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藤子不二雄A『まんが道』に見るフリーランスのリアルな生活

昔から繰り返し読んでいるバイブル的な漫画作品があるという人も多いと思いますが、僕の場合は藤子不二雄A先生の『まんが道』がそれに当たります。

中学時代に『まんが道』を読んだことで衝撃を受け、「漫画家って何てカッコイイんだ!」と思い、クリエイティブ系の仕事を目指しました。

つい最近も全巻を一気に読んだばかりで、読んだ後は不思議と創作意欲が湧いてくるので、人生の節目や仕事が一段落した時など折に触れて読んでいる作品です。

自分がフリーランスになって改めて読んでみると、『まんが道』に描かれている内容はフリーランスの生活そのもので、フリーランスで仕事をしている人であれば共感できる場面がたくさん登場します。

今回は、いかに『まんが道』がフリーランスのリアルな生活を表しているかを紹介します。


『まんが道』とは

藤子不二雄Aが描く、藤子不二雄の自伝的な青春長編漫画です。掲載誌が変わりながら連載は43年間にわたって続き、2013年に完結しました。1986年にはNHKでドラマ化されています。

物語は満賀道雄と才野茂の出会いから始まり、少年時代~トキワ荘時代までが描かれ、内容や登場人物などはほぼノンフィクションですが、若干アレンジが加えられています。

映像で見る『トキワ荘』

https://www.youtube.com/watch?v=GANgDzzEWk8

トキワ荘はすでに取り壊されていますが、1981年にNHKで放送された『NHK特集「わが青春のトキワ荘 ~現代マンガ家立志伝~」』では、当時のトキワ荘を見ることができます。

この番組では、1980年(昭和55年)に「トキワ荘」が取り壊されるのをきっかけに集まった、かつてトキワ荘で暮らしていた手塚治虫をはじめ、藤子不二雄、赤塚不二夫、石ノ森章太郎などの売れっ子漫画家による同窓会の様子が紹介されています。

それとは対照的に、同じくかつてトキワ荘で暮らしていた漫画家の森安なおやにもスポットが当てられています。

森安なおやは『まんが道』にも登場し、主に『漫画少年』に作品を発表していました。寡作ではあったものの、叙情に溢れた素朴でかわいい絵柄が特徴で、当時は周囲からの評価も高かったようです。

この番組は『まんが道』のその後ともいえる内容で、当時のトキワ荘を知ることが出来る貴重な資料ともいえるので、機会がある方は見て欲しいドキュメンタリーです。

仕事を受けまくる

『まんが道』といえば、富山から上京して1年ほどで売れっ子漫画家となり、多数の仕事を抱えた状態でお盆に実家に帰省して、ほとんどの仕事を落としてしまうという悪夢のようなエピソードが印象的です。

これはフリーランスにはよくあるパターンで、自分のキャパシティを把握していない状態で仕事を受けまくり、結果的に納期に間に合わなかったというもの。特に起業したばかりの頃は自分の作業ペースがつかめていないので、はまる人は多いと思います。

このエピソードはフリーランスにとっては他人事ではなく、現実として受け止めてしまうリアルさがあり、『まんが道』を読む度にこのエピソードは胸に刺さります。

仕事中の散歩

『まんが道』では、仕事のアイデアを練るために散歩をする光景が頻繁に見られます。

たしかに漫画家のようなクリエイティブな仕事の場合、机に向かっているだけではいいアイデアは浮かばないので、気分を変えるため散歩に行くのは理にかなっていますが、この気軽さはフリーランスならではだと思います。

『まんが道』における散歩の光景は一見すると気楽そうにに見えますが、結果さえ出せば、完成までの過程は自分の自由になるというフリーランスの実力主義の実態がリアルに表現されていると思います。

お金の描写

『まんが道』では、しばしばお金の話題が登場します。

藤子不二雄は故郷の富山県高岡市で漫画を描いていた高校生の頃から、雑誌の漫画賞に応募して賞金稼ぎをしており、2人の名義で作った預金通帳の金額が増えていく様子は、漫画で稼いでいるというリアルさが伝わってきました。

また、上京して漫画家になってからは、各雑誌に描いた原稿料が現金書留が郵送されたり、源泉徴収されたギャラを直接受け取る描写がとてもリアルで、当時の漫画家の経済事情が垣間見れます。

食事の風景

『まんが道』では食事の場面が頻繁に登場します。

ラーメン屋「松葉」のラーメン、カレー、自炊、チューダーパーティー、和食、洋食、お菓子などバラエティ豊かで、『まんが道』と食事は切っても切り離せません。

食事シーンの多さは、漫画制作は体力勝負であり、また食事が重要な気分転換のひとつだったことがうかがえます。

まとめ

『まんが道』の面白さは、藤子不二雄の自伝としての面白さと、漫画家の実態をリアルに描いているところです。フリーランスの人なら共感する場面がたくさん登場し、当時の漫画家のリアルな生活がわかります。

『まんが道』では、満賀と才野が漫画家という夢に向かって一心不乱に突き進みますが、その姿に自分を重ねることで当時の漫画家の生活が追体験できる素晴らしい作品です。


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