白馬岳、下山の思い出
*タイトル画像は、蓮華温泉のホームページからお借りしました。
亡きSと山登りをしていた。
だいたいは2人で、時々彼のご両親や私の友達と一緒に。
白馬岳に行くことになった時、私の友達も登りたいということになり、3人で登ることにした。
そのことをこの方のnoteで思い出した。
イケメンかどうかは記憶にないが、下りの山道で会った一人の男性を思い出したのだ。
今思うと3人で行って本当に良かった白馬岳登山。
山小屋で一泊した翌日。
下山の時私は足が痛かった。
Sが私のペースだと最終の猿倉へのロープーウェイに間に合わない。
そうなったら3人とも帰れない。
だから、自分一人で猿倉側に下山して、猿倉に停めてある車をピックアップする。
私と友達は、新潟県側の白馬岳蓮華温泉に下るように言われた。
車をピックアップしたSが蓮華温泉に迎えにくるという段取りになった。
足が痛いし心細いし、でもとにかく下山しないといけない。
私と友達はSと別れてひたすら蓮華温泉を目指して下る。
その時私は首から下げるライトを持っていた(正確には用意周到なSが私の分はなんでも用意してくれていたから持っていた)ので薄暗くなりつつある山道をライトの灯りを照らしながら、びっこをひきながら下っていた。
しばらくすると、一人の男性が後ろから下りてきた。
「ライトがあるか」を聞いてくださり、私が一つあると答えたら、友達の分を貸して下さろうとするので、その方の事も心配でお断りした。
その男性はそのまま先に行かれたがしばらく行くと、登山道に張り出した枝に「使ってください」というメモと共にライトがぶら下がっていた。
感動してしまった。
せっかくのご厚意、友達はそのライトを枝から外して、有り難くお借りして下山を続けた。
こちらのルートは結局最後まで私と友達以外にその男性しか会わなかった。
日はとっぷり暮れて、辺りは真っ暗。
蓮華温泉らしきものは全く見えない。
暗くなってから、ルートが合っているのか、変な道にそれていないか不安なまま1時間以上は下っていた。
一応一本道で迷うような場所はほぼない。だからSもその決断を下したと思う。
そもそも明るいうちに下山がモットー。
Sは山登りは特に慎重派だった。
自然や山を軽く見てはいけないと、日帰りのその辺りの山でも装備をきちんとする人だった。
故に無理はしない登山しかしたことがなかったからこんな暗い山道を歩くのは初めてだった。
私のペースがのろいから、Sにも一人登山させてしまい自分が嫌になったことを思い出す。
本当に不安だったが、ようやく明かりが見えた時はホッとした。
が、またそこからが長かった!
友達と「さっき見えたよね?」と何回も確認しないと不安なくらい、蓮華温泉と思いたい明かりが見えてからまた見えなくなりそこからが長すぎた。
ようやく蓮華温泉が見えた時は足が痛いのも忘れ小走りになった。
そして、丁度その時に猿倉から車をまわしてきたSと合流できた。
あの時の安堵感は未だ忘れない。
当時はスマートフォンもないから写真は今すぐ出ない。
白馬岳の思い出は美しい景色はもとより、この蓮華温泉(入らずに帰路についた)に下りたことが思い出となっている。
あの時ライトを貸してくださった方には会えずじまいだったのも心残り。
こう振り返るとSのおかげで、私一人では到底登れなかった高い山々に連れていってもらえたんだなぁと思う。
一人では決して見ることのできない風景をたくさん見せてくれた。
書いていたら会いたくなって
また一緒に山登りをしたくなり、
涙が滲んできたからもうやめる。
Sが逝ってから登山らしい登山はしていない。
山に行くならSと行きたい。
そんな気持ちが強くて大好きだった山が見るだけになり遠くなった。
そのうち低山やハイキングくらいなら再開できるだろうか。