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市民自らが生み出す未来志向の国際交流〜プロジェクト田(DEN)マーク

”プロジェクト田(DEN)マーク”とは、その名の通り、デンマークと日本の農耕文化の象徴である、米作りをコラボする企画である。
ぼくらが美山町で取り組んでいる、デンマーク北部の町、ヘルシンゲとの交流の象徴的存在として、交流事業3年目に計画したのだが、実はこの企画実現には、とても重要なキーマンがいた。その人物こそ、前駐日デンマーク王国大使 フレディ・スヴェイネ氏その人である。

フレディ前駐日大使(以下大使)との交流のはじまりは、ぼくらのこの国際交流の立役者で、ぼくの大学時代の先輩で尚且つ、ぼくの北欧方面の活動の素晴らしい協力者でもあるデンマーク在住造形作家の高田ケラー有子さんの力によるものが大きい。
彼女は、ぼくらの美山での活動をさらに優れたものにするために、直に大使へプロポーザルしてくれ、見事、自力で大使とのご縁を作ってくれたのだ。

そしてその大使は、日本へ2度目の赴任となった最初の年に、高田さんを伴って初めて美山町に来られて以降、毎年かならず我々の要請に応え、大使の任期いっぱいになる2019年まで、合計4度も私たちの町に訪れてくださり、その度に多くの町民と本当に親しく交流してくださったことには、本当に感謝しかない。

そして交流の三年目、2018年秋、ぼくらは大きな交流事業を計画、美山町と交流を深めていたデンマークの国民学校、北の星国民学校(Nordstjerneskolen)から視察団として五名の教職員を美山に招いた。
一週間の間、教育施設の視察から、地域の文化体育交流など様々な交流が行われ、そのクライマックスとして、デンマークと美山の子どもたち合同の日本の農業体験を軸にした稲刈りイベントを開催し、そこに大使ご夫妻をお招きしたのだ。

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大使は、もともとデンマークで農業が盛んなロラン島のご出身ということもあり、日本の農業に対して非常に高い関心を持たれていた。大使が自ら稲刈り用の鎌を巧みに使い、次々に稲を刈っていくその姿に、多くの日本人が驚きと賞賛の声を上げていった。

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その田んぼでの作業中、大使から突然、
「ここでデンマークのお米をつくりたいね」と、軽く話題が出たのだ。
それは面白いアイデアだ! と、早速ぼくらは翌年の交流企画に、日本とデンマークの交流を象徴する田んぼを作る企画を組み込んだのだ。

それが、”プロジェクト田(DEN)マーク”である。

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この企画は、その名の通り、田んぼの「田」が「でん」と音読みすることと、デンマークの「デン」を引っかけた遊び心あふれるアイデアの具現化である。さらには、デンマークの国旗はまさに田んぼの「田」の文字に似ているというおまけ付き。
これらの偶然をネタに、ぼくらなりの「楽しい交流のシンボル」にしたいという思いから生み出された交流企画なのだが、なんといってもやはり大使の、あの一言がなかったら生まれなかったと思う。

そして翌年、2019年6月15日。
町の中の田植え作業もひと段落ついた、梅雨の最中の週末。周りよりも少し遅れて、歴史的な田植えが行われた。

6月15日、”プロジェクト田(DEN)マーク”のお田植え祭の始まりである。

前日の雨模様を引きずって、朝には曇り空だった美山町に、田植え作業開始とともに雲のすきまから日が差し込み、一面に広がる山の緑と双方の国の国旗の赤と白が見事なコントラストを描き出し、この町で初めての美しい交流の風景をその場にもたらした。
この町に二国間の友好交流のシンボルとしての田んぼができた、まさに歴史的な瞬間だった。

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当日のお田植え祭では、デンマークに興味を持った地元の中学生、小学生たちが中心となって田植えを行う早乙女に扮したのだが、実は、このメンバーのスペシャルゲストに大使夫人も快くご参加いただくことが出来た。当然、大使自らも田植えに挑戦してくださるという光栄にも預かった。

この日、デンマークと美山の交流のシンボルとして生まれた田んぼには、始終、参加者の笑い声が響き、多くの子どもたちをはじめとした市民は、幸せに包まれた素晴らしい時間を過ごすことができたのだった。

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田植え後、市民が主催した大使ご夫妻をお招きしたランチ会では、中学生たちが大使へのメッセージの発表、それに対しての大使からの心温まるスピーチもいただくなど、本当に貴重な国際交流の時間をいただくことが出来た。

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こうして改めて経緯を紐解いて考えると、ぼくらの活動には、ほんとうに多くの人との出会いや関わりがなくては、生み出されなかったものが多いと思う。
フレディ前駐日大使、夫人との出会いもまた、その中で、とても重要なひとつであり、素晴らしい経験であった。

なによりこの地に住む子どもたちにとって、自分たちのこれからの未来に向けて、大きな糧となっていく貴重な経験だったと強く思うのだ。

(余談)下の写真は、大使夫人と美山の子どもたちなのだが、それにしても、一国の大使である方と、ここまでフレンドリーに接することができた子どもたちは、なんという幸運なのかと思う。お二人には、深く感謝したい。
心からのありがとうを!フレディ&リーセ!

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子ども向け自転車教室 ウィーラースクールジャパン代表 悩めるイカした50代のおっさんです。