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記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。

「 #首都高バトル 」のフィードバック(※ネタバレあり注意)

アーリー分を一通りクリアした。
既に好評を博している本作であり、私自身も大変に楽しませてもらったが、改善が必要だと思う箇所はそれなりに多い。
フィードバックはSteamのレビューやコミュニティハブ等で受け付けているというが、レビューやコミュニティハブに投げるにはあまりに長ったらしい。非公式ながら公認のDiscordサーバーには開発者も参加している為よりダイレクトにフィードバックを届けられるかもしれないが、ああいった場で全部思いつく限りポンポン投げるのはちょっと気が引ける。

なので読まれるかは別としてここで書くことにした。
開発陣の目に入らなくとも、プレイした人が共感してくれたり、あるいは対となる意見を述べてもらったりしてくれても嬉しい。

ここでは首都高バトル及び元気のレースゲームについて一からわかるような内容にはしていない。また、一部の例外を除いて収録路線・エリア、車種、エアロパーツを増やして欲しいとか、オンライン対戦が欲しいみたいな話はしない。開発側だって収録できるものなら幾らでも収録したいなんてことは分かりきっているし、他にいくらでも要望する人がいるだろう。

それからこのnoteはアーリーアクセス版の内容のネタバレを、フィードバックする上で説明が必要な場合は一切伏せることなく記述するので、その点に留意されたい。

このフィードバックはリリース当初のバージョン(Ver.0.10.1)の内容に基づいている。それから私は首都高バトルZEROからプレイを始め、以降の作品はすべてプレイしているが、Xのみプレイしたことがない(実況プレイ動画では一通り見ている)ので、過去作品との比較においてXは比較に出すことができないのはご了承いただきたい。



①CPUの振る舞い

全体的に賢くなった

首都高バトル名物ともいえるCPUのアホさ加減だが、0、01の頃と比べれば十分賢いといえる。もちろんアザーカーに突っ込んだり銀座の中央分離帯に吸い込まれたりするというシリーズ恒例の光景も良い意味でも悪い意味でも健在だが、過去作に比べれば明らかに減った。特に、01のような壁走り戦法で追撃してくることは全くと言っていいほど見られない。非常に好ましい進化だと言えるし、そもそも他のレースゲームのCPUも大して賢くない。

分岐時の振る舞いが致命的

これは本作を遊んだ誰もが遭遇し、誰もがストレスに思うポイントであろう。明らかに現時点で最も改善が必要な問題だ。

過去作品においてはプレイヤーが先行していた時、予め進行したい方向に車を寄せていればある程度はCPUもそれに従ってくれていた。しかし本作ではCPUは意地でも自分の進行したい方向に進んでいってしまう。正確に言えば、プレイヤーが先行してかつ自身に設定されているルートとは異なる分岐方向に向かった際のルートの再設定されるまでの判断が致命的に遅い。

下記動画は0、01、そして本作(X無いのは申し訳ないところ)において、各ライバルに設定されているルートとは異なる方向に進んだ際のCPUの振る舞いを比較したものだ。

0の場合、分離帯からわずか手前でルート変更の判断がなされ、0特有の急制動可能な挙動も相まってギリギリ追従してきてくれる。ただしこれは序盤のスピードレンジが低いライバルであるため間に合うのであって、中後半の速いライバルになってくると間に合わないケースは多い。
01のCPUは自身に設定されているルートとは別の分岐方向に進む可能性がある車線取りをプレイヤーがしていた場合、分岐地点の比較的手前から減速を始め、余裕を持ってプレイヤーについてきてくれる。
そして本作だが、プレイヤーがライバルを相当突き放していれば別であるが、設定されているルートからプレイヤーが進んだルートに切り替わるのが、プレイヤーのマシンが分離帯より先におおよそボディ半分以上が入ってからであり、事前に減速する素振りも見せないため全く間に合っていない。

過去作品では熟練したプレイヤーであれば、例えば「ROLLING GUYは環状線内回りのチームだから向島線方向には絶対行かない」、「湾岸線下りのライバルは大井Uターンはしない」等の形で、当該チーム・ライバルの本拠地に沿ったルートを選ぶ、いわばライバルへの忖度プレイをすることで、できるだけドロー(負け)にならないように気をつけることができたし、この仕様に気づいたプレイヤーは可能な限りそうするよう気をつけていたはずだ。
しかし本作では過去作品とは異なり、チームメンバーの中にはメインの本拠地とは別の路線に遠征していることになっているライバルが存在し、加えて本作の一部ライバルは湾岸線下りから大井JCTを利用して横羽線上りに向かうように設定されているライバルが存在する。これらの変更自体は新鮮で良い変更だと思うが、その代わり過去作品をやり込んできたプレイヤーも忖度プレイでドローを回避するという方法を本作に応用することは難しい。CPUの進行方向が確定するタイミングをもう少し早めに設定すれば緩和されるのだろうが、それはそれでプレイヤーがフェイントをかけてクラッシュをさせる手段が増えてしまう。

出典: YouTube - Bandai Namco Entertainmentチャンネルより

アーケードで稼働している湾岸ミッドナイトでは、先頭のプレイヤーが進行したい方向に応じた車線に突入することで、選んだ方のルートのみが開放され、もう片方のルートには矢印と壁判定で進行できないようになる。
首都高バトルにもこの要素を持ち込めたらいいと長年私は考えている。特に首都高バトルシリーズはウィンカーが出せる。一部ワンダラーの出現条件に必要なくらいで後は完全に雰囲気要素であったこの機能を分岐ルートを設定するシステムとして活かせないだろうか。ナムコがこの仕組みの権利を持っていたりすれば話は別だが(そこまで調べてない)、そうであったとしてもウィンカーを使うという仕組みであれば抵触を回避できそうな気もする。

本筋とは逸れるが、0では分岐地点に入る際にカーナビよろしく「ポーン」というSEが鳴っていた。あの音が絶妙に気持ち良く気に入っていた。個人的にはあのSEも復活してほしい。

②グラフィック

十分通用する綺麗なグラフィック

2025年のゲームとして合格の品質は確保されているように感じる。勿論GT7やForza Horizon 5等と比較してしまえばひと世代前のクオリティではあるが、普通にプレイしていて不満を感じる場面は少なく、「良いグラフィックだ」と感じられる。特にライティング周りの表現に限っては不満は全くと言って良いほど無い。UE5凄い。

本作のマシンのモデルは恐らくだが首都高バトルXやXTREMEで使われていたモデルをベースにしているはずだ。三菱エクリプスはあからさまに首都高バトルXから流用しましたという見た目をしている(多少の改善は入っているのかもしれないが)。しかし、ライティング表現が優れている為、モデルの品質がそれほど高くなくても、一度走行してしまえばかなり誤魔化しが効いている。ただ流石にエクリプスのあの感じはどうにかしてほしい気もするが。

車両モデルのチープさは否めない

その一方で一度気になるとそこにしか目がいかなくなるような点もいくつかある。
まず気になったのは、ボディパネルのギャップがただ単に黒く塗りつぶされているように見えるという点だ。実際にはパネルごとや凹凸としてモデリングされているのかもしれないが、少なくとも見た目上はそのように見えてしまう。

フェンダー、ドア、スカートの境目が実線で描かれているように見える

舞台が夜間だし、ガレージも暗がりなのでものすごく目立つというわけではないが、一度気がついてしまうと気になってしょうがない。特にボディを明るい色に塗装した時には顕著に目立つ。
目立つ上に段々見ているうちに「漫画風塗装」でも施しているように見えてきてしまう。他のグラフィック品質が十分にリアリティを感じる、説得力ある画になっているだけに浮いてしまっていて、ここは本当に惜しい。

漫画風塗装(Forza Horizon5の公開デザインから拝借)

もう一点気になったのは、タイヤホイールの内側がモデリングされておらず、ただ単に蓋がしてあるという点だ。分かりやすい例がアルトワークスのリアだ。アルトワークスは本作においてアザーカーとしても登場するが、同時にプレイアブルカーでもある。アザーカーのみとしての登場であれば別に構わないが、プレイアブルでもあるのならやはり見えるところは手を入れてほしいところだ。

分かりやすいように車高を前最低、後最高に変更してある。
リアサスの部品もこの角度なら見えそうだが、なにもない。

ただ、今のところこれが気になったのはアルトワークス一台のみで、他の車はそもそも見ようとしても見えない部分である。他の車両に同様の修正をする必要性は薄いだろう。

いずれの例も、首都高の景観の出来がよく進化も目覚ましいだけに、車両の造形が追いついておらず、没入感を損なう結果をもたらしてしまっている。車両のモデリングの修正というのは大変にコストが高い作業であろうことから実現可能性は高くないだろうが、いずれ改善を期待したい点ではある。

HDRへの対応を

私は普段レースゲームは基本HDRでプレイしている。標準対応している作品であれば本当に綺麗だし、そうでなくともPCゲームであればWindowsのAuto HDRがそれなりにいい仕事をしてくれる。個人的感想だが、解像度よりも、レイトレーシングよりも、HDRがグラフィックが重要視されるゲームにおいては最も効果が高いと感じる。
本作は現時点ではHDRに非対応だ。HDRは明暗をよりキレ良く表現してくれるので、夜が舞台となる首都高バトルシリーズとは相性抜群のはずだ。WindowsのAuto HDRはかなり幅広い作品をサポートしているので、本作も正式リリースされれば対応リストに間違いなく入るだろう。しかし、制作陣は将来的なコンソール機への対応も視野に入れているはずだ。正確な表現と移植のことも考え、ゲーム側でHDRに標準対応してもらいたいところだ。アーリーのリリース最初からDLSS、DLSS FGのような最新技術にしっかり対応してきて大変驚いたが、HDRもその仲間に入れてほしい。

③演出面

元気節は今も健在だが

シリーズ恒例の各章ごとに挟まるポエムとムービーは20年経っても変わらないままで良かった。ライバルリストの紹介文も平常運転だ。

一方で過去作からオミットとなった要素もいくつかある。まず、これはアーリーアクセスの段階であるため正式リリース後は変更される可能性が十分あるが、その各章ごとのポエムムービーの背景が幾らか簡素なものになったことだ。01では凝ったプリレンダムービーが用意され、更にその興奮を引き立ててくれていた。ユウウツな天使のフラッグとか、砕け散るダーツ等が好例だ。こうしたムービーの用意にも期待したい。

加えてライバルリストについてだが、過去作では各ライバルの紹介文は、倒す前はどのようなドライバーなのか、どのようなマシンなのかがわかる紹介、討伐後だとその人物のストーリーのバックグラウンドが見れる(順序が逆の場合も有)という二段構えになっていたが、今作では討伐後に一緒くたに開放されるようになった。
倒す前はすべて「???」とされる仕様には好感が持てる。新規ユーザーにはどちらでも変わらないだろうが、シリーズファンだとどんなライバルが続投するのか、どんな新顔がいるのか、実際に遭遇するまで分からないのは純粋に楽しみが増える工夫だと感じた。
これもアーリーアクセス時点での話にはなるが、現状本作は金策が厳しめだ。サウジドリフトの難易度も結構高いし、そもそもサウジドリフトが金策のメタになるのは興ざめだ。ドリフトで金が手に入る仕様も個人的にはいらない。ドリフト自体本作の挙動でやろうとはならないし、首都高でドリフトしないですよ。

そこで、現状の経済バランスが正式リリース後も引き継がれるという前提での話にはなるが、ライバルリストの紹介文開放を段階制にロールバックし、1度勝利した後に再討伐すると別の紹介文が開放されるような仕様を考えた。これなら通常討伐済みのライバルは用済みとなるが、収集要素として機能するし、金策の苦痛が幾らか緩和される。もちろんこの場合、再討伐するか否かでエンディングに到達するかどうかの判定には作用しないというのも合わせて必要になるだろう。
ただ、こちらは現状の経済バランスが緩和されればそれで十分な話ではある。さすがに金払いの良い同じライバルを執拗に何度もボコったり、サウジドリフトをし続けるのには限界がある。

オーラの話

本項ではアーリー段階のラスボスが誰なのかというネタバレを含むので留意されたい。回避されたい方は今すぐタブを閉じるか、目次に戻って次項まで進んで欲しい。とは言ってもSNSやYouTubeで既に流通しているので目にしている人も多いだろうが、念の為注意書しておく。



















プレイ時間にして6時間以上程は経ち、何度もボスに遭遇しているのに、オーラ持ちのライバルが一向に現れない。完全に廃止になったのか。強敵が放つオーラが初採用された01当時もネット上では賛否両論だったと記憶しているし、20年前初めて見た時の第一印象は複雑な心境だった。しかし、今私はこの要素を圧倒的に支持している。元気のレースゲームを元気のレースゲームたらしめる非常に重要なアイデンティティだと断言できる。

どのボスに会ってもオーラは一向に現れない。廃止になったのかと残念がっていたが最終盤、一人だけオーラ持ちのボスが現れた。これだよこれ。これがなくっちゃ。

くさそう。
なんだこの色。この色が許されるのはプロミューのブレーキキャリパーだけでしょ。そこは無難にボディカラーを少し淡くしたような色でいいのに。ファルケンカラーのライバルなら似合うかもしれない。
それにオーラの密度が高すぎて毒に侵されているようにも見える。Apexのコースティックかと思った。このライバルのオーラについては再考の余地ありだと私は思う。

そもそも、ストーリーの内容からして「この人はオーラ持ってていいでしょ」というボスがまだ何人かいる。特に、ラスボス以上にぶっちぎりで速い、歴代作品の中でも間違いなく最強クラスであろうアイツにはなんの特殊演出もない。アイツにこそほとばしるオーラが必要だ。
個人的な解釈の範疇ではあるが、あのライバルについてはアーリーアクセスクリア後に実装されるライバルのスニークピーク(チラ見せ)であり、正式リリース後には登場時期がもう少し後ろになっているか、時期が変わらなければ難易度調整が施されると予想している。さすがに速すぎて全く手に負えない。

本作では世代交代もあってか新しいボスが多く登場する。しかし、収録車種の事情からか、軽やファミリーカー、非力なスポーツカーがベースになっているマシンに搭乗しているボスが多く、実際の速さはあるものの正直言って過去作と比較すれば「格落ち感」が否めない。だからこそ、オーラや特殊演出を纏って強者感を補完してほしいところだ。

私は特に01のユウウツな天使の特殊演出が好きだ。謎の青い粒子が漂い集中線が走るあのエフェクトは非常に印象に残っている。欲を言えばオーラ以外にも、ああいった演出が適用されるライバルもいて欲しい。

アーリーアクセスの内容はストーリーの中盤までということだが、それにしては適用されるライバルが少ない印象も受ける。これはオーラが少なくて寂しいということもそうだが、それ以上にストーリーの節目が分かりづらくなっている。もちろん、節目になるボスに勝利するとPAで会話があるので討伐後には分かるのだが、バトルが始まる前の段階から「あ、このボスヤバいかも」と思わせることがプレイヤーの緊張感に繋がり、「このボスを倒せば次のステージだ」というのが分かりやすくなる。これによりなかなか倒せない、負け続きだとなっても、次のステージという報酬が目の前にぶら下がってるので、引き続き挑むモチベーションにも繋がる。倒せず途中でプレイをやめてしまう人を減らす効果もあるかもしれない。

緊張感を与えるという意味では、オーラでなくてもシンプルな演出で良い。0において節目となるボス、これまでに討伐したボスより格上に位置づけられるボスには、通常のボスの演出に加えて落雷音(?)2発と暗転、別の角度からのカットが挟まる。

動画でいうと裏切りのジャックナイフ・トゥルースライドの格上にユウウツな天使が位置づけられているということが、彼らのプロフィールを知らずとも初見で把握でき、ストーリーの節目を感じることができる。非常にシンプルかつ小さな差だが、オーラと同じような効果をプレイヤーに与えている。

やはり天候変化(景観変化)は欲しいところ

これはシリーズ共通の課題ではあるが、コンクリートジャングルに覆われた無機質な道路はどこかで見飽きる瞬間が来る。
01では阪神・名古屋と別ステージがあり、章ごとに移動することでマンネリ化を緩和できたが、本作は現状東京のみである(追加についても余程本作が売れてDLC開発できる費用を工面できない限りは難しそうだ)。

現在オープンワールドベースのレースゲームは多い。Forza Horzion、Need For Speed、The Crew、Test Drive…。今後はJapanese Drift MasterとNight-Runnersのリリースも控えている。純粋なレースゲームでは無いが、GTAもカウントしてもいいだろう。
さすがにGTAやForza等と比較するのは元気が持っている開発規模を想像すれば酷な話だが、こうしたタイトルは都市部に脇道、それに郊外の未舗装路といったバラエティがある。同じく首都高を舞台とするNight-Runnersもクラウドファンディングのストレッチゴールの結果ではあるが埠頭と峠のマップが製品版では追加されることになっている。そうしたものは首都高バトルにおいては、舞台が一方通行の高速道路上のみである以上難しい。つまり、バラエティを出すためには同じ舞台でも違う景色を見せる必要が出てくる。

この場合有用なのは天候変化だろう。曇天、雨天、雷雨、場合によっては雪も想定される。いずれも01ではあった天候だ。天候変化があるだけで、プレイヤーに同じ舞台でも十分な新鮮味をもたらしてくれる。
しかし、濡れた路面の表現や前車が捲き上げるウォータースクリーンにウェットコンディション用の挙動の用意等、開発コストが高いのは容易に想像がつく。本作で実装が見送られている主要因であろう。
雨は滑りやすくて面倒だからいらないというプレイヤーも一定数いるとは思うが、首都高速だけが舞台かつそれなりの長さのシナリオがある以上、プレイヤーがその一つの舞台に何度でも足を運びたくなるような要素は多いほうがいいはずだ。

「期待するなよ?」ということだろうか

天候ではなく季節というアプローチも想定できる。経過日数に応じて四季が切り替われば、春なら街路樹の一部が桜になったり、夏なら新しく実装されたスカイツリーの方面では隅田川花火大会の様子が遠目に見れたり、秋にはこれまた街路樹の一部がイチョウや紅葉になったり、冬なら空気が澄んで空のテクスチャの星の数が多くなったり、といった具合だ。現実の首都高からの景観とギャップが生まれ、「首都高完全再現」からは遠ざかるかもしれないが、それよりも変化があった方が私は嬉しい。
天候変化とは異なり攻略には影響しない要素だが、ここまで挙げてきたような景観の変化がプレイヤーに与える作用は大きいものだと私は考える。もちろん、天候も季節もあったらなんと素晴らしいことだろう。

先に述べたように、ゲーム開発のことなんて一切分からない人間にとっても、こうした要素の追加は非常に高いハードルであることは容易に想像がつくし、20年ずっと元気のレースゲームから離れられない亡霊世代の私達にとって首都高はニュルブルクリンクだ。今更飽きなんて一切感じないし、むしろ故郷だから変わらない景色が落ち着いたりもする。
しかし、先に挙げたような他タイトル、そしてそうした近年のレースゲームに慣れ親しんで育ってきた若い世代、あるいは首都高バトルには触れる機会がなく本作が入口となる人らにとっては、こうした要素があると無いとではゲーム全体への印象が大きく変わるはずだ。

私の知っている限り、レースゲームにおける景観演出のブレイクスルーはリッジレーサーだ。リアルタイム世代ではないが、中継ヘリが飛んだり、グランプリ最終戦では花火が上がったり、こういうプレイヤーの没入感と興奮を煽る演出が私は大好物だ。私の世代だとグランツーリスモ4でル・マン24時間レースの最終ラップで上空を飛行機がカラースモークを吐きながら遠くへ飛んでいく様子が原体験である。

些細な要素だが、こうした演出がプレイヤーの心をくすぐる

首都高バトルシリーズのこうした要素でパッと思いつくのが、0の旅客機の離着陸だ。湾岸線空港中央付近に差し掛かると、離着陸する飛行機が上空を飛んでいく。
また、0・01どちらか、あるいは両方にあったかまでは記憶していないが、隣接するゆりかもめが運行している様子もあった。
ここまで挙げてきた天候・景観変化の要素の実現は難しくても、過去作にあったちょっとした演出は、この世界への没入感を高めてくれる要素なので、是非とも復活を願いたい。

ナイトロの演出

ナイトロを使用した際にマフラーから火のような何かが出てくる演出だが、個人的には好きじゃない。ワイルドスピードシリーズの影響でナイトロを使う時はああいう演出にするというのはゲームでは常態化している。ナイトロを使えばああいう火が本当に出ると思っている人は一定数居そうだ。
首都高バトルシリーズにおいてもナイトロは01の隠し要素として採用されて以来、この演出と併せて登場している。見た目が楽しくゲーム体験として華やかになるので、そういう要素が好きな人は全然居ていいし、ゲームに存在するのは全く構わないが、任意でオフにできるようにしてほしい。

NFS Unboundでは演出の数々をオフにできると同時に、自分好みにカスタマイズできる(ナイトロの火は完全にオフにはできなかったと思う)。ついでにナイトロの火が好きな人用に、NFSよろしく青とかピンクとか自分好みの色に変更できるようにして、そこにオフの設定も入れてくれたら完璧だ。

ただ、演出をオフにできたとしてもプレイヤーがナイトロを使用中なのか視覚的にわかりにくくなるだろう。現状は噴射音が聞こえナイトロのゲージの色が変わり、三人称視点ではカメラが大きく引きになり視野角がわずかに変わるが、一人称視点では視野角とゲージでしか視覚的にはわからなくなる。
PSP版首都高バトルではナイトロを噴射すると、SPゲージやメーター類等のUIにブラーがかかって二重三重に見えていた。あれを追加するとより親切になるだろう。

④挙動

接触時の吸着現象について

元気のレースゲームの挙動はどれをとっても癖ありまくりだ。ベースがカジュアル路線というのは共通している。それは本作でも同様で、いわゆるシミュ路線とは異なる。もちろんこのカジュアル路線は、シリーズファンにとっても新規プレイヤーにとっても好ましいということで既に合意が取れているものだろう。シミュ路線で首都高を走るのはAssetto Corsaにまかせておけばいい。

正直PVを見たときはあまりにカクカクするハンドリングを見て「こりゃ大丈夫か…?」と思ったが、実際にPAD環境でプレイしてみるとそこまで違和感にはならなかった。それでもデフォルト設定だとカクカク感は存在したため、抑えるために感度を最低まで落としてはいるが、調整できたしそれで不便はしていないので無問題だ。

近い挙動だと思ったのが、staka117氏が数年前に公開した「C1 RUNNERS」(※一時期フリーダウンロードとして公開されていたが、現在は公開終了)だ。首都高バトル2025と比較してもう少しタイヤグリップの限界がシビアで、カジュアルでありながら過度な無茶はできない挙動だったと記憶している。本作もそんなニュアンスに近いが、これより更にポップに味付けされている。

本作は壁や他車に接触すると吸着してなかなか離れずみるみるうちに減速していくという、シリーズでこれまでにない挙動をみせる。過去作と比較すると、0は接触するとワンバウンドして跳ね返され、01・レーシングバトルは接触面との角度が浅ければそのままマシンは受け流され(つまり壁走りしやすい)、垂直に近ければそのまま突き刺さる。
この挙動については既に賛否両論の様相だが、私はこの吸着からの減速という挙動は良いものに感じた。あらゆる手段、もとい相手を事故らせるような勝ち方をしようとするとこの挙動は裏目に出ることが多いが、私はできるだけクリーンに走りたいし、ダーティーが正攻法になるような挙動は本作のコンセプトにはあまり合致しないように思える。接触にはリスクがつきものだ。モータースポーツでも壁や他のマシンに吸い込まれるようにクラッシュしてしまうような場面は多々見られる。一見変な挙動のようにも思えるが、私はこれにリアリティを感じた。どちらかといえば過去作品が接触することへのリスクが低すぎたように感じる。

ただ、この挙動には難点もあり、YouTubeチャンネル「AnTytle Gaming World」が既に指摘しているが、意図的に接触・吸着・減速を狙うことで簡単にSPゲージを減らすことができてしまう。かといって、接触で減少するSPゲージ量を下方修正しても、今度は単独事故へのリスクが低くなる。
意図的にダーティーな走りをして攻略するというプレイスタイルは、ライバルCPUの壁走りしない挙動や、その日限りで性能を向上させることができる救済処置「伝説のチューナー」の存在を鑑みると、開発側の意図として推奨していないことが推察される。

この意図的なSPゲージを減らす攻略法を防ぐ抜本的な解決策にはならないかもしれないが、関連がありそうなのが、レーシングバトル・街道シリーズに存在した「ヤレ」の概念だ。
これらの作品ではマシンにダメージを与える走り方をしていると、マシンに疲労=ヤレが蓄積していき、性能が低下する。レーシングバトルでは可視化されるパラメーターとして表示され、修復を行うことで元の状態に戻せるが、街道シリーズではプレイヤーにはヤレのパラメーターは表示されず、隠されているが性能は徐々に低下していく(「峠の伝説」の公式攻略本を読むまで知らなかった)。
首都高バトル2025では車の売却時、「状態」によって評価額が変動する(「状態: とても良い」・「状態: 良い」を確認済み)。それなりに派手なクラッシュを何回か繰り返した車を売却しようとしたが、少なくともアーリーアクセス分クリア時点までで、その車が性能低下したような感覚は体感では感じられなかった。もしかしたら街道シリーズ同様不可視のパラメーターで「ヤレ」の概念は既に存在していて、それが評価額に影響しているのかもしれないが、クラッシュをさほど経験していないマシンでも「状態: 良い」となっていたので、どうやらこの「状態」は車の総走行距離に応じて変動している様子だ。

これらを踏まえ、例えば単独事故や壁・アザーカーにヒットする分にはヤレの蓄積は1倍だが、バトル中のライバルと接触すると2倍になるなどし、ヤレのリセットをするためのオーバーホールが必要な時期が通常より近づく、あるいはオーバーホールの仕組みは無いながらも性能が下がり売却時に減額に繋がる、といった仕組みがあれば、もしかしたら先のような攻略法を多少は防ぐことができるかもしれない。
もちろん、「んなの気にしねえ」で突っ込むプレイヤーは後を絶たないだろうし、そもそも開発側も「それも正規の攻略法」としているのかもしれないのでこの意見は賛同を得にくいかもしれないが、少なくとも私は首都高バトルはデストラクションダービーではないと思っている。0の???を筆頭にとんでも難易度を用意してきつつも、こちらが正攻法でやっている人にちゃんとクリアの道は与えられているのが元気のレースゲームだ。その与えられているものが、CPUの勝手なクラッシュ待ちだということはさておき。ぶつけて事故らせて勝つというのは本シリーズの本質では無い。

⑤システム

PERKツリーについて

新導入のPERKシステムはハマっている側面もあれば、ハマっていない側面もある。

ハマっているのはマシンの開放だ。過去作では特定のライバルに勝つと、その乗っているライバルと同一の車種が開放されるか、ストーリーの区切りで開放されるかという形だった。それが本作ではポイントを消費し、1クラス上程度のマシンであれば任意のタイミングで開放できるようになっている。いきなり大排気量高出力のモンスターマシンに序盤から乗れないように、ある区切りまではロックされていて開放できないというのもいい塩梅だ。
また、所持金上限もポイント消費で徐々に緩和していくので、性能・価格共に2~3クラス上の車に飛び級することはできない。貯金の繰り返しが必要になるので憧れのあの車が手に入る道は過去作より遠くなった側面もあるが、一方で過去作は何十台も車が用意されているのにもかかわらず、クリアまでに数車種しか乗らないなんてことはザラだった。「あるんだから乗ってよ」というスタンスなのだろう。一台の車を長く愛すのももちろんいいが、せっかくなら作品の骨の髄までしゃぶろうとするプレイヤーを増やしたいよね、というのは私は好ましいと思う。現状経済バランスが悪いのでなかなかそうはいかないのが難点ではあるが。

一方ハマっていないと私は感じた点はパーツの開放だ。過去作は特定のボスやストーリーの区切りで自動的にアンロックされていたが、本作ではマシンと同様の形で開放していく。
現状の性能に限界を感じたら開放できる親切設計ではあるが、一方でチューンしすぎて簡単に勝てすぎてしまうヌルゲーと化してしまう側面があった。ただ、これは私が過去作品に慣れ親しんでいて、別のレースゲームも遊ぶ慣れたプレイヤーであるため感じた点であろう。あっちが立てばこっちが立たず、新規プレイヤーを取り込むためにもこの仕様はいいのかもしれないので、「改善が必要」とまで言い切ることはできないし、このままでも十分良いだろう。

⑥サウンド面

必要十分

実車と比較したときの再現性という話にしてしまえば別だが、シミュ路線のゲームではないためそこは気にならない。グランツーリスモ5のHSVの実装当初みたく甲高いサウンドが特徴の車からラリーカーの音がするといった、さすがにそれはないだろうというズレもないし、特にロータリーエンジンのサウンドはいかにもそれっぽい気持ちの良い音がしてくる。「音いいなこのゲーム!」とはならないが、別に不満にはならない、ちょうどいい落とし所にまとまっている印象だ。

ディスクブレーキの作動音の追加や、よりリアルに近いブローオフバルブ音の採用もあり、演出面も強化されている。前者は音デカすぎ、後者は小さすぎな感じが今はあるが、そのうち改善されるだろう。

強いて上げれば、3人称視点にした際のサウンドが一人称視点と比較して低すぎるという点だ。ゲーム制作のことは一切わからないが、おそらくドップラー効果を再現するための仕組みと判定が変になっている。現状の環境では、3人称視点で今6000回転くらいかな?と思っていたのにタコは9000回転でレブをとっくに超えている。さすがに違和感が拭えないので修正に期待したい。

最高のファンサービスであるBGM

今更言う事でも無いが、本作の大部分は0、01のBGMをリアレンジしたものが大半だ。あの頃の記憶が蘇ってくる最高のファンサービスであることは言うまでもない。もっとも、首都高バトルを待ち続けた私達はもれなく数年おきにプレイし直したりしてるのでそんな昔ではないだろうが。
ただ、シリーズに思い入れがない新規ユーザーにはどのような印象を与えるのかは未知数だ。ひょっとしたら古くさく感じられるのかもしれない。
今どきのレースゲーっぽいBGMを考えると、しぐれういが踊っているアレのようなアングラでハーコーなヒップホップとかだろう。Need For Speedは特にその傾向が強いが、最新作Unboundの収録曲はアングラに進みすぎて不評だ。同じ首都高を舞台にしたNight-Runnersは収録曲の評判が凄まじくよく、ちょっとしたミームとしてバズっていた。いずれの例にしてもセンスはリアレンジ版首都高バトルのBGMよりかは現代的といえるだろう。より広い層、とりわけ海外受けも視野にいれるならより現代的なセンスの曲もあったら尚いいだろうが、オープニングがAudiostockにある有償素材を使用しているあたり既に予算はカツカツだろうし多くは望めない(フリー素材を否定する訳ではない)。それに私に限って言えば先の通り、シリーズファンなんだから文句なしだ。特に一部はアレンジなしで原曲のまま使われていたのがニクい。

蛇足だが、私は01の「Nu Beat」が好きだ。アレのリアレンジ版も聴きたいところだが、なにせあれは名古屋専用BGMだ。結局、そうした面でも名古屋・阪神DLCを結局願ってしまうのが隠せない本音である。

⑦ユーザービリティ

UIの設計

こちらについては特にUI周りで既にあちこちで意見が上がっている。PADの場合、方向キーではなく左スティックをマウスポインタとして扱わせる設計になっていたり、タブの切替に方向キーを使えばいい場面でもLB/RB(L1/R1)を使わせるところだったり、文字が小さすぎるといった話だ。これは完全にその通りで、改善が望まれるポイントだろう。

なにもしない日ボタン

歴代シリーズ恒例の経過日数・曜日等で出現するワンダラーは今作でも健在だが、これまでこうしたワンダラーに会いに行くためには、どこかに出現してはガレージに戻り、また出走しの繰り返しだった。さすがにこの手段を2025年現在も使わせるのは不親切だ。ガレージのメニューでただ日数だけを経過させる「なにもしない日」を選択できる手段は欲しい。

セッティング周り

もう1つはセッティングに関する詳細が現段階では記述されておらず、知識がなければどういじったいいのかサッパリ分からないという点だが、これはわざわざ指摘せずとも正式版では実装されていることだろう。

伝説のチューナー

新要素の伝説のチューナーはバフ要素であるが、同時に救済措置の側面もある。だが私は殆ど触らずにクリアしてしまった。出現場所が各PAにランダムで配置されるというのが現在の仕様だが、シリーズに慣れているプレイヤーは未討伐のライバルの付近のランプからスポーンするという遊び方をするのが普通で、お世話になるタイミングが中々ない。強化された感も今一つだ。速くはなるが、この差が勝敗を分けるという感じでは無い。
この要素は楽に攻略したいプレイヤーより、攻略に苦戦する未熟なプレイヤーへの救済措置の側面を強化する方向に調整するのが好ましいと感じる。KAIDO峠の伝説では負け続けるとCPUが弱くなる調整があった。あれと同じく、同じライバルに負け続けてから伝説のチューナーにお世話になると大幅な強化に繋がるような仕組みはどうだろうか。
出現するPAについても、負け続けたその次の日のガレージ画面で伝説のチューナーがやってきて「よう、最近調子が出ないらしいな。どうだ?お前さんに良いモンがあるから今度〇〇PAまで来い。無理にとは言わないが、後悔はさせねえぜ」みたいな形で誘導するとより分かりやすく親切だろう。

⑧その他細かい色々

ここまでフィードバックというより、熱量丸出しのいかにもな「ぼくのかんがえたさいきょう」感が否めないが、ここからは更に拍車がかかるのでその点ご了承願いたい。

リバリーエディター

さすがに温泉マークは…

用意されているデカールの多くは、フリー素材をそのまま入れましたみたいなものが多く中々それ単体では使いづらい。かといってForzaの痛車職人のようにペタペタ枚数張ってとんでもないものを生み出すことも制約上難しそうだ。
単体で使用に耐えうるアートファクトリーのバイナル群については、半分以上過去作からの流用でやや現代的なセンスとズレるものもあるが、さすがに品質は高いし使うとしたらこれらをメインに使うことになるだろう。
「PCゲーなんだしUE5なんだから差し替えればいいじゃん!」という声も聞こえてそうで、確かにそれはその通りな面もあるし、既に実践されている方も見受けられる。だが、繰り返しになるが開発陣は当然コンソールへの将来的な移植が視野に入っているはずだ。コンソール版でこの手口は原則として通用しない。
Forzaの地道にペタペタ貼る形もいいのかもしれないが、私はグランツーリスモSportから導入されたsvgファイルのアップロードによって利用できる形が理想だと思う。あれならベクターデータであるが故に拡大・縮小しても荒れない。制作にパソコンが必要なのと、ベクターデータを扱うソフトの知識が必要なのが難点だが、ファイルも軽量で、サーバーの容量負荷も軽い。システムの構築にかかるコストは重いのだろうけど。

レインボーブリッジからの夜景

さすがに淋しい夜景

現バージョンのレインボーブリッジから内陸方向に見た夜景はあまりにもさみしい。バトル中とかになれば目はつきにくいが、それでも密度の低さは気になってしまう。
現実のあの場所はとても密度高くビル群が光り輝いている。本作の舞台の定義が「封鎖された未来の東京」となっているが、なにも封鎖されているのは首都高速だけであって首都全体が封鎖されているわけではないだろう。電気通ってるし。2025年現在の東京そっくりにしろというわけではないし、ビルのオブジェクトをいっぱい置いてくれとも言わない。明かりがもう少し欲しいだけだ。いや、ビル群を配置してくれたらその方がいいのだけれど。
ただ、XTREMEのように派手派手するようなことは間違ってもしないでほしい。同作の失敗要因はスマホゲーだからだとか課金だからだとか色んな意見があるが、私が触って数時間で投げた理由は首都高のレイアウトをしてるだけのサイバーパンクシティであったこと、あれこそが最大の敗因だと信じて疑わない。

コースイン時のどんくささ

コースインした際、過去作ではフェードインしてオートパイロットを経由し、その後フリーランに入るが、本作においてはフェードインなしに車がわずかにバウンドしながら画面に入ってくる。
この挙動だが、「その他」に書いてはいるものの、私が本作で最も「安っぽい」と感じた点だ。本当に細かいところではあるが、いかにも「今そこでオブジェクトがスポーンしました」感満載で、普通そうしたところは隠したい部分であろうが、現段階では隠されていない。言ってしまうと、ものすごく作りの甘いインディーゲームっぽさを感じる。コミカルなゲームならともかく、現実をベースにした画にこうしたものは似合わず、隠すべきだろう。

SPゲージのプレイヤーアイコン

過去作で可能だった初期のステッカー、もしくは討伐したライバルのステッカー、01の場合は自分でドットをポチポチして作ったステッカーを装備し、SPゲージに表示できるようにする機能が現時点ではなく、ただ「PLAYER」と表示されるだけになっている。リバリーエディターの中に「STICKER」という項目があるがブラックアウトして選択できないようになっているので、アーリーの途中か正式リリース時に解禁されるのだろう(あるいは、レーシングバトルのようにパーツメーカーのステッカーを配置できるのかも)。

これについて、01と同じく自分でデザインできる機能とか、ローカルファイルに画像を配置して表示できるような機能はやはり欲しいところだ。それか、今やどのプラットフォームでゲームをするにも自分のアバターがあるので、Steamのアイコンを表示できるような機能が欲しい。この場合、配信者モードを用意して事故で映らないようにする必要はありそうだ。

マーケティング

もはやこれはゲーム本体のフィードバックですらないが、本作のマーケティングはかなり上手くいったように見受けられる。半年前に制作が発表され、少なくとも2年はかかると思っていたが、既に大枠は出来上がっててそのまま流れるようにアーリーのリリースに至った。SNSで情報を小出しにして話題が途切れないようにし、かつスピード感も併せ持った一連の流れは近年他のゲームではなかなか見られない。ローンチが好調な理由の一つだろう。

加えて、あらゆる配信者にSteamのキーを配布しまくりとりあえず遊んでもらうというやり方も近年ではよく見られるやり方にはなったが、この柔軟性が首都高バトルで見れるとは思わなかった。特にストリーマーとして最大勢力であろうVtuberらがあれだけ遊ぶ現象なんて誰が予想しただろうか。車好きで知られている面々に絞って配布するならまだしも、ほぼ箱単位で配布してしまい、別に車好きとかでないであろう箱に所属する面々も続々とプレイしていく。
コード配布は企業案件とは異なるため、配布してもらったし一回は(社交辞令として)やっとこうと思うのも、別にいいやと思うのも原則として配信者の自由だ。そもそも、多少なりとも調べれば、普通は配信向きではないと判断される要素で構成されているのがこのゲームだ。なにせ同じ作業の繰り返しが中心になるゲームで、かといってマイクラみたいに雑談しながらできるようなものでもない。「キーもらったしやっとくか」とか「なんか話題になってるからやってみるか」とか、「Steam売上1位だしやってみるか」という動機だけではできないタイプのタイトルだろう。本当に誰がこの流れを予想できたか。

これらの成功体験を正式リリース後、おそらくある程度アップデートもあることも踏まえて踏襲し、同様の流れを何度か起こせるようなマーケティングにも期待したいところだ。
例えば、配信者とかYouTuberをライバルとして入れ込むとかはできそうだ。契約と権利の観点から半永久的に登場させるのは難しいかもしれないが、グランツーリスモ7ではアニメ作品とタイアップして期間限定で公式のリバリー用ステッカーが配布された。これと似たような形で、「推しと走って戦えてあわよくばステッカーが貰える」みたいなことができたら面白いかもしれない。そうした間口からの流入も積極的に狙っていってほしい。なにせレースゲームは歴史もあって広く認知されているジャンルながら、そのプレイ人口はタイトルによってまちまちで、全体の母数はいつだって少ないのだ。

⑨要望は多いだろうがほかを優先すべきという点

この項はゲーム本編への改善要望等ではないが、他のユーザーが多く要望しているだろうと予想される点について、私は18年ぶりに作っている、おそらくそこまで規模も大きくないチームに要求するのは高望みだと感じる点だ。つまり、私も望んでいなくはないが、これらにコストをかけたり優先したりするくらいなら別の点で品質向上を図ってほしいと感じる点だ。

オンライン機能

まず、本作は製品版では将来的に簡易的にオンラインに対応することが濃厚だ。各スピードトラップ・セグメントにリーダーボードが用意されており、現時点ではブラックアウトしてcoming soonになっている。この点はオンラインに対応するだろう。どいつが一番オービスでカッ飛ばしたのかを競えるようにはなりそうだ。
もっとも、皆がいうオンライン機能はプレイヤー同士でSPバトルしたいという話だろうが、これはハッキリ言って高望みすぎる。対人接触・アザーカー無しとかならまだしもそれは望まれていないだろうし、かと言ってシングルプレイの形式をそのままマルチ化するのは悪質タックルするプレイヤーが正義になるはずで、クリーンに戦うことなんてできないだろう。PC版ということでMODやチート行為をオンラインに持ち込むプレイヤーの問題にも対処しなくてはならなくなるし、復帰第一作目で望むのは現実的ではない。

これは特に英語圏のYouTuberのレビューを中心に目にした声だが、シングルプレイが重厚なレースゲームが長らく存在していなかった中でこうしたゲームが出る事を非常に歓迎する声が多かった。確かにその通りで、レースゲームはその相性の良さでどのタイトルもマルチプレイに重きを置いているタイトルが多い。Dirt Rally 2.0、EA Sports WRCのようなラリー系のゲームはベースがタイムアタックなので例外だ。グランツーリスモも最新作は多少工夫しているが、どちらかといえばマルチとeスポーツ推しだし、Forza Motorsportも最新作のマルチは面白いがシングルプレイはあり得ないほど退屈だ。首都高バトルもマルチの実現に力を入れるくらいならシングルプレイを充実させ、次の18年…とかなればひっくり返るが、そのくらい記憶に残るようなシングルプレイの体験を充実させるほうがベターだと考える。

ホンダ車

ホンダ党の皆様から反感を買いそうだが、私だってDC2、EG6、NA1が入れられるのならそりゃあ入れて欲しいに決まってる。夢見の生霊はNSX以外に乗ってほしくない。RATTがS600とかN-Oneに乗っているのも見たい。ピンクのS2000に乗ってる0のラブナックルはどんな可愛い子なんだろうなんて思ったりもする。ホンダ車がいらないなんて話では全くない。

この項はとんでもなく長いので先に結論を書くが、もし仮に収録にあたって、メーカー側から金以外の特殊な条件を課せられた場合、首都高バトルのアイデンティティを失うような決断は避けるべきで、それは本作が最終的にX・XTREMEと同じような評価に転落しかねない可能性があるということだ。

現在ホンダとは「交渉中」であるという噂が囁かれている。恐らくFuelfestの試遊台ブースで元気スタッフの人と話したという人の報告が発端となっている話だろう。ソースはredditの書き込みなのでここでは真偽不明とする。

01からホンダが姿を消し(もっとも0以前はホンダモチーフの架空車なのだが)、XでもPSP版でもホンダ車は登場しなかった。これについて長年ネットでは様々な考察が飛び交っている。一般車の登場するゲームはダメという噂が最も広く流通しているものだろう。Forza HorizonやNFSで登場しているからそういう訳では無いとか、日本と海外でホンダ側の権利の管轄が違うから海外ゲームだとOKとか。併せて首都高バトルXTREMEには登場していたので首都高バトルシリーズも方針転換でOKになったのではという説もよく聞く。

本作ではシリーズで初めてアザーカーと「名もなき者」として対戦できるようになり、タクシーだろうがトラックだろうがライバルの一人となった。序盤ナメてタクシーに挑むと思ったより速くてちぎられるという光景は実況者には格好の撮れ高になっていただろうし、ちょっとしたネタ要素にも見えるが、シリーズファンなら一発で「あ、これホンダ対策だ」と察しがつくものだ。

01から首都高バトルシリーズにおける首都高は閉鎖されたサーキット的な扱いという設定になっているのはシリーズファンならよく知っている話だ。この首都高を走っているのはタクシーの運ちゃんもトラックの運ちゃんもみんなレーサーで、決して一般車に迷惑をかけているものではないということだ。その延長で本作では、じゃあそのへんのモブもライバルとして戦えなければおかしいという理屈に至ったのだろうということは、首都高バトルシリーズの歴史を知っていれば誰もが察しがつく。閉鎖された未来の東京という設定も違法な公道レースを行っている訳ではなく、未来を舞台に使われなくなった首都高でみんな楽しく走行会してますということを表していることは想像に容易い。登場ライバルの何人かがレーシングスーツを着ているのもその証左だろう。

一方で、同じ元気の作品でもレーシングバトル・街道バトルでは普通にホンダが登場しているというのも同じくよく知られた話だ。前者はアザーカーこそ走っているがそれも本作と同様に名もなきレーサーで対戦可能、あちこちにスポンサーの看板と観客席が配置されている、まんまサーキットだ。後者も閉鎖された峠をサーキット化したという設定なので、あちこちに看板が立ち、妨げにならないよう他の車は走っていない。そして、首都高バトルXTREMEでもホンダ車は登場したので本作にも登場が期待できるというのが大方の事前の予想だった。

「ホンダとは交渉中」という話の真偽は不明であるが、実は既に話はまとまっていて、正式リリース時の目玉になる可能性も十二分にある。
では、仮にホンダが難色を示していて、交渉が難航しているが故にアーリーアクセスには入れられなかった、とした時の可能性を考える。あくまで仮の話だ。
普通にお金周りの交渉とか、我が社の車を収録するならもう少しここを再現してくれだとかいう交渉の可能性もあり得るだろうが、これまでの歴史を振り返ると問題はそこではないだろう。交渉が難航するとしたら、ホンダ側から条件が課せられると考えるのが自然だ。例えば、看板とか観客席を配置して完全にサーキット化してくれたら良いとか、タクシーとかトラックはいくらなんでもサーキットに走ってないだろう消しなさいだとか。これに対する反論は「他の一般車が走ってるゲームには出てるじゃん」という話にはなるが、恐らく問題の核心はそこではない。

私は01、X、PSPにホンダ車の収録を許可しなかったのは大阪環状族の存在があるからだと考えている。彼らが好んで乗っている車がホンダのシビックで、それは18年前から変わらない。そして今や大阪環状族の存在は世界的に有名になった。YouTubeの動画等を通じての拡散はもちろんだし、世界一売れているゲームのGTA5にはシビックEK9がモデルとなっている車に環状族モチーフのリバリーが存在する。その車の名前はKanjoだ(ちなみにAE86モデルの車にはXのローリング野郎1号モチーフのリバリーがある)。

これまでの話を総合し、仮にホンダが収録への難色を示しその理由を想像すると、

①日本の実在する高速道路が舞台となっていて、
②タクシーやトラックといった一般車然とした車が走行しており、
③スポンサー看板が立っていない、ビルの形が同じ等景観が現実に忠実となっている。

この3つが組み合わさった時にクリティカルなのではと私は考えている。逆に言えば、①はForzaやNFSで、②はレーシングバトルで、③はXTREMEで解消しているが故に許諾を与えたというのが私の考えだ。繰り返すがあくまで仮の話、私の想像である。

仮の話をなぜここまで長々と書くのかという話だが、もしホンダ側と元気が本当に交渉中で、その交渉は難航していて、条件として現状の首都高バトル2025の要素の何かしらの変更を求められる、そしてそれが先のような条件だった場合、それを飲んでまでホンダ車を収録するのは首都高バトルの魅力を損なう可能性があるということである。そうまでしなくてはホンダ車を収録できないという話になった時、私はそれをしてほしくないと考えている。

先に挙げてきた要素全てが首都高バトルには欠かせない要素だ。①は作品そのものが成立しなくなる話なので問題にはならない。だが、②の究極系は01の全アザーカーが黄色のハイエースになるということで、01最大の賛否両論ポイントだ。そして③についてだが、XTREMEのように遠くではサーチライトが焚かれ、壁にはネオンが埋め込まれたサイバーパンクシティ化は絶対にして欲しくないし、そんなことしたらコケる。そしてレーシングバトルのように観客席が設置されたり、スポンサー看板があちこちに設置されても欲しくない。看板については多少はいいが、いかにもサーキットですという見た目になったらそれはレーシングバトルの続編だ。

私の妄想上でのリスクを長々話してしまって申し訳ないし、もしかしたら杞憂にも程があるのかもしれない。が、シリーズファンにとって現時点でホンダ車が未収録かつホンダとは交渉中という噂が流れていると、色々よぎるものがあるのは皆ある程度共通しているのではないだろうか。多少首都高バトルの世界観や持ち味が変わったとしてもホンダ車を収録してほしいという人も多いだろうし、ホンダ党だからホンダが入ってないなら興味ないやというユーザーだっているわけで、ゲーム自体の売上に直結する話だ。だが、今本作がアーリーアクセスの段階でここまで好評を博している、その要素を曲げるような事態になってしまうくらいなら、無理に収録する必要は無い。

内装視点

世界の窓はとっても狭い【企画・ゲーム設計】 - 桜井政博のゲーム作るには

内装視点が存在したGRIDが、次作で実装されないことが判った時に開発側が「内装視点で遊ばないでしょ?」と言って叩かれた、なんてことがかつてあった。恐らく内装視点で遊ぶプレイヤーが多くないのはデータこそないが事実だろう。バンパー視点やボンネット視点は内装視点よりより広い視野で遊べる。三人称視点なら他の車の位置もわかるし、自分のマシンにうっとりしながら遊べる。内装視点というのは実は中途半端な存在なのだ。シミュ路線のレースゲームならともかく、遊ばれないならかけるコストに見合わないし、こうした考えは理解できる。
私自身は内装視点があるゲームは内装視点でやることが多い。グランツーリスモもそうだし、EA Sports WRCもそうだ。Forza Horizon 5は若干リアル寄りのカジュアル挙動なので内装視点にしてもやりづらさはそこまで感じない為内装視点で遊んでいるが、NFSや首都高バトルのようなカジュアルに振り切った挙動のゲームに用意する必要性は薄いと感じる。あれば嬉しいが、無くて問題はない。

とはいえ実は改善点なんてあまりないのかも

ここまで2万文字にわたって色々書いてきたが、ようやく結びに入る。

一応本noteはレビューではなくフィードバックの体裁を取っているので、基本的には改善点を羅列しているが、褒めるところは大腕を振って褒めたはずだ。
もっとも、改善点はあるようでないのかもしれない。ここまで長く書けてしまった理由は、私が20年新作を待った顔面首都高バトル勢だからであり、同時に新しくシリーズに触れる人が本作を楽しみ、あわよくば今後シリーズ全体のファンになってくれるかどうかというのを冷静に観ようと試みた結果だ。リリース前のプロデューサーレターやSteamの販売ページに掲載されている文章からは、18年ものブランクがあるのであくまで客観的な評価が欲しいという意図がほとばしっていた。ここまでそれに沿って書いてきたつもりではある。

現時点で既に本作は一定程度成功を収めている。Steamの同時接続者数も売上も滑り出しは順調だといっていいだろう。何しろまだアーリーアクセスの段階で、PC版しか出ていないのだ。「圧倒的に好評」というSteamのレビューはそんな簡単につかない。熱心な20年来のファンが大挙して押しかけたとしても中々そうはならない。

2015年(10年前!)に元気は上記のようなツイートをしている。「首都高バトル01くらい売れる」ことが今も目標なのであれば、その道程はまだまだ先だろう。2004年のデータで、首都高バトル01の国内売上本数は約20万本というデータがある。ワールドワイド(Tokyo Xtreme Racer 3)も含めれば何本になるのだろうか。いくらなんでもこれらの数字に現時点で結びついているということは考えられないし、さすがに今の時代に野心的すぎる気もする。

昨年8月に本作の制作告知がされた際「元気が元気になった」と皆言っていたが、私はそれを言うのは時期尚早だと思ったし、元気が一体どこまで元気なのかは正直言って疑っていた。なにせ18年の空白があり、その間にまるっきり違う世界となったゲームという文化に、復帰一作目からいきなり適合できるはずがないと疑っていた。会社はパチンコメーカーの子会社になり、自身が根っからの車好きだった当時社長の浜垣氏(街道バトルの覇魔餓鬼の由来だ)も退社している。なにせ18年も間が開けば当時の開発者も既に会社に居ない人だって山程いるはずで、新しく出たところで首都高バトルの味が出せるのか、一見首都高バトルっぽいがなんか違う、二次創作みたいなものが出てくるんじゃないかという懸念は拭えなかった(だってXTREMEがあの感じだったから)。

ところがいざ本作をプレイしてみて、私が間違っていたことを思い知った。課題はあれど、純粋に楽しい作品に仕上がってると言える。最も感じたのは作り手の熱意だし、ほぼ熱意だけで作られていると言ってもいい。こちらも2015年、4Gamerのインタビューで広報の浜地氏がXの失敗を認めつつ、まだ次の首都高バトルを作ることを諦めていなかったのが印象的だった。このインタビューの時点で9年のブランク(XTREMEを除く)、その次のチャンスはここから更に9年後になるということは誰も予想していなかったし、ファンの殆どの人はもはや既に諦めがついていたはずだ。だが元気はそうじゃなかった。IPを他社に売ることもなく、自分たちだけが首都高バトルを作れるんだということを信じ、ただ時期を待ち続けていた。その結果出てきたのは間違いなく首都高バトルそのものだった。自社の過去の作品に誇りとリスペクトを持ち、自分たちの作品のどんなところが愛されているのか、または自分たちが愛しているのかをよく理解している人たちが作ったものだ。
どのくらい前だったかは忘れたが、首都高バトルの新作を私が作ると言って元気に入社した新入社員の話を元気広報のTwitterで見た。たぶん本作はそんな暑苦しい人間ばかりが集って作っているのだろう。

今後本作が01レベルの売上に結びつくかどうかは改善と正式リリースを経て完全版となった時の完成度とアーリーからの追加されたコンテンツによるだろう。将来的なDLC等によるブーストという手法も良い手だ。それでも依然として高い目標だが、そのポテンシャルがまったくないとも言い切れない、それが私の本作のアーリー最初期においての感想だ。

Steamレビュー全体の評価は圧倒的に好評だが、挙動への不満やただ繰り返していく作業ゲーという理由を中心に「おすすめしない」を選んでいるレビューもそれなりにはある。Steamおなじみ返金してもらったわという別にそれは訊いてないですというレビューも見かけた。だがそれでいい。
どんなゲームでもそうだが、首都高バトルは特に人を選ぶゲーム性で、たとえ車が好きでも、レースゲームが好きでも合わない人はとことん合わないというのはファンの誰もが認めるところだろう。だからこそここまでで既に評価され、具体的には分からないが既にそれなりに売れ、配信者界隈でも話題を呼んだ時点で大変驚きだ。過去作品を遊んできたおじさんおばさんたちの同窓会ゲームでは無い。初めて遊ぶ人からの視点とシリーズファン視点のギャップは私が思っていたよりも、恐らく開発陣が思っていたよりも大きくはなさそうだ。その意味で、実は改善点はあまり無いのかもしれない。

長々とご拝読頂きありがとうございました。


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