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教育社会学 note⑤ 0722

 〈大テーマ〉
学歴社会とは何かを明らかにし、高学歴化が進行するとどのように変化するのかについて、学力の視点から述べよ。 


0 はじめに

・子どもの貧困を多元的に把握し、すべての子供を大切にする学校づくりの在り方を理解することを目指す。
・まずは、貧困とは何か、そして、貧困によって子どもはどのようなふりを抱えるのかを把握
・子どもの貧困対策について概観し、学校を軸とする教育支援の在り方について理解を深める。

1 学習課題

(1)貧困・子どもの貧困に対する量的・質的データを収集し、多元的に解釈してみよう。
(2)子どもの問題行動の背景を描いてみよう。「宿題をしない」「授業ち中に寝てしまった」子どもの背景にある連鎖的要因を関連チャート図で示してみよう。
(3)ケアのための教員の力量形成について考えてみよう・
(4)教育支援の在り方について議論してみよう。

2 日本における子どもの貧困の実態

子どもの7人に1人が貧困状態にある。
→2015年実施の「国民生活基礎調査」厚生労働省より

日本ではとくに、ひとり親世帯の貧困率が高い。
→ひとり親世帯の半数が貧困ラインを下回る所得しか得ていない。

2000年に入るまで、貧困や格差の解消に消極的であった日本は、国際比較によって事態の重大性を認識し、それらへの対策を進めるようになった。

子どもの貧困は一部地域の問題ではなく、日本全国の問題して広がっている点が指摘されている。

3 貧困とは?

「相対的な」測定指標を用いて子どもの貧困実態
「相対的」とは何を意味するのだろうか。

日本で貧困が問題視され始めたのは2000年ごろ。
日本でも戦後直後は、毎日の食べ物にこと欠く状態であり、物資的資源の欠如したいわゆる絶対的な貧困に近い状態であった。

ところが、高度経済成長によって豊かになるにしたがい、一億総中流時代といわれるように。

収入による差や生活の物資的豊かさに違いはあったものの、それなりに「努力すればナントカなる」社会になり、ほとんどの人が「『上』になれる可能性を信じることが出来た」社会だった。

・・・貧困を絶対的定義から捉える傾向が強かったから。
現在の絶対的貧困の基準は、世界銀行によると、一日1.90ドル未満で生活する状態を指す。

貧困の「再発見」をするために、貧困な相対的定義を見いだす必要性。

個人、家族、諸集団は、その所属する社会で観衆になっている、あるいは少なくとも広く奨励または是認されている類の食事をとったり、社会的諸活動に参加したり、あるいは生活の必要諸条件や快適さをもったりするために必要な生活資源を欠いている時、全人口のうちでは貧困の状態にあるとされるのである。・・・

『教育社会学』 原清治/山内乾史

この相対的定義には、重要な点が3つ示されている。
①ある人が相対的貧困の状態にあるかどうかの判断は、同じ社会の、歴史上の同じ時点に暮らしている人々との関係においてのみ可能である。
②人間としての生活の質を捉えようとする志向性
③締め出されているという表現に示されるように、剥奪や排除の概念が用いられている→社会的排除

③→<物資的・文化的側面>と<社会関係的側面>における貧困の影響
社会的排除は後者・・・「人と人、人と社会との『関係』に着目した概念」であり、金銭的・物品的な資源の不足をきっかけに、社会における仕組みから脱落し、人間関係が希薄になり、社会の中心から外へ外へと追い出され、社会の終焉に押しやられる事態を意味する。 「奪われる」という視点

貧困を多元的に捉え、多方面から立体的に浮かび上がらせなくてはならない。

3 貧困の帰結としての重複する不利とその要因

①子どもの貧困は、子どもの不利と関連する。

子どもの貧困において問題なのは、物資的欠如が、子どものスティグマとして焼き付くと屈辱や恥辱となって現れること、それが子どものネガティブなイメージや無力化を招き、子どものシティズンシップや声を奪ってしまい、子どもの人権の否定を生じさせる。

日本においても経済的貧困の子どもへの多面的影響が明らかになっている。
→貧困世帯の子どもと低学力・低学歴との関連や、子どもの身体に与えるネガティブな影響
 貧困の心理的影響として、子どもの自尊感情・自己肯定感の低さや学校における疎外感に作用。
「意欲の格差」「希望格差」
貧困と虐待との間に強い関連がみられるゆえの子どもの発達上の課題発生も指摘

☞貧困世帯の子どもの中に、不利や困難を抱える子どもの割合が多い

②不利の要因

経済的困難から不利に至るまでの経路は複雑多岐にわたる。

4 子どもの貧困対策としての学校のプラットフォーム化

「子供の貧困対策に関する大綱」が閣議決定

教育の支援では、「学校」を子どもの貧困対策のプラットフォームと位置づけ、福祉機関などと連携した総合的な支援体制の構築

子どもの貧困対策上、学校が中心となってその解決にあたることが期待されているが、学校は、「平等化装置」ではなく、特定の階級・階層の利害に貢献し、その支配的な立場を維持する役割を果たす。

日本の学校は学歴や職業に関わらず、一様に「がんばる」人々を新たな社会集団として形成する役割を果たしてきた→「同質化の機関」として発展
「みんな同じく」を原則とする教育(面の平等)

☞「同質化」「面の平等」を推進してきた結果として生じるのが、「排除」の問題である。
子どもの貧困時問題に対処するためには、排除の文化に陥りがちな学校の仕組みを変え、一人ひとりの差異を承認し、異なる処遇をとおして教育の質を高めていく方向性が期待される。

5 子どもの貧困対策と教育支援

「すべての子どもを大切にする学校」とはどのような学校なのか?

☞排除や二極化を避けるシステムを調え、すべての子どもに同等の参加を保障する学校といえるだろう

①ケアする学習環境の整備

モノ・文化の剥奪を防ぐ試み

教員間あるいは教員と学校事務職員・スクールソーシャルワーカー・スクールカウンセラーといった職員との協働は非常に重要。
モノと文化の剥奪を学校だけで回避するには限界がある。→子ども食堂、学習支援を行っている外部諸団体・組織とつながり、地域住民の支援

②尊重・敬意(リスペクト)と人権保障のためのカリキュラム

学校では、困難を抱える子どもの屈辱や恥辱を払拭し、自己肯定感や意欲を高めるとともに、声を出せるようにすることを目標にしたカリキュラム開発の重要性。

地域住民や旅行者、ホテルやゲストハウス経営者、NPOで活動している人々から話を聞く活動…
<4つの良さ>
①困難を抱えた子ども自身が自分にも最低限の生活を保障される権利があることを学べる
②貧困問題を自己責任ではなく社会構造の問題として捉えなおし、子供自身が問題を多元的に認識できるようになり、屈辱や恥辱の感覚を減らせる
③人々のあたたかな思いに触れ、大切にされているというメッセージをうけとることで、自己承認が可能となる
④貧困問題に取り組む人々の姿がモデルとなり、自分自身も社会に対して何かをできるのではないかという参加の意識が芽生えること

☞学校内外の人々と協働し、包括的なアプローチが必要。

◇「社会に開かれた教育課程」
新学習指導要領では、「主体的・対話的で深い学び」でもとめられている。アクティブラーニングの考えが下地となっており、対人関係能力やコミュニケーション力といった「ポスト近代型能力」が必要とされる。
→目に見えない能力ほど、家庭からの影響力が大きいとされる。アクティブラーニングでは、対話等の活動で得たものを「知」として捉えなおし、また、対話をするといった循環をくりかえして、最終的には「知」の体系化も期待されている。
活発に活動をしてさえいればそれでいい!?
困難を抱える子どもには難しい作業である場合が多い。

6 まとめ


(1)貧困・子どもの貧困に対する量的・質的データを収集し、多元的に解釈してみよう。
(2)子どもの問題行動の背景を描いてみよう。「宿題をしない」「授業ち中に寝てしまった」子どもの背景にある連鎖的要因を関連チャート図で示してみよう。
(3)ケアのための教員の力量形成について考えてみよう・
(4)教育支援の在り方について議論してみよう。


日本における子どもの貧困はかなり深刻であるとされている。
7人に1人

『日本財団』HP

衣食住を欠くような絶対的な貧困ではなく、相対的な貧困。
経済的な困窮を背景に、子どもが様々な場面で不利に置かれてしまう。

<物資的・文化的側面>と<社会関係的側面>における貧困

〇宿題をしない

わからない できない 見てもらえない

教えてくれる人がいない

親の帰りがおそい

低所得や経済的な困窮による親の長時間労働!?

〇授業中にねてしまう

寝不足 体力 無気力や意欲の問題

家庭における過ごし方
夜更かし・体力づくりができる場や環境がない・低学力、意欲が低い

食生活や生活リズム

親の生活習慣や家庭教育力!?

(3)
「みんな同じ」であることを原則とする教育が、排除を助長する。

ちがうことが当たり前だということを教師自身が認識し、子どもたちに伝達していけるような教育実践、学校全体での認識を高める。
←日本の学校教育のシステムの見直しという壮大な話になる?

(4)
子どもの貧困という問題を多元的に捉える必要性。

物的な困りによって、恥辱を感じなくてもいい学校現場にする。
子どもの情報を学校全体で共有し、多様な立場の職員がサポートできる体制を整える。
みんなが同等に授業に参加できるカリキュラムの実践や授業づくりが必要。

また、貧困がもたらす”心”の問題へのアプローチの視点をもつ。

☞具体的なアイデアではないが、貧困を背景に、自己肯定感が低下して意欲低下や学力低下につながることもかんがえられる。
多面的なアプローチの可能性を考慮する必要があると考える。


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