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福田平八郎×琳派@山種美術館〜単純な色面と大胆な構図による独自の芸術
福田平八郎没後50年の特別展
山種美術館で、『福田平八郎×琳派』を見て来た。
大満足、もう一度行きたいくらい✨
12月8日(日)まで。
作品リスト:🔹
没後50年の記念となる特別展で、福田平八郎の画業をたどる展覧会は12年ぶり。12年前は北の大地にいて途中から東海地方に移ったので見に行けなかった。
友達と待ち合わせしていたが見るのは別々にして、たっぷり2時間ほど浸っていた。
図録は買ったがそこから掲載するのは著作権上無理なので、できるだけ検索して出典を記載しておく。
記録なので、大したことは書いていないが、5000文字を超えてしまった。
福田平八郎
明治25年生まれ
大分県出身
京都市立美術工芸学校、京都市立絵画専門学校に学ぶ
大正8年帝展初入選し、官展で目覚ましい活躍をする
昭和時代に入り画風が大きく変化
意表を突く大胆な構図のもと、モティーフを鮮やかな色と簡潔なフォルムで表現する独自のスタイルを確立する
画家は自身の作品を「写実基本にした装飾画」と語っている
琳派は福田平八郎に影響を与えた古典
特別展の構成
第1章 福田平八郎
第2章 琳派の世界
第3章 近代・現代日本画にみる琳派的な造形
という構成。
第1章で福田平八郎の作品を見てから、彼に影響を与えた琳派の作品に移り、近代と現代の日本画の琳派的要素を見ていく流れ。
大分に生まれた平八郎は、京都に出て京都市立美術工芸学校、京都市立絵画専門学校に学び、1919(大正8)年には帝展に初入選を果たしました。大正期はモティーフを入念に観察し、写実的に表した作品を制作していましたが、昭和に入ると、単純な色面と大胆な構図による独自の芸術を確立していきます。
第1章
福田平八郎の作品には、いろんな画風が見られる。
平八郎の初期から晩年までの優品が集結した第1章。
構図や、同じ題材を用いた異なる作品の対比、色使いも見どころ。
最後の作品と言われている絶筆も展示されている。
第2章
平八郎が敬愛した、琳派の祖・俵屋宗達の作品が多数。
本阿弥光悦とのコラボ作品も。
江戸琳派の酒井抱一と鈴木其一の作品など琳派づくしの章。
第3章
小林古径や、山口蓬春、小野竹喬、安田靫彦他、近・現代のいろんな日本画の作品が見られてよい。
当たり前だけれど画家の数だけ作風があり、比べながら自分の好きを探るのも楽しい。
第1章 福田平八郎
筍
展示室に入ってパッと目につく場所に飾ってあったのは、図録の表紙にもなっている『筍』だった。
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昭和22年
これを表紙にしたセンス、好き。
(でもどの作品にしたとしても素敵に仕上がるには違いない。)
実際の作品はもう少し黄色みがない気がする。
竹も筍もたくさん写生もし、見ても廻ったのですが、黒漆のようなあの真黒な黒光りした竹の子が何だか頭にこびりついていたので、竹を描かずにただ二本の筍だけを描いて見ました。実際には赫土と筍だけを見たのですが、何となく寂しいので竹の落葉を添えてみました。その落葉も何となく線描きにして見たのでした。要するに、私は地殻を破って生い出た力強い筍の姿を描きたかったのでした。
この筍の色と節の緑と、背景の淡いベージュにグレーのような茶のような線の竹の子の落葉。
色使いは少なくシンプル。
江戸時代までの日本画を現代住宅にに持ち込もうとすると無理があるがこういう日本画なら生活に静かに馴染みそう。
福田平八郎の作品は、あたたかみがあって優しい。
もう一つ竹の絵があってそれもよかった。個人蔵だからか検索しても出てこないので想像して欲しい・・・。
3本の竹が左からグリーン、黄色、オレンジ色で描かれている。
それぞれの色味もまた絶妙。
竹の節の色もくっきりはっきり・・・。
昭和32年の作品。
昔から竹は緑青で描くものときまってるが、三年間見続けて来てるけど私にはまだどうしても竹が緑青に見えない。
一つの藪の中にいろんな太さやいろんな色の竹がある。
そう福田平八郎は言っている。
確かに自然の色は無限大。
緑にもいろんな色があって単調ではない。
桐双雀
同じ系統の色合いで描かれた桐の花と雀。
丸々した雀は意外と目つきが鋭くも見える。
写真だと分かりにくいが、桐の花の色の微妙な色の変化が面白くて見飽きない。
いろんな色に塗り分けられている。
この雀たちは番いなのか、目線の先は何があるのかな。
紅白餅三鶴
Yahooニュースから画像をお借りした。
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丸みを帯びた餅と直線的な形の折り鶴との対比が見どころ
この絵も好き。色合いといいお餅の丸といい・・・なんかいい。
頭の中で、鶴の色の場所を入れ替えてみたり、黄色の鶴が緑色とか紫色とか他の色ならどうなんだう、など考えてみたけれども、この色合いがベストなんだろうなと思えて、こんな色使いができる感性が好き。
もう一つ「紅白餅」という作品があり、淡い水色の地にほとんどが白い餅、二つほど紅い餅が描かれた作品があり、そちらも良かった。
1階のカフェにこの作品イメージの和菓子「ことほぎ」があった。
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この淡いイメージで頼んだのに
実物は違った!
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味は普通だった💦
お腹が空いてランチの前に食べてしまった
酒井抱一の菊のモチーフにすればよかったかなぁ。餡が胡麻入りじゃない方が良かったから頼まなかったのだが、ちょっと後悔。
今思うと正解は「里の秋」だったかも。残念。
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鴛鴦
この鴛鴦(おしどり)の色使いも好き。
帰宅してからこんな色の鴛鴦がいるのかと調べてしまった。
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絵葉書にしてほしいのになかった。
よく見ると鴛鴦は番いで描かれることが多いのに奇数の5羽。
雌が足りない・・・。
彩秋遊鷽
絶筆と言われている作品。
赤や黄色、緑と青の木々の合間に2羽の鷽(うそ)がいる。
鷽という鳥、検索したら、スズメ科らしい。
小さな可愛らしい鳥だった。
なぜ、鷽!?名前が面白い。
最後の作品が明るい色彩で良かった。
全く雰囲気が違う絶筆として、東山魁夷の夕星(絶筆)を思い出した。
前回山種美術館で見たのが東山魁夷だったこともあり、つい思い出してしまう。
違う人間だから当たり前だけど全く違う。
福田平八郎の絵はほんわか優しく、東山魁夷の絵はちょっぴり緊張感を持って見ている私がいる。
牡丹
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山種美術館のサイトより
福田平八郎32歳の作品
代表作の大きな『牡丹』も素晴らしかったが、私は小さい方の『牡丹』も好き。
これも絵葉書がなく残念。
こちらの美術手帖のリンク先で、
大きい方の『牡丹』他いくつかの作品が見られる。
大きな『牡丹』は他の作品とまた画風が異なり同じ人でこんなに違う絵が描けるのかという驚きもあった。
福田平八郎の絵をここまで一度にたくさん見たことがなかったから、やはりこういう特別展はいい。
これに行ければよかったなあ・・・。都内でもやらないかな・・・・。
昨日画像を色々検索して見つけたのだ。
中之島美術館は、以前見たい展覧会があったけど予定が合わず行ったことがなく、一度訪れたい場所。
桃と白桃
桃の作品もいくつかあったのだが、
60歳の時の桃と70歳の時の白桃の色使いが対照的だった。(画像が探せず)
なぜこんなに違うのか本人に聞いてみたい。
12番:60歳の桃は、
背景はベージュで朱色のお盆に桃が9個のっている。
18番:70歳の桃は、真黒な背景に緑がかった桃が7個、お盆はない。
夏になると桃を描いている、という福田平八郎。
この2点以外にも多数残されている。
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26番が絶筆と言われている
どの作品も素晴らしくキリがないから第2章へ。
第2章 琳派の世界へ
このところ見ている展覧会が繋がる感があり楽しい。
俵屋宗達と本阿弥光悦のコラボ作品は東博に本阿弥光悦を見に行った記憶が蘇るし、酒井抱一は今年も出光美術館や皇居三の丸尚蔵館でも見ている。
酒井抱一の作品をかなりの時間を割いて見た。
やっぱり好きだから仕方ない。
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上記リンクでいくつか作品が見られる。
先日の出光美術館で見た酒井抱一の作品を思い浮かべ、じっくり鑑賞できた。
同じ題材でもそれぞれに良い。
酒井抱一「菊小禽図」
私は酒井抱一の描く紅白の菊が好き。
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酒井抱一「菊小禽図」(一部抜粋)
酒井抱一「月梅図」
この絵の淡い淡い白梅と紅梅も柔らかい紅色で描かれていて、白梅の後ろの月が美しい。
月梅は抱一が好んだ主題の一つ。月本体ではなくその外側に金泥を施してほのかな月光を表現している点にご注目!寒い頃から花を咲かせる梅の花言葉は「不屈の精神」、「高潔」。(山崎)
山種美術館のXより
酒井抱一「秋草鶉図」
ふっくらとした鶉と繊細な描写の秋の草花。
月の色にこだわりのあった酒井抱一。この作品では黒くしている。
鈴木其一の作風より、落ち着いて静かに感じる。
どちらか選べと言われたら、酒井抱一の方が好き。
(どちらも素晴らしいけど)
すすきの曲線の美しさ、鶉の羽の模様の細かさ、画面下方の落ちた紅葉や露草・・・見ていると時間がどんどん過ぎていく。
この作品は絵葉書があったので、この作品がイメージの友達にお便りした。
購入した図録の裏表紙はこの絵となっている。
図録はこちらのオンラインショップでも購入可能。
鈴木其一「牡丹図」
花びらの色のグラデーションや花の中心の黄色い部分の細かさに見入ってしまった。
色彩の明るさで牡丹の華やかさが伝わってくる。
花だけでなく枝の描写も細かいし、葉っぱのグリーンもいろんな緑で塗られていて葉の輪郭の線も美しかった。
鈴木其一「四季花鳥図」
華やかで、酒井抱一の「秋草鶉図」より目立つ。
こちらも絵葉書があって季節的に左ので友達にお便りした。
これはまた牡丹図と雰囲気が異なる。植物の描き方も隣にあった酒井抱一と比べてみると面白い。
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山種美術館のサイトより
俵屋宗達
琳派の起点となった宗達と光悦。
先に塗った水墨や絵の具が乾かないうちに、異なる濃度や色の水墨、絵の具を加える技法(たらしこみ)の作品を見ることができる。
琳派については、以下もご参考にリンクしておく。
俵屋宗達の風神雷神図とは違った作品が楽しめた。
四季草花下絵和歌短冊帖(絵:俵屋宗達 書:本阿弥光悦)
江戸時代17世紀、琳派の祖である俵屋宗達と本阿弥光悦の合作で18枚の短冊。
実物は暗くて見えにくかったので画集であらためて見ている。
過去のツイート(X)でイメージだけでも・・・。
俵屋宗達(絵)、本阿弥光悦(書)《四季草花下絵和歌短冊帖》(山種美術館)。前期にもご紹介しましたが頁替えで新たな短冊をご覧いただけます。加山又造も影響を受けた「千羽鶴」(写真左)も公開中。お見逃しなく!(山崎) pic.twitter.com/pXWyWV8UzA
— 山種美術館 (@yamatanemuseum) October 30, 2014
第3章 近代・現代日本画にみる琳派的な造形
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日本画を見て来た人なら知っている画家ばかりだと思う。
小林古径は、最近で言えば三井記念美術館で見たなあ、と記憶を紐解く。その時は小さな作品だった。
他にも山口蓬春や菱田春草の作品があり第3章もじっくり鑑賞。
菱田春草は、西にいた時京都の福田美術館で、『大観と春草』という展覧会に行って朦朧体を見て来たなあ。
山口蓬春は、『新宮殿杉戸楓4分の1下絵』が見事だった。
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色が鮮やかなのでパッと目に飛び込んできた。
https://www.hoshun.jp/arth_103.html
これを74歳で描くこともすごい。
やっぱり山口蓬春記念館、行かなくては。
11月頭に行く予定。
そして、小野竹喬の「沖の灯」。
小野竹喬《沖の灯》(山種美術館)。深い青色の海。夕暮れの桃色の光が水面に映り込み、静かに波打っています。晩年の竹喬らしい鮮やかな色彩と単純化したモティーフの構成がモダンな印象。さざ波が聴こえてきそうな一枚ですね!(山崎) pic.twitter.com/qZRCfZCghR
— 山種美術館 (@yamatanemuseum) August 28, 2014
この絵は上記リンクにもある通り、ブルーと桃色と沖にキラッと光る灯が綺麗で。
絵葉書を買って、ピンクが好きな友達に出した。
この絵を見て、小野竹喬の作品もまとめて見たくなった。
岡山県にあるからなかなか行けないでいる。
仕事を辞めたら長期間、東北とか関西に滞在してその地方にある画家の美術館を見て歩くのも夢の一つ。
上記までが第1展示室。
第2展示室 斬新な構図を求めて
この展示室は小さい。
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53番・54番の作品もこの部屋に展示されていたから。
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左上が第2展示室
入って右側に牧進「寒庭聖雪」がある。
比較的大きな作品で、画面下の方に雪をかぶった百両と小さな鳥がいる。
画面の上には大きな雪の結晶が複数書かれている。斬新・・・。
これが冒頭に書いた12年前の特別展だが、このブログに54番の正井和行「庭」が出ている。
銀閣寺のあの庭を描いた作品。淡いグレーの色調だが近くで見るといろんなグレーがあって庭の砂の質感を表現している。
そして、山口蓬春。
実際にこういう見てみたい。
鮮やかな紅葉の上に二羽のキセキレイが描かれた山口蓬春の《錦秋》(山種美術館)。蓬春は鳥類学者・内田清之介の著書『春宵鳥譚』の装丁を戦前に手掛けていたこともあり、鳥類について正確な知識を持っていたそうですよ。(山崎) pic.twitter.com/rRmXGlJugL
— 山種美術館 (@yamatanemuseum) October 23, 2015
おわりに
大満足・・・。
もう1回見に行きたいくらい。
途中疲れて集中力が切れたので、俵屋宗達と本阿弥光悦のところをもう少しじっくり見たい。
さっきまで母と一緒に画集を眺めていた。
すぐに眠くなったのか今傍でこっくりしている・・・。
10時のお茶にしよう・・・。
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