7世紀~15世紀のイギリス文学
1 文学以前のイギリス
イングランドとは、古英語で「アングル族(Angles)の土地」を意味し、「アングル・ランド」であった。
イギリス人は、「アングロ・サクソン民族」の国だと考えられているが、最初からアングロ・サクソン民族の国だったわけではない。また、最後まで彼らだけの政治や社会や文明を維持したわけでもない。
しかし、その中でもアングロ・サクソン民族の支配は、イギリスの歴史のページに一番はっきりした足跡を残す。
英語の土台はゲルマン語系のアングロ・サクソン語である。11世紀以降、新しい征服者としてのノルマン人たちが持ってきたノルマン系フランス語が、その上に積み重ねられるが、
それ以前の英語の原形を、古英語(Old English)、それ以後の英語を
中世英語(Middle English)と呼ぶ。
アングロサクソン民族について↓
2 イギリス文学の始まり
イギリス文学は古英語から始まる。
◆『ベオウルフ』(Beowulf)
・318行の長編叙事詩・・・英雄叙事詩(heroic epic)
・弱音節と強音節強勢(stress)の配置によってリズ身を調え、各行に二,三個の頭韻(alliteraion)を多用して音楽性を強調しつつ、歌うように語られた。
3 中世の英語と文学
「古期」を代表する『ベオウルフ』が七、八世紀の作品だとすれば、英語史及び英文学史の「古期」「中世」の区分は、ヨーロッパ史のそれとは一致しない。
英文学史における「中世」は、いわゆるノルマン民族の征服から始まる。
1066年の「ヘイチングスの戦い」がその境目となる。
(フランス語系の言葉を話すノルマン人が支配者、ゲルマン語系の言葉を話すアングロ・サクソン人が被支配者)
ほぼ二世紀の間、二つの階級は二つのまったく異なる言語を話ながら同じ国の中で暮らしていた。
2つの言語が混ざり合って、「中世英語」が形作られた。→中世英詩の誕生
◆チョーサー(Ceoffrey Chaucer,1340-1400)
中世英語の確立と成長を促す
晩年の作品『キャンタべリー物語』(The Canterbury Tales)が際立って重要
リズムも表現力も豊かに成熟。
soote-roote, licour-flourなど、きわめて明瞭な脚韻。見る目にも聴く耳にも心地良い。
弱強五歩挌(iambic pentameter)という英詩の基本的韻律(meter)をすでに備え、脚韻(rhyme)を踏み、英雄対韻句(heroic coupler)の基本形を示す。
→ベオウルフとは何もかも違う。
ゲルマン語系とフランス語系の二つの言語の層が重なり合って中世英語が出来上がっている様子がわかる。
古英語→中英語→近世英語へと成長していく
チョーサーのもう一つの主要作品『トロイルスとクリセイデ』
作者の語り口に近代的な響きが聞き取れる。
◆ラングランド(William Langland,1330-1400)
長詩『農夫ピアズの夢』(The Visson of Piers the Plotuman)・・・14世紀のおわりごろ
◆パール詩人 (本当の名前は不明)
代表作『パール』(Pearl) 中世特有の夢想寓意詩(dream allegory)
「ガウェイン卿と緑の騎士」(Sir Gawain and the Green Knight)
年の変わり目に緑の騎士によって執行される生命の継承の儀式(ritual)は普遍的な意味をもつ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?