2006年 ドイツワールドカップ 喧騒の街、ベルリンに呑み込まれて
2006年、海外で初めてのサッカーワールドカップを体験しに行くことにした。
開幕~決勝まで、カードや対戦エリアを基にランダムにチケット抽選に挑み、もしすべてが当たれば総額60万円/人・滞在期間1ヵ月を超える応募を行う。
結果、自分はすべて外れたが、同行者の一人がうまい具合に「6/27ドルトムントのベスト16」と「6/30ベルリンのベスト8」の2試合を引き当てた。
頃合い良く6泊8日で行けることになった。
◆出発当日
出発前に調整を失敗してしまった。
朝9時に飛行機に乗るというのに、24時と27時に向こうで見る予定の対戦カードが決定する試合。
当然見るしかないため、睡眠時間は2時間程度、しかも2試合目は延長戦に突入し、結果も知らず、普段より人影の少ない日曜の駅へと出掛けて行った。
フライト寸前にベルリンでの観戦カードがドイツvsアルゼンチンに決まる。――スウェーデンvsメキシコにならずホッとした。
「ドイツへ行ってドイツ戦を見る。」この時点で強運を感謝。
◆ドルトムント
最初の3日間の拠点はドルトムントにほど近いエッセン。
3か国周遊も含め、一通りの観光を終え、3日目にブラジルvsガーナ戦。
黄色と緑プラス少しの赤で染まったスタジアム周辺は、サンバと打楽器に彩られている。
ガーナの善戦が光ったが、ロナウドが当時W杯歴代最高となる得点を挙げてブラジルが勝利。
ここまでは序章。
◆ベルリン
テーマの本題は次の目的地ベルリン。
ベルリン2日目、チケット引き換えに交換所へ。
「ドラゴンクエストⅢのカツアゲ事件」ではないが、引き換え後すぐに強奪されるのは避けなければならないため、同行者のバッグの奥底「地球の歩き方」に挟みしまい込む。
◆いざスタジアムへ
本場ドイツbeerを注入し、「ベルリン・オリンピアシュタディオン」に繰り出す。
スタジアム周辺は3日前のカーニバルと比べて、静かとは言わないまでもそれ程の喧騒感はない。
両頬を黒と赤と黄色の国旗カラーに染めてもらい、「ダンケ・シェ~ン」しか知らない似非ドイツ人と化し、Beerの本場に居るのにスポンサードしているバドワイザーしかないという身も蓋もないBeerでウトウトしながら、しばし休憩。
しかし、起されながら、開始1時間前ぐらいにスタジアム内に入ると様相は一変。
「これだ!」
水色の対面側ゴール裏1割を残し、すべてが本国ドイツ・サポーター、席は凹んでいる側のゴール裏――つまり完全にドイツ・サポーター側。練習する選手に対して強烈な応援を行っている。
入場を始めると本当に耳をツンザク様な72000ch.1サラウンドの大歓声が聞こえる。
3日前とは比べ物にならない。
これだけで「ドイツvsアルゼンチン」のカードになってくれた強運に感謝。――メキシコvsスウェーデンならば絶対こうは行かない。
歓声やブーイングの音量は半端ではなかった、昔見た「ユーベvsローマ」と同じ迫力だが、本国を応援するエネルギーが強く、殺伐とした雰囲気はこちらでは皆無。
クローゼのゴールの瞬間は周りとハイタッチ。
当然、前の席のボーズ頭の屈強な父と親子とは思えないかわいい娘、後ろの若いドイツ人はまったくの他人。
PK戦までもつれた試合は緊張感を高め、ゴール数の多さを加えたことで、より多くの時間この興奮の渦に包まれる。
試合内容が面白かったのかどうか記憶にないが、そんなことはどうでもいい!!
現地で本国チームが勝った試合をサッカー観戦に慣れた人々に混ざって生で見る。
強豪同士の戦いが見れたことが最高の出来事だ!――「東京ドーム」でストーンズのライブが始まった瞬間が、「Rock Oddessey」でThe Whoのライブが始まった瞬間が、150分の間ずっと持続してるような、夢の中にいるような気分・・・
そういえばハーフタイム、トイレの少ないドイツのスタジアム、Beerでタンク一杯になった人々で仮説トイレは混み込み、周りに合わせて“外から”仮説トイレに目がけて立小便。
世界各国、皆共通した笑いが止まらない。
◆試合が終わって
ドイツ勝利で歓喜の試合終了後、イタリアvsウクライナを「ブランデンブルグ門」でビジョン観戦するためSバーンに乗り込むと、
スタジアム駅の外でも、
駅の中でも、
電車の中でも、
止まる駅、止まる駅すべての駅で、
誰もが「Deutschland!! Deutschland!!」。
警備している警察官はサポーターに絡まれても笑いかけて咎めるような事も無い。
ベルリンに居る全てのドイツ人が興奮し、幸せな気分に浸っている。
駅から門までの間も、「FAN FESTA」入場後も、だれかれとも無く握手&ハイタッチ。
対戦チケットを見せると拝まれる。
自分の国が勝ったわけでもないのに気分は最高にしあわせ、冷静に考えるとバカな事だが、そんなバカがどうでも良いくらい楽しい。
この中の一員でいられることの喜びは実際にここにいた人間にしか絶対に分からない。
真面目で冷静なドイツ人の印象とは真逆のバカ騒ぎにベルリンの街全体が包まれている。
自分自身がものすごいエネルギーを放出し、ものすごいエネルギーを人から受ける。
しばらくすると体力の低下と共にHOTELへと戻る。
ドイツ人の喧騒は翌日の朝も続いている。
窓の外ではまだ車のホーンが鳴っていたので、12時間以上もこの喧騒が続いたことになるのだろう。
きっとこの日の出来事は人生を振り返った生涯でも1、2を争う1日になることだろう。
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