明日も、ずっとも。
「明日も好きです」
『ずっと』は約束できないけど、今日電話したおかげで明日はきっと好きって言えるから。明日も好きです。
電話越しに伝えられた言葉は、なんだか少し切なく聞こえた気がして。
わざとじゃないんだと思うけど、彼女ならわざとそういう風に言えるような気もして。
「ありがとう」
好意の返事にしては、ひどく終わっている。ただの簡素な、誰にでも言えるような、お礼。
「はい、どういたしまして。」
少しだけ寂しそうな、でも、嬉しそうな声で語られる定型文のお礼。そう返すしかないからだ、きっと。それも分かってるのに、俺はそれしか、言えない。
一拍置いて、電話の向こうが口を開く。
「好きって言える間は好きって言いますね」
今は付き合えないっていう、そういう返事をしたのは自分のせいで。だから、その気まぐれみたいな「好き」は、彼女が自分のことを向いている間しか存在しないんだと痛感させられる。実際、飽きたらすぐこんな恋心なんて捨てますと言い切る強い彼女だ。
だからきっと、彼女はいつか好きって言ってくれなくなる。ずっと口にしてほしいなら、自分が手を伸ばして、彼女に好意を伝えるしかない。
でも、今、好きっては言えない。俺には、言えないから。
「おやすみ」
繰り返される定型文。せめて、忙しい君がよく眠れるように。
「はい、おやすみなさい。また。」
電話が切れる。あっさりした、何の躊躇いもない、その態度。
またはいつまで続くだろう。…いや、いつまで続けてくれるんだろう。
明日、君は他の人を好きになるのかもしれない。明日には他の誰かに好きと言っているのかもしれない。『ずっと』を約束するのかもしれない。俺には言わない、その永遠を約束してあげるのかもしれない。そんなことを考えながら、自分は行動を起こせない。
だから、結局、何も言えない。他の誰かを好きになっても、文句なんかを言っていいはずもない。何も出来ないから。
君が、明日も、ずっとも、くれてたら、くれるなら、いい、なんて、そんなの。