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なぜ今 韓国に行くのにビザ(査証)が必要なのか【ビザ免除再開】【羽田=金浦の再開】

●韓国への観光短期訪問ビザ 最初は情報錯綜

6月1日に韓国への個人観光渡航が可能になる「C-3-9短期訪問ビザ」制度が始まりました。東京をはじめ各地の韓国総領事館などでは、多くの人が並び、徹夜をする人も。
この現象はニュースでも大きく扱われましたが、この制度は当初、ふわっと目立たぬように公表され、情報としては日韓メディアの中で完全に埋没していました。日本も対象であることを確認して、最初にお伝えできたことは、私のちょっとした自慢です。むふふ…😚 
日本が対象か、どこもなかなか明確にしない中で、確認作業はかなり難航しました。
放送できるレベルまで何度も確認して、その当日、5月19日夕方のニュース番組で放送しました。
実際にこの情報で、ビザをすぐに申請して、韓国に渡航した方から報告をいただくこともあり、とっても嬉しいです!

●「何で韓国行くのにビザが必要なの?」

Twitterや質問箱では「何でビザ必要なの?」「韓国に行けなかったの?」という素朴な質問が寄せられました。
時空を約2年戻してみましょう。20年末に書いた私のコラム抜粋です。
あの混乱は忘れもしません…。
日本側の水際対策強化に反発し、韓国側も対抗措置としてビザ免除を停止。
あの頃の日韓は 外交というより感情のぶつかり合いでした。

日韓視界不良:コロナ狂騒曲 2020年12月28日公開  コラムから抜粋
2020年は、日本と韓国にとって“停滞の年”だった。政治の冷え込みに加え、新型コロナウイルスによる人的往来の停止。「対立とか、報復とか、もうウンザリだ」。翻弄された日本人駐在員の叫び。凍てついた関係の両国が向かう先は─。

■新型コロナに翻弄される日韓■
(前略)
新型コロナをめぐる日韓の対応で、決定的に亀裂ができた瞬間がある。2020年3月5日、日本政府が発表した水際対策の強化措置(入国制限)だ。日本への入国者抑制のため韓国人の「ビザ免除」を停止、発行済みのビザも全て使えなくするというものだった。
メディアに身を置く日本人の私でさえ目眩を覚えるほどの措置で、韓国側が受けた衝撃は相当なものだったと思われる。
事前に日本側から韓国に十分な説明がなかったことも、火に油を注いだ。翌日、韓国は即座にほぼ同様の“対抗措置”を取った。“国内旅行感覚”で自由に行き来できていた日韓の往来は、ほぼ全面的にストップすることになった。

この措置の中で、韓国に駐在する日本人たちは翻弄されることになった。今では、当たり前になっているが、当時、最も堪えたのは、日本に帰国する日本人にも日本政府が2週間の“隔離”(待機)を求めたことだ。具体的な情報も限られていた。ショックを受け、「自国に捨てられた」とさえ言う人もいた。
“隔離”が始まる前に、日本に帰国した方がいいのではないか・・・。帰国したらもう韓国に戻れないかもしれない・・・。限られた時間の中で、皆が究極の選択を迫られていた。

入国制限の措置が始まる前の最後の週末、日本への帰国を急ぐ日本人家庭を取材させてもらった。韓国赴任を予定よりも早めて切り上げて、日本帰国を決断していた。一時帰国ではなく、片道切符だ。バタバタの状態での引っ越し準備。子供たちにとっても、友達との突然の別れがやってきた。早朝の出発にもかかわらず、何十人もの同級生家族が集まり、突然の別れを惜しんだ。一家が空港に向かうワゴン車を、同級生たちはどこまでもどこまでも追いかけてくる。車の中でその様子を見て、一家の妻は泣き崩れた。

「駐在生活の締めくくりがこんななんて・・・。対立とか、報復とか、もうウンザリだ」
ご主人が絞り出した言葉は、翻弄された韓国駐在日本人の心の叫びだった。同じことは日本に駐在する韓国人家族にも起きていたはずだ。留学をしようとしていた学生たち、海を越えて就職が決まっていた若者、日韓カップル・・・。
「戦後最悪の日韓関係」という言葉は、2019年のソウル赴任以来、幾度となく耳にしてきたし、自分自身も原稿に使ってきた。しかし、その「9文字の言葉」と新型コロナ流行の陰に、数多くの日韓両国の人々の苦悩や苦労があることは忘れたくない現実だ。

日テレNEWS 2020年12月28日
急遽 帰国する日本人駐在員家族が乗る車を ずっと追いかけてくる同級生たち(原田が車内撮影)

このときの、「ビザ免除措置の停止」という状態がずっと続いているのです。「ビザ免除」というのは、文字通り、ビザを取得しなくても、お互いの国の事前協定によって、双方の国民をパスポートだけで往来可能にしていた制度です。日本は、本当に多くの国との間で「ビザ免除」なので、ビザ取得という行為自体をほとんどの方が経験したことがないのではないでしょうか。

もともと日韓の観光含む往来再開には、以下の2つのシナリオがありました。

①ビザ免除措置の再開
②短期ビザによる往来再開

ただ、①は人数の制限ができず、空港検疫などが対応できないとの指摘がありました。韓国政府は今回、②のシナリオを選択したということです。
「ビザ申請」という手間・ハードルを設けることで、渡航人数を制限しながら観光往来を再開していくという方針です。
ただし大使館や領事館の業務が急増し、発給遅延など混乱が起きるだろうと懸念していましたが、実際にそうなってしまいました。
徐々に渡航日によって申請を分けるなどして、混雑は改善されつつありますが、スムーズなビザ発給運用を行って欲しいものです。

●短期訪問ビザで実際の韓国渡航 始まる

この短期訪問ビザは、申請開始と発給の時間に、かなりの地域差がありました。
最初に申請が始まったのは、福岡総領事館。5月19日の制度発表の翌日20日には、申請の受理を始めていました。実際に申請が行われたのは、週明け23日(月曜日)だったと思いますが、その日に申請をした方は、10日くらいでビザを受領していました。
6月1日から申請が始まった東京では、一時は発給に「3~4週間所要」と案内がありましたが、すでに続々とビザを受領された方が出ています。

実際に韓国に渡航された方への取材、ビザ申請をめぐる混乱などについては、過去の放送動画がありますので、参照ください。

今後、多くの人が行きたい場所に行き、会いたい人に会える日が早く訪れることを期待したいと思います。

●日韓のビザ免除措置の再開は?

ビザ免除の再開時期、これは本当によく聞かれる質問です。
ただ、残念ですが「今は正確にはわからない」としかお答えしようがないです。ただ、雰囲気として、私はビザ無し渡航は当初、期待されていたよりも少し先のことになると考えています。

まず、日韓の外相会談が、6月内は見送りになり、7月の参議院選挙後になりそうです。

「ビザ免除措置の再開」、「元徴用工問題をはじめとする歴史懸案」など個別の議題は、前進するのに外交交渉での協議が必要ですが、「その場が先送りされた」ということになります。
6月末のNATO首脳会議(スペイン)での日韓首脳会談についても、正式会談は厳しいとの見方が強いです。局長や次官らの事前交渉で折り合いがつかず、外相もすぐに会えないし、首脳が会っても「合意できる事項がない」という状況です。
歴史問題などに比べれば、ビザ無し渡航の再開のハードルは低いですが、まだ少し時間がかかりそうだなというのが私の感覚です。
また、「韓国人の日本への観光渡航」はまだ団体旅行でしか許容されておらず、相互主義であるはずのビザ政策で「不均衡な状態」が継続しています。
日韓の「ビザ無し渡航再開」の前に、「日本側が韓国人の個別観光渡航を許容する」というプロセスが入ると思います。

したがって、当面の間は、韓国に渡航する場合は、面倒でも「ビザ取得」が確実な方法です。

【追記】
8月4日から、8月中の韓国入国について、期間限定でのノービザが再開されました。詳しくは以下のnoteで。

●羽田=金浦の航空路線 再開について

羽田=金浦の再開は、発着枠調整など細かな技術的な問題のみと聞いていますので、それよりも前に再開されるものと思います。とはいえ、こちらも「6/1に再開」「6/15に再開」など報道が出ていたものの、実際はだいぶ遅れていますね…。
そして、大前提として「予約サイトで購入できる」=「運航が確定している」ではありません!
航空当局の運航認可を前提に予約を開始することはよくあることで、認可が出ていない場合は自動キャンセルされます。
これは、航空会社にとってもつらい判断ですが、運航認可が確定しない以上は仕方がないことなのです。
また、運航を開始するとしても、最初から毎日運航ではなく、例えば「週2,3回」など限定的な運航になる可能性もあります。
確実な韓国渡航は、まだ仁川をメインで考えるのが良さそうです。

【6月22日 追記】
羽田=金浦について、6月29日から運航を再開が発表されました。(22日午前10時 韓国外交部や国土交通部などが発表)
当面は週8便(JAL、ANA、大韓航空、アシアナ航空 各2便)の運航です。

●大韓航空(水曜、土曜)B737 
●アシアナ航空(水曜、金曜)A330 
●日本航空(木曜、日曜)B767・B787 
●全日本空輸(月曜、金曜)B787

まだ、便数が少ないので自由度の高いスケジュールは組みにくいですが、需要を踏まえつつ7月からはさらに増便する予定とのことですので、追加の情報を待ちましょう。