白黒の世界 携帯小説8
第八話 言霊
(全12話)
登場人物
森 龍牙(もり りゅうが):物語の主人公
木原 京(きはら けい):龍牙の親友
鳥海 紅音(とりうみ あかね):龍牙の愛した人
話は遡ること龍牙の葬儀
私はまだうまく笑えずにいた
どうやって笑顔って作るんやっけ?
忘れてしもたわ
涙も枯れた
京「おう!紅音ちゃんやったな久しぶり!元気してるか?って元気なわけないか」
紅音「木原店長、ご無沙汰してます」
京「2人でお店やるつもりだったんだよな?龍牙から聞いてたよ。紅音ちゃんはこれからどうするの?」
「まだ何も考えられません。」
「俺はさっき龍牙の家族からお店を引き継いでくれないかって話があったからさ、引き受けるつもり。もしよかったら龍牙の店で一緒にやらない?」
「少し考えさせてくれませんか?」
森店長の店で私はやりたかったから
森さんがいないなら
私がいる意味はないんやと思う。
私はそう思った。
後日木原店長に断りの電話をした
実家にも事情を説明して
私はいちど京都へ帰ることにした。
また、関東へ戻るときは
私は私の夢を叶えるときだと思う
でも今は特に夢も希望もない。
京都に帰ってからは
しばらく家に引きこもった
何かをする気にもなれず。
最後の言葉を思い出していた
【ひとりにさせてくれませんか?】
今思うと
こんな私を見捨てないでくれた
森さんにいう言葉ではなかった。
今はひとりにしないで欲しいとさえ思う
なんで森さんいなくなっちゃったん
寂しすぎる
枯れたはずの涙がまた溢れてきていた
森さんの日記を見返すと
【俺はお前の味方だからどんな時でも頼って欲しい】
そんな言葉がたくさん書かれていた
【日本、いや世界の人が紅音ちゃんの敵になっても、俺だけはちゃんと向き合ってやる、間違ってたら叱ってやるし、できたら褒めてやる。だからちゃんと真っ直ぐ生きろ】
確かにいつもそんなこと言うとったな
もう守ってくれへんやん。。。
私は強く生きる!と強がってたが
わたしはわたしの道を歩けずに
自分の弱さに
気づいてしまっていた
日記にはこうも書いていた
【俺の夢は紅音ちゃんに髪を切ってもらうこと】
その言葉を改めて見た時に
私は叶えてあげられなかったことを後悔するのではなく
森さんが叶えられなかった夢を
叶えてあげるかのように
スタイリストになってたくさんの人を幸せにしようという夢を抱くようになった。
それからは何かをふっきるかのように
求人募集に電話をかけた
「明日から働けます!早くスタイリストになりたいんです!」
そして泣いている時間があるなら
前に進もう!
そう思うようになった
日記の最後には私との握手のことが書かれていた
【この手が、髪を通じてたくさんの人を幸せにする。少しでも俺の技術がこの手に宿るように長めに握手をした。そんなことあるわけないんだけどさ!笑。願ってます】
その言葉通りの人生にしたいと思えたんです。
そこから私は残りのページに自分がスタイリストになるまでの日記を書き始めました。
○月○日今日はカラーの練習をした。
○月○日今日は初めて
ワンレングスカットをした
モデル見つけるのだけでも一苦労や
思ってるように切れへん
やったる。絶対にやったるから
負けへん
必死に練習をした。
【この子は絶対にいいスタイリストになる。だから俺はもう一度だけRize最後のアシスタントを育てようと思う】
これは龍牙が初めの方に書いた内容だった。
絶対にいいスタイリストになる。
その言葉が今現実になろうとしている。
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日記から浮かび上がる文字は
紅音に夢と希望を与えた
言霊
言葉の持つ力が紅音を支え始めた。
それは龍牙の愛情という名の力だった。
そして、この不思議な力よりも
さらに不思議な力に守られることとなる
紅音は
スタイリストデビューの報告を兼ねて
一周忌を前にお墓参りの為
関東へ向かった。
続く
次回予告
お墓参りにやって来た紅音はスタイリストデビューしたことを龍牙に報告した。紅音はここで不思議な力を目の当たりにする。デビュー後に買ったネックレス。そのペンダントトップにあった水晶がアメジストに変わりはじめた。。。
次回
水晶
https://note.mu/blancetnoir/n/ne787e2a7b206
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