Farewell to my Old Friend
私はいわゆる友達作りがうまい方では無かった
ずっと勉強をしていたような奴だ、そんな事にかまける暇は無かったし、そんな奴にかまう暇な奴もそういなかった
ただあいつはそんな私に話しかけてきた
「牛鬼ちゃんって勉強できるよね?今度一緒に勉強しない?」
クラスのリーダー的存在、勉強も運動も出来て社交的、そんな彼女は何でも出来るが故、少々変わっていたのか私と一緒にいるようになった
私の人生でただ1人、私を”ナギ”と呼んでくれた友だった
「…ちゃん、きーちゃーん?」
「…あ?」
「話聞いてた?」
「何が」
「聞いてないだろうなーとは思ってたよ…帰り、寄り道するから付き合ってよ」
「どこに」
「文房具屋だって、色々ちょうど切れたりなんだりらしくて」
「私も親に少し頼まれてまして」
「というわけなんだけど来る?」
「…ことw「じゃあ行こっか」」
「おい」
「どーせ暇でしょ?」
「…」
…いつも通りだなこいつは
別に…いいんだけど
「えーっとシャー芯とボールペンと」
「今シャー芯って色付きのもあるんだよねぇ」
「糊…スティックのでいいですかね…」
(シャー芯HBに変えるか)
別にいいんだ、暇なのは本当だし
ただこの日だけはやめておけば良かったと、その時は思った
「…ナギ?」
「!?」
「ナギじゃないか!元気にしてたか?最後にあった頃はかなりキツそうだったけど…」
「お前…昭か?」
「そうだよ、何だ覚えててくれたのか嬉しいなぁ」
「…私にそんな事言うのか」
「言うさ、旧友だからな」
「やめてくれ、そんな事言われる筋合いは無い…」
「そう言わないでくれ…確かに最後に会った頃は色々あったが、私はそれでも…」
「言うな、やめてくれ」
「…そうか…これ私の連絡先だ、連絡をくれると嬉しい」
「…」
「私は今でも友と思っているからな」
「…」
「それじゃあ」
「…あの子誰?」
「なんかこう、爽やかーな感じ」
「旧友とか聞こえましたけど」
「…何でも無い」
「何でも無いわけ…まぁいいや」
まさかあいつに会うなんて…
”昭”
私をただ1人ナギと呼んだ友
そして友だった存在
「…」
「その紙なに?」
「…っ」バッ
「えっ」
「いや…」
「ん?」
「…純は、喧嘩別れした奴とかいるのか」
「喧嘩別れ?いないかなぁ?」
「まぁお前そもそも喧嘩しないだろうな」
「まぁ…そうだね」
「ん…」
「…」
「…あいつ…昭って言うんだが」
「うん」
「小…3だったか、それぐらいから話すようになってずっと中学卒業するまで一緒だったんだ
ただ中2の秋頃から私が…色々あってキツかったんだ、ただそんな時でも昭は変わらず話しかけてきて、だがそれも鬱陶しくて…」
「うん…」
「…殴ったんだ、人を殴ったのなんてその時が初めてだった
でもこの間あった時にあいつは旧友だと言った、友と思ってると言った、それがあまりにも、申し訳なくて、罪悪感があって」
「…そう」
「私が友でいる権利なんてこれっぽっちもないんだ、なのにあいつはどうして…」
「友達だからじゃないの?」
「だから…」
「確かにきーちゃん的には友達でいられない事をしたかもしれないけど、昭さん的にはそれでも友達と思っていたい存在なんじゃないの?」
「何で…」
「そこはわからないけど…それは直接聞くしか無いかなぁ」
「…」
聞く方法は ある
ただそれはあまりにも重い一歩だ
過去の罪と正面から向き合う事だ
ただ
昭は、たった1人ナギと呼んでくれた
たった1人向き合って友と呼んでくれた
たった1人、私の友だった
「…」
「それ、連絡先?」
「…あいつのな」
「連絡するの?」
「…」
「…」
「…するか」
「ん」
メッセージを送ったらすぐ返事が来た
積もる話もあるからどこかで直接会おうと来た
それを純に伝えたら透と木菟森も連れて着いてくると言った
ガキじゃねえんだから…
ただ正直、1人だと不安なところもあったから好都合だった
…絶対言わないが
「つくちゃん聞こえる?」
「うーん…流石に距離と周りの騒がしさ的にちょっと…」
「…」
フードコートで昭と会うことになった
人混みの中でもあいつは目立って見えた
凛としてたからかな、正直私には眩しすぎた
「お待たせナギ」
「あぁ」
「何か食うか?」
「いやいい」
「そうか、私は飲み物でも買ってくるよ」
「わかった」
一息入れる、どうにも落ち着かない
「いやぁ混んでるな、あとたこ焼き買ってしまったよ」
「いやなんでだよ…」
「まぁ美味しいからいいじゃないか」
「お前相変わらずだな」
「そうかな」
「そうだな」
「ふふ」
「…なぁ」
「ん?」
「…私の事どう思ってるんだ」
「ナギの事?愛すべき旧友とでも言うべきか…まぁそんな感じだ」
「何故だ」
「え?」
「私はお前を殴ってそのまま別れたんだ、それなのに」
「友達だったからだ」
「いやだから…」
「友達だからナギがあの頃追い詰められて精神的に疲弊してたのを知っていた、どこまで真に理解できていたかはわからないがそれでも普段なら人に攻撃なんてしないナギが人を殴るのには相応の理由があると思ったからだ」
「…」
「お前は真面目過ぎるところがあるからな…」
「うるさい…」
「その調子だとあれだろ、”そもそも何で私が友達になったか”っていうのもずっと気になってたんだろ?」
「…お前は何でそう」
「私はずっと虚無感を感じてたんだ
確かに昔から色々出来るおかげか周りに人が絶えなかった、ただこう何というか…この人達は私のどこを見てるんだろうって」
「…」
「さっきナギが思ったように私は多分一般とは少しずれてるんだ、少しかはわからないが…
ただ悲しいかな、私は一般に合わせて溶け込むのもうまかった
だからずれてるのも隠せた、そしたら私を見失いかけた、例えるなら”ただの天才”になったと言うべきか」
「お前もクソ真面目じゃないか、というか自分で言うかよ」
「だから例えだって…で、そんな中ナギは私にあんまり興味を示してなくて、そんな”変わった奴”に絡めば私の本性も少しは示せるのかなって」
「…ああいうクラスのリーダー的な存在は自分とは無縁と思ってたよ」
「別にリーダーになるつもりは無かったけどな
正直利用したと言われればそれまでだ、誤魔化しようもない
ただナギには好きに振る舞ってもいいかなって思えたんだ、どうせ興味持たないだろうなって
だから、楽だった
居心地が良かったんだ
少しずつふて寝してた私が起き出したんだ
今も昔も友達と呼べそうな存在はいたが、でも友達と呼びたいのはナギ、お前だけだったよ」
「お前そんな事考えてたのか…」
「まぁ当時は…すまない」
「今更言わないでくれ」
「あぁ、まぁそういう感じだ
私は何かを成し遂げてすごいと称賛されるより、変な事をして何してんだって笑ってくれる人が欲しかったんだ」
「…変な奴だな」
「そうだな、変だな」
「…たこ焼き、一個くれ」
「ん、ほらあーん」
「…」
「冗談、ほら楊枝」
「ん」
「…今度な、引っ越すんだ」
「どこに」
「遠く、国内ではあるけど、それでも気軽には会えないぐらい」
「…そうか」
「だから…こうして話せて…本当に良かった
ナギの事だからあの時の事の罪悪感で私の友達である権利なんか無いと思ってたんだろうけど、私に言わせれば馬鹿な事を考えているなとしか思わない」
(考え読まれてるな…)
「ナギは私のたった1人の親友だ」
「…今生の別れみたいな事言ってんじゃねえよ」
「それは…いやそうだな、今は便利な物もあるしな」
「…」
「たまにメッセージ送るよ、どうせ頻繁に送ると嫌がるだろ?」
「わかってるじゃねえか」
「親友だから」
「…ふふ」
「ふふ」
「…それじゃあそろそろ帰ろうかと思うんだけど」
「あぁ」
「…あの子達知り合いか?」
「あっ」
…ナンカコッチミテルケド イッタホウガイイカナ?
「どうもー透っていいます」
「えーっと純です、きー…牛鬼ちゃんの高校のクラスメイトです」
「木菟森です、どうぞお見知りおきを」
「どうもね、昭って呼んでおくれ」
「忘れてた…」
「なんだナギ、意外と隅に置けないな」
「うるせえ、というかいつから…」
「いや、たこ焼き買って戻ってくる時に妙にこっち見てる子達いるなーって」
(こいつら…)
「ナギってあだ名いいなぁ、アタシも呼んでいい?」
「あ?いやそれh「申し訳ないけど、
ナギは私のものって事にしてくれないかな?」
「ホワッ、アッハイ、ダイジョウブデス(やっべぇイケメンだ…)」
(イケメンだ…)
「ところでそっちの…木菟森ちゃん?」
「はい?」
「…」
「…?」
「何かこう…シンパシーというか…近いものを感じる…」
「?、光栄です?」
「昭さんってきーちゃんとはどれぐらいの付き合いなんですか?」
「同い年だしもっと楽な感じでいいよ、もう何年だっけ?6年とかそんなもん?」
「そんぐらいだな」
「だそうで」
「へぇー」
「ん、そろそろ本当に帰らないと」
「そうか」
「あぁ、それじゃあ三人もナギをよろしくね」
「「「はーい」」」
「ナギ」
「あ?」
「…さよならだけが人生かはわからないが、さよならをやり直す事は出来るみたいだな」
「…そうだな」
「…また会おうな」
「あぁ」
「かっこいい人だったねアッキー」
「アッキー?あぁ昭ちゃん」
「透さんってあだ名つけるの好きなんですか?」
「あだ名割と好き、愛称とかなんかいいじゃん」
「そういえばつくちゃんきーちゃんも透ちゃんが言ってたから私も釣られた感じ」
「そうでしたっけか」
「つーくちゃん」
「はぁーい」
「へへっ」
「ふふっ」
「…」
その後、引越し先の写真が送られてきた
空が広い所だそうだ
ついでに透がアッキーと呼んでいた事を伝えると、私もそう呼べと言われた
…言うかよ、アッキーって柄じゃないくせに
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