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ウィーラースクールのもう一つの成果

ぼくらが行っている子どもを対象とした自転車教室「ウィーラースクール」は、単に子どもたちに自転車の技術、ルールやマナーを学ぶ場所だけではなく、彼らがこのあと、交通社会という中で、どう振る舞うべきなのかを、自分自身で考え、その感覚を身につけることを目的としているのだが、このスクールの歴史的な流れをひもといていくと、もう一つ大きな成果があることに気づく。
それは、自転車教室を通じて、スポーツとしての自転車の魅力を多くの子どもたちに知ってもらうメディアとしての効果である。

2005年前後から始まった日本におけるウィーラースクールは、そもそもの発端が競技者の底辺拡大を軸にした、若干競技指向の強い自転車教室であった。
その後、2007年以降、ぼくが中心となってスクールの教育方針などを整理した段階で、少し競技指向から離れ、スポーツとしての楽しみだけではなく、普段の生活の中で有効に使うための提案という要素の濃い、自転車教室へと変遷していくため、競技色のある自転車教室という側面と、ほんとうに一般の子どもたちに向けたものと二つの側面をもった活動になっている。

この中で、ぼくとかつてから親交の深かった、当時、シマノレーシングの選手だった野寺秀徳氏(現同チーム監督)が、ぼくらのスクールに深く関わっていたことから、日本の自転車ロードレースチームが、自転車教室に頻繁に顔を出すという形が少しずつ浸透していく。
当時の選手たちは、自転車競技に取り組むなかで、子どもたちとふれ合うという機会を持つことはそれほど無かったように思う。あっても、チームやメーカー地元の自転車店が主催する、ファン感謝イベントなどで交流をすることがほとんどだったため、選手とファンという構図の関係性がほとんどだった。例えば、自転車教室的なものに参加しても、教えるものと学ぶものという構図は変わる事は無かった。
そんな中、ぼくらのスクールに参加する選手は立場が大きく違っていた。つまり、「自転車を楽しむ」という命題をもったこのスクールでは、そういう立場をいつのまにか越えて、楽しくやさしいお兄ちゃん(お姉ちゃん)と子どもたちという関係性が生み出されていく。

子どもたちにとって、中には、海外で活躍する選手、オリンピック経験者、日本代表やチャンピオンなど、素晴らしい経歴を持ったすごいアスリートが、自分たちと同じ場所で同じ時間を過ごすという希有な体験を、自然体で享受できる環境を、ウィーラースクールは作り出してる。

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実は、競技者やチームの多くは、彼らの活動である自転車競技を使って社会に貢献したいという意識を持っている場合が多い。そんな彼らにとって、こうした子ども自転車教室を開催することは、結果多くの利点を生み出していることになる。
ウィーラースクールの存在は、単に交通教育の枠にとどまらず、子どもたちにあこがれの選手とともに過ごす時間を作り出すとともに、彼らの将来に向けて、たくさんの選択肢を提示する役割も果たしていると思うのだ。

日本の選手の多くは、数多くのウィラースクールを経験し、どうすれば子どもたちが喜んでくれるかを、知識と技術で習得していく。そして、トップアスリートが子どもたちと触れ合うことで社会に向けどういう影響を与えるかの意味も理解していくことになる。

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日本には、多くのトップチームがあるが、多くのチームがウィーラースクールのメソッドを積極的に採用し実施したり、われわれに協力しボランティアで講師として参加している。むしろしていないチームを探すのが困難なくらいだ。
はっきり言って、ウィーラースクールを経験した選手たちは、本当に子どもの扱いが上手い。

これほどまで多くの自転車選手が子どもたちと親しく遊べる空間は、世界的にみても珍しいと言えるのではないだろうか。


子ども向け自転車教室 ウィーラースクールジャパン代表 悩めるイカした50代のおっさんです。