、もしかしたらそんなに悍ましいゲームじゃないのかも!と思ったのを返してほしい。
おどろおどろしいし、登場人物が全員理外の存在だし、シナリオも難解だった、けどそれだけに、面白い。
二番目に好きなエンディングです。
Fool on the Sugar Board
『死んで直すほどでない馬鹿でありたい』
七番目にたどり着いたエンディングです。通常エンドはこれが最後。あそこにまだ分岐があると思わなくて探すのにちょっと手間取った。
悪くない落としどころだったのかな、彼女がね、彼女がすごく格好良かったです。
後、「大抵の場合、人は自分が考えるよりも愚かじゃない」という言葉がとてもストンと腑に落ちました。言語化上手すぎてびっくりした、ここまで齟齬を生じさせずに思考を言葉にすることってできるんだ。
今後幸せになれるかどうかは、まあ本当に今後次第なのかな。それでもやっぱり、悪くない二人に思えてしまったので全員に幸せな未来が訪れる因果であったことを祈っておきたいです。
Inverted Angel
『天使は足音が鳴らない』
最後のエンディング、俗に言うところのtrue endです。
どうなんだろうね、ここまでの七色の感想を見返したのなら、思い出せてるんじゃないかな。
もしかしたら未来の自分と今の自分の繋がりを保証してくれるものなんて連続性しかなくて、あるいは未来の自分にとってこの時の記憶なんて夕焼けみたいにもう散り散りになってしまっているのかもしれないけれど。それでも今の私の言葉を読んで、その意味についてわかろうとしているのなら、その言葉にできない動きこそがこのルートの感想に成り得るような気もしてしまうかな。
すごく幸せで、楽しい時間でした。
メインのシナリオじゃない部分の感想
具体的にはゲームシステムと、フレーバーテキストと、オーディオ・ビジュアルについて。
まずはゲームシステム。
推理要素が、選択肢ではなくテキストウィンドウへの自由入力なのが新鮮でよかったです。推理ゲームは数えるほどしか遊んだことがないのですが、今まで遊んだどの推理ゲームよりも、没入感があってよかったです。ネットでたまに見た「AIのせいで全然わかってなかったけど進めちゃった」みたいなこともなく、それなりにサクサク進めて、たまにそれなりに悩んでと、いい塩梅の難易度でとても良く楽しめました。もう少し難しくても楽しめたかな、とも思いますが。
次にフレーバーテキスト。
シナリオ中に作中に登場する単語の意味を調べることができるシーンがあり、そこから違和感を探して~みたいな要素なのですが、シナリオにほとんど関係ないものについてまで調べられるようになっていて、それがとても良かったです。こういう部分が凝っていると、世界観に奥行きが出ていいですよね。現在8個見つけていて、多分これで全部だと思うんですけど他にもあったらどうしようかな。
最後にオーディオ・ビジュアルについて。
すごくいいです。女の子がかわいいのはそうだし、全体的にUIがパステルすぎず長時間見てても目が異常に疲れるみたいなことがないのがすごくいい。主題歌もすごく良くて、最近は繰り返し聴いています。リンク張るけど、できれば自分のプレイ体験の中で聞いてほしいな。
少しうーんと思った点としては、画面のエフェクトがテキストウィンドウにも掛かるので、そういう時はちょっと文字が読みにくくなるのがなんとも。ただテキストだけエフェクトを外すと今度は没入感が薄れると思うので難しいところなのかな……バックログではエフェクトなしで見られるみたいにできないのかな、と思ったり。
まとめ
全部まとめて、すごく良いゲームでした。自分以外がこのゲームを評価していたら嫉妬しちゃうかもってくらいに好きなゲームになりました。
Steamで800円なのでちょっとでも気になったって方は手を伸ばしてみてくれると嬉しいのかなって感じです。あんな導入だったのに、最後はよくあるおすすめ文脈で終わっちゃいましたね。
お付き合いいただき、ありがとうございました。