Sound Horizon最新作『絵馬に願ひを!』概略感想

サンホラの最新アルバムを買ったと思ったら"ひぐらしのなく頃に"をプレイしているような感覚になった。何を言っているか分からないと思うが私もよくわからない。

とまあそんなわけで2021年1月13日にSound Horizon 7.5th or 8.5th Story BD『絵馬に願ひを!』 (Prologue Edition)が発売(※1)となりました。半月版みたいなやつですね(伝わらない)。

Revoさんがやりたい事をやろうとした結果、媒体がCDからBlu-ray Discになり、音楽配信が勢力を伸ばしていく中で物理メディアを入手しないと視聴が出来ない、出先で片手間に聴くことを良しとしない重量作となりました。「これでプロローグってマジかよ……」(※2)は我々ローラン(※3)の総意でもあるような。

今回のパッケージには様々な仕掛けを施されたブックレットなども存在せず、トラック(曲名)リストも無し。提示された1枚のディスクにこれでもかと詰め込まれた様々な要素を紐解いていく行為は謎解きにも似た没入を要求。

購入し視聴したローランの間で飛び交うのは「ルート」「分岐」「回収」「ランダム」などの、およそ音楽アルバムを聴いて出てくるとは思えないワードの数々。ねえ、これってゲームだったっけ?

読み手を大いに混乱刺せつつ、私の感想として各曲の概略を記しておこうと思う。深い考察とかは無いです。消化し切れていないというのもありますが、構成がフル版でどうなるかもわからないので…。

なお、前述の通り曲名は明示されていないため、以下の全ては画面表示を元に付けた仮題であります。絵文字とかも表現出来ませんので。

Tr1.星空  へと続く坂道

発売前SPOT映像(※4)でまず我々を大いに混乱させた導入の1曲目。コノハナノサクヤビメをモチーフとしているっぽい。

神社本殿へ向かう参道をイメージした、リスナーの期待と不安を表した曲もあります。

Tr2.狼欒神社

従来のStory CDの1曲目に当たるセクション。アルバム全体のコンセプトを説明するあらすじ的な曲を最初に提示するのはいつも通り。

ナレーションがランダムで大塚明夫さんverと深見梨加さんverに変化し、タイトルロゴも少し違うという細かい仕掛けがいきなり提示されております。

急に始まる小芝居はコンサートの注意事項的なノリがします。もくもくしてきたのは多分演出用のスモークですね(せやろか)。

また、作品世界観の説明とメタ的な視聴手順解説を同時に行うというリスナーを信頼しすぎた作りもいつも通りで安心しますね。お前も神群にしてやろうか!

Tr3:夜の因業[カルマ]が見せた夢

日本神話のイザナミ、ヒルコになぞらえた一曲。生まれてくる前に死んでしまった子、葦舟で流された、名付けなど、直球のモチーフを使って女性の心情を描いていますね。

この曲が終わると1回目の分岐選択が出現します。するんです。左側(紫色)の選択をL、右側(青色)の選択をRと呼称します。ただ、以後の曲が変わるのは(今バージョンでは)この選択のみです。何を言っているんだ。わからなくてもわかってほしい。無理か。無理だよ。

Tr4L:贖罪と焔の息吹

Tr3の母親が無事に子を産むルートがこちら。とはいえ神話に照らし合わせるとカグツチの出産に相当すると思われ、これは本当に無事なのか? という気分もありやなしや。

この曲の最後に選択肢が出ますが、今のところ展開への影響はわかりません。フル版だと結末に向けたフラグの1つでしょうか?

いずれにせよ、選択肢の文面から母親は産後に亡くなっていることが示唆されます。

Tr4R:暗闇を照らすヒカリ

第二子以降も産むことが出来ず不妊に苦悩するルートがこちら。モチーフが神話よりは現代医療に寄っている印象ですね。破滅的でなかなか精神力を削られるところがあります。

また、歌詞にFiction Junctionと出てくるところはオールドファンにとって感じるところがありますね。Special Thanks。

こちらの最後の選択肢では、結末に対する[左]受容と[右]不服を示す形。Tr4Lも同様に、視聴者自身の選択に対する感想を問うているとも取れます。

Tr5A:私の生まれた地平線

"私"のところは人物のシルエット、"平"は鳥居の絵文字です。参道の中央を通ってはいけないので平の字は使えないのではという考察も見掛けました。

ある父子家庭の少女についての曲。現代社会を歌っているようで、旧作のThanatosにも通じる部分がありますね。

また、このセクションはランダム低確率で少年の曲に変化するらしいので暫定的にAと付けています。そっち側はまだ聴けていないので…

ヒミコのフレーズもあり、曲の最後に結末を遡るというような文章が出るところから、作品世界中の時系列で最後にあたる曲であり、同時に神話の終わりを示すとも取れます。

Tr6L.恋は果てまで止まらない

最初の選択肢で左を選んだ場合の曲。アイドルに憧れた少女と2人の幼馴染みが登場します。芸能にまつわるテーマということで、人物名はアメノウズメがモチーフのようです。LEON MALLは笑うところ。

曲の最後に選択肢が出現し、幼馴染みのどちら(男性or女性)が好きかを選ぶ事になります。どちらの選択をしてもスタッフロールになり、そういえば体験版だったということを視聴者は思い出して現実に帰還します。続きは本編(フル版)で!

Tr6R.西風のように駆け抜けろッ!

西風はおそらくゼファー(※5)と読みます。猫好きバイク乗り男性の曲。人物名出典は文字通りサルタヒコと思われます。

従来の中世ヨーロッパ的な世界観では難しかったヒップホップ、ラップ調の曲。馬のいななきがエンジン音になった、文明だ!

こちらの選択肢は老いた愛猫の延命を望むか望まないか。延命治療に対する考えを問われているようにも取れます。選択をしたところでスタッフロールへ。

おわりに

いい意味で気軽に聴くことが出来ない作品。フル版では真エンディングに到達したら通し再生用の各ルートフローチャートみたいなのが搭載されたらいいなぁと思いますね。フローチャートが必要な音楽作品まじ何なんだ。

自分では確認出来ていないのですが、各楽曲とも低確率で登場人物の死亡ルートに入るとか。事故かよ、事故だよ。そもそも確率分岐ってなんだよ。トリガー条件が何かあるような気がするし事故に原因も何も無いような気もする。私は全く遭遇しておりません、運がいいのか悪いのか…。

試しに聴いてみてよとかオススメすることは一切出来ないなと思いますが、興味を持って自ら手に取った貴方は深い深い考察の沼に墜ちていくことでしょう。

そこは楽園か奈落か。来る者は拒まないが去る者は決して赦さない、かもしれない。

…しかしこれ、フル版出るの何年後? アラウンド15周年が20周年になったりしない? 大丈夫?

参考資料と注釈

(※1)公式の作品紹介はこちら:https://shaxvanniv.ponycanyon.co.jp/release/index.html

(※2)引用元:BARKS【インタビュー】Sound Horizon、Story BD『絵馬に願ひを!』が問いかける〈生むべきか生まざるべきか〉という命題 https://www.barks.jp/news/?id=1000194276 )

(※3)ローラン:Sound Horizonファンというか信者というかを指す呼称

(※4)ポニーキャニオンのyoutube公式チャンネルの動画 https://youtu.be/5UJB2B1zwpo

(※5) カワサキ・ゼファー:1990年代頃に生産されていた川崎重工業のバイク。

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