おいハンサム!! DVD BOX 吉田鋼太郎 木南晴夏 佐久間由衣 桐山漣
おいハンサム!! DVD BOX 吉田鋼太郎 木南晴夏 佐久間由衣 桐山漣
『おいハンサム!! DVD BOX』これでいい、というよりもむしろ“これがいい”。テレビドラマの劇場版となると、どうしたっていわゆる“劇場版スケール”が求められ、突然海外に行ったり大きな事件が起きたり、なにからなにまで大々的に見せようとするのが常套手段。もちろんずっとテレビで観ていた作品を観るためにわざわざ劇場まで足を運んでもらうとなれば、きっかけや理由付けになるだけの「特別感」が必要になるわけで、そういった意味ではこうした劇場版スケール自体を否定する余地はない。
深夜帯での放送ながら「ありそうでなかった新感覚のホームドラマ」として、大きな反響を呼び、シーズン1、さらにシーズン2の放送、そしてこのたびの映画化と、今、最も注目を集めている『おいハンサム!! DVD』の魅力に迫ります。
しかしながら映画『おいハンサム!!』は、あえてなのかどうか、そのようなあからさまな「特別感」を付与するような選択肢を取らない。むしろ徹底してテレビドラマと同じことをやろうとする作り手の気概すら感じるほどで、もちろん119分の上映時間=ドラマ3話分というような構成でもなく、しっかりと一本の軸が通ったストーリーとして器用巧みにまとめあげているのだ。
家ではステテコに腹巻き姿の頑固おやじに、夫を立てつつ一家を仕切る専業主婦の母、そして娘たち。『おいハンサム!! Blu-ray BOX』2022年のシーズン1放送開始当時、登場人物の設定だけを知った段階でちょっと心配してしまった。これ、伝統的家族観(伝統とかいって突き詰めればせいぜい明治~昭和のモデルに過ぎないのだけど)を強固なものにするための保守的なドラマかな? と。でも、まったく違いました!! とにかく安心して観られるホームドラマです!
基本的に“伊藤家”の家のなかと、娘たちそれぞれが一人暮らしをしている家、それぞれの職場、あとは近くの飲食店や路上といった、紛うことなき生活圏でドラマを構成してきた『おいハンサム!! Blu-ray』。それを前提にすると、次女の里香(佐久間由衣)が東京を離れて京都に行くこと、それに付随して父・源太郎(吉田鋼太郎)と母・千鶴(MEGUMI)も里香に会うために京都に向かうことは彼らの生活圏を突破した、ある種の“劇場版スケール”に見えなくもない。しかしながら、よくよく考えてみれば、元々里香は結婚して大阪で暮らし、シーズン1の序盤で夫(元夫)・大輔(桐山漣)の浮気が発覚することによって東京に戻ってきているのである。