あなたたちが生まれたその日の日 4/17
生まれた時からずっと一緒だった
食べる時も寝る時も遊ぶ時も
だけど変わるものもあった
学力 目元 性格
それでも変わらない事もあった
じゃんけんをすればあいこの回数でギネスブックに載れるかもしれない事
お互い抱きつかれると照れるくせに自分から抱きつくぐらい好きな事
そして
嘘か本当かわかる事
「「…」」
「えぇ…どうしたんですかそんな渋い顔して…」
「だってお姉ちゃんが!」「だって透ちゃんが!」
「同時に言わないでくださいよう同じ声なんですから…」
「そっ…」「そっ…」
「…んなことない!」「…んなことない!」
「えぇ…ちょっと牛鬼さん」
「どうせ食いもんの事で喧嘩でもしたんだろ」
「っ」「っ」
「あぁそうなんですね…」
「だって透ちゃんが勝手にアイス食べるからでしょ!」
「だから食ってないって言ってんでしょ!」
「他に誰が食べんのよ!」
「だから知らねえよ!」
「あぁどうしよう…」
「おらっ」
「むぐっ!?」「もごっ!?」
「この雪見だいふくは奢りだ、取っときな」
「太っ腹だな藤」
「後で買い直すから椿半分出して〜」
「しゃあねえなぁ」
「と、言うわけでとりまそれで仲直りしてちょ」
「…ふん!」「…ふん!」
「あれま、こりゃ深刻だ」
「どうしますかねぇ…」
「しかしあの双子がねぇ」
「…」
喧嘩は…しないわけではない
小さいのは時たまするし、一回だけ殴り合いだってした
でも今回のはどこか噛み合わない感じがする
考えてる事はわかるけど、どうしたいかがわからない
どっちが悪いわけじゃないから、どっちからも謝れない
そこにいるのに、厚い水のような膜が間に挟まっていた
「あのー…そろそろ何があったか話してみたりしません?」
「「…」」
「駄目ですか…」
「ほっとけ、時間でしか解決出来ない事もある」
「そうは言っても二人はどうしても近くにはいますし…」
「…はぁ、兄弟喧嘩ってのは面倒だな」
「それに一卵性の双子ですしね、必要以上にわかってしまう事もあるんでしょう」
「必要以上って…言ってる事以上にわかる事なんて無いだろ」
「わかるんじゃないんですか?そういう話よくあるじゃないですか」
「どうだか」
「どうしちゃったのよあんなに毎日仲良かったのに」
「「…」」ポリポリ
「お菓子は一緒に食べるのに」
「そういえばなんかアイスがどーたらって言ってなかったか?」
「…」「言ってない」
「うーん、間に立ってやるから話してみないか」
「…食ってないのにお姉ちゃんのアイス勝手に食ったって疑われてる」
「状況的に透ちゃんしかいないでしょ」
「はぁ?」
「ピエ」
「はい一回ストップ、まず純は自分で食べたのを忘れてたり他の可能性は無いのか?」
「無い」
「じゃあ透は本当に食べてないんだな?」
「存在すら知らなかったのに食えないでしょ」
「うーんどうしたもんかね、互いに何か買ってそれで仲直りじゃダメ?」
「なんで何も悪くないのに謝んなきゃいけないんだよ」「やだ」
「えぇ…」
スッ
「…」「…」
「同じのに手出さないでよ」
「そっちが手出してきたんでしょ」
「はぁ?」
「喧嘩売ってんの?」
「…買ってもいいんだぞ今ここで」
「やってやるよ…」グッ
「ちょっ喧嘩増やさないで!心労でこっちが倒れそう!」
「…チッ」「…」
嘘だ
そっちの嘘の癖はよく知っている、本当は喧嘩なんてしたくないくせに
そしてここまでの思考も向こうはわかっているはずなのに、どうしてそんな事言うの
本当は早くこんな空気終わらせたいはずでしょ?
「「…」」
「うーん…この感じ、上手い切り出し方を探ってる感じじゃないですか?」
「どこが」
「お互いにチラチラ見てるじゃないですか、でもお互いの考えが読めてしまうから下手に動けないって所ですねこれは」
「はぁ」
「じゃあアタシらが一緒に作戦立ててあげればいーんじゃね」
「え?」
「それぞれ透チーム純チームでアタシらがついて、二人を一回離して作戦会議するんよ。そんで作戦立てたら一本勝負って感じ?」
「何だそれ」
「面白そうですね!」
「私もそれがありよりじゃねえかなって思う、たまには距離置いたほうがいい時もあるからな」
「はぁ」
「うっしーもやるんだからね?」
「何で」
「何ではないっしょ手伝ってよ」
「…はぁ」
「じゃあどっちつく?」
「グッパーでいいんじゃね」
「じゃあグー透、パー純で、せーの」
「グッパーグッパーグッパージャス」「グッとっパーで別れましょ」
「は?」「は?」
「いやジャスだろ」「ジャスって何だよ別れろよ」
「ここで喧嘩しないで下さいよもー」
「じゃあただのせーのでいくぞ、せーのっ」
グー:椿、牛鬼
パー:藤、木菟森
「綺麗に割れたな」
「んじゃあやるかー、おーい純やーい」
「早いな…じゃまぁそっちよろしく」
「はーい、牛鬼さんもちゃんとするんですよ」
「…はぁ」
「…何よ」
「まぁまぁ、最近ねーちゃんと全然話してるとこ見ないじゃん」
「別に」
「そろそろ仲直りしたいんじゃないか?」
「…」
「一人で話しづらいんだったら私らも一緒にいてやるからさ」
「…正直、疑われた時機嫌が悪くてついキツく当たっちゃった事は悪いと思ってる。けどアタシ悪くないし…」
「そうだなぁ…でもとりあえずキツく当たった事だけでも謝ってみないか?そこから修復の糸口が見つかるかもしれんし」
「んんんんんんんん…」
「透もなかなか強情だなぁ…」
「だって…悪くないし…」
「なぁ」
「何」
「お前らって向こうの考えてる事わかんのか?」
「…は?」
「よく聞く双子だから離れててもわかるーとか言うのどうにも信じられないんだが」
「ちょっ牛鬼」
「はぁ?バカにしてんの?」
「だったら言ってみろよ、私を信じさせてみろよ」
「っ…」
(やべー…作戦どころじゃねえよこれ…)
「…向こうも本当はこんな空気終わらせたいって思ってるし、食べてないって信じてる…と思う」
「思うじゃあなぁ」
「…」
「…たまには答え合わせしてみろよ、どうせそんな双子パワーなんてねぇんだから」
「…やってやろうじゃんか」
「あ、じゃあ段取りとかこっちで決めるから!そこで答え合わせといこうか」
「…ん」
「(牛鬼…お前なぁ…)」
「(こいつはおだてたり煽ればそう動くんだよ)」
「(うーん荒業、でもよくわかってんな)」
「(…何が言いたいんだ)」
「(仲良いもんな)」
「(…)」
「…そういえば何か忘れてる気がする」
「何かって?」
「何だっけ…」
「…」
「無くなったアイスってどんなんだったん?」
「…ちょっと高いやつ」
「あー高いやつ!それは激おこだわ」
「食の恨みというやつですね」
「でも本気で向こうを疑ってるわけじゃないっしょ?」
「…わかってる、嘘はついてないって事ぐらい。それにちょっと機嫌悪そうだったし…だからこっちもちょっとムキになっちゃったのは悪いと思ってるけど…」
「けど?」
「…わかんない、どうしてこうなっちゃったのか」
「双子でもわかんないことってあるのねぇ」
「いや多分向こうもこの感じどうにかしたいとは思ってると思う」
「やっぱり何でもわかってんなぁおい」
「もうすぐ誕生日なのに…」
「あぁん!?そういう大事な事は早く言いなさい!」
「ならちょうどいいんじゃないですか?」
「え?」
「仲直りと誕生日を兼ねて何か送りましょうよ、透さんもきっかけが欲しいんだろうと思いますし」
「えーちょ待てよ、アタシらも何か誕プレあげたいんですけどぉ?」
「…そうする」
「あれかぁ、二人に送るんだもんなぁ」
「…メインはそっちじゃないですからね?」
「どうしよっかな…」
「おなじみの”あれ”にしたらどうです?」
「あれ…あぁ、あれ」
「あれ?」
「何日ですか?」
「4月17日」
「…これですね、これ…一応売ってるみたいですけど植えるスペースあります?」
「植える?」
「庭になんとか…」
「庭に…?」
「…え!?何!?」
「というわけで、こちらは15日に引き合わせるという形にしたいのですがどうでしょう?」
「いいぞー、透にも言っとく」
「それでさー」
「どした藤」
「そのー、仲直りアイテム的な?そんなサムシングを用意するのにですね?」
「あー言うな、どうせ金が無いんだろ?」
「椿まじ理解者じゃん」
「しゃーねーなー」
「愛してる♡」
「牛鬼もまぁ頼むよ」
「…いくらだ」
「1000円ちょっと…」
「…はぁ」
「今度何か奢るから」
「…」
「はいじゃあ、そういうわけで」
「「ほーい」」「…」
「(無理しなくていいぞ?あれだったら私が出しとくけど…)」
「(いいよ別に)」
「(…悪いな、付き合わせちまって)」
「(さっさと元に戻らせたいからな)」
「(優しいな)」
「…」
4人が何やらセッティングしてくれたようで、話す場を用意してくれた
4人のためにも、いい加減素直になってこの空気を変えよう
大丈夫
この拳は何だって打ち破れる
この身はいつだって、進む道を作れる
「「…」」
「お姉ちゃん」「透ちゃん」
「「え、あ、そっちからどうぞ」」
「「いやいいよそっちからで…」」
「「…」」
「かー焦れったか双子ね!」
「殴り込むか?」
「駄目です」
「…」
「…お姉ちゃん」
「え、何」
「その…あの…本当はそんな疑ってないでしょ?」
「…本当にごめん、あの時は頭に血が登ってて…それに透ちゃんも調子というか、機嫌悪かったでしょ?そんな時にあんな事言っちゃって…」
「いや…アタシも…言い方が悪かった…ごめん」
「…ねぇ、ずっと考えてた事当ててみようか」
「ん?じゃあアタシも」
「「せーの」」
「「仲直りのきっかけが欲しかった」」
「「…」」
「さすがアタシ達」「さすが私達」
「「…」」
「「…あはは!」」
「ほんと、お姉ちゃんには嘘つけないね」
「そっちこそ」
「どっちも悪くないのに何でこんな変な空気だったんだろうね」
「どっちも悪く無いからじゃないかな」
「悪くないからかー」
「あっそういえばこれ」
「何これ」
「改めてごめんね、それと早いけど誕生日おめでと」
「…?」
「透ちゃん?」
「…あ゛っ!?」
「何だ、二人誕生日なのか?」
「明後日なんだって、それにしてもあれ何?」
「ユスラウメの鉢ですよ」
「…誕生花か」
「そうそう」
「あー、それで植えるとか」
「何だよ言ってくれればこっちも用意させたのに」
「言ったら作戦なんないじゃん」
「えぇ…」
「じゃあそろそろ行くかー」
「ごめん…そういえばすっかり忘れてた…」
「いいよ別に、それに…」
「ウェーイ!仲直りしたかこのー!」
「おあっ!?」
「もう心配したんですからね?」
「ごめんね皆」
「というわけでアタシらからはこれ」
「…これ何?」
「好きな水族館にデート行ってきな、キリッ」
「そういうことだ、というか透忘れてたのか?」
「まぁ…色々あったし…」
「じゃあデートの時はちゃんとエスコートしてあげないとですね」
「うぇっ」
「そのデートって言うのやめてよ恥ずかしいし…」
「えー?別に女の子同士でもデート言うよねぇ?」
「そうだよなぁ」
「「…」」
「やだー!?二人揃って顔赤くしてまじかわなんですけどぉ!?」
「「…」」
ゲシッ ゲシッ
「イデエ!?」
「武道家に喧嘩売ったら駄目だってわかったな」
「うえーん椿ー」
「牛鬼さんも一安心ですね」
「別に、もう帰るぞ」
「素直じゃないですねぇ」
「それにしてもアイスどうなったんだろうね」
「んー…」
「あ、お帰り…あのさぁ…」
「どしたのお母さん」
「その言ってるアイスってもしかしてちょっと高いやつ…?」
「…まさか」
「…大変美味しゅうございました」
「「…」」
スッ
「え、なに、いや悪かったって」
「「ダブルラリアットオオオオオオオオ!!!!!!」」
「ごあっ!?」
「はぁ…」
「こんなオチとは」
「あんたら…実の母親に…ぐはっ」
悪は滅んだ
後日、庭にユスラウメを植えてみた。
割と育てやすく、そこまで大きくもならないようなので頑張って花を咲かせてみたいな
実も食べれるようなのでそれも楽しみだ
「実ってどう食べればいいのかな」
「今から?んー…生もいけるみたい、あとジャムとかだって」
「ジャム…いいなぁ」
「花よりジャム…」
「じゃ、じゃあ先行くから!」
「あい…」
バタン
「あれ?今日二人でどっか行くんじゃないの?」
「ん…まぁ…」
そのまた後日、水族館に先に行って待ってると透ちゃんが言ってきた
別にデートだからってわざわざそんなところまで拘らなくても…
んんん…
デートと言うと
「待ったー?」
「待ってないよ」
っていうやり取りが定番だと思ってやることにしたけど…
別にデートだからってやる必要無かった気がする…
いやというかそもそもデートというか普通にお出かけだし…
頭がグルグルする…
「お、お待たせ」
「まっ!?」
「…今更だけど、別に普通で良かったんじゃないの?」
「だってデートだし…今回はエスコートもちゃんとしないとだし…」
「じゃあ…ちゃんとエスコートしてもらわないとね」
「んん…じゃあはい」
「ん…」
「何よー手引いてあげるってのにー」
「いや…最近透ちゃんくっついてこなかったから何か…」
「っいいから!」
「はいはい」
握った手から伝わる気恥ずかしさ、嬉しさ、暖かさ
どれもが紛れもない本物で、その嘘偽りない感情が自分のものと何も変わらない事に思わず笑みが溢れた
生まれた時からずっと一緒で
食べる時も寝る時も遊ぶ時もずっと一緒で
喧嘩するのも仲直りするのも同じタイミング
それぐらい何もかもわかりあった間柄でも、たまには答え合わせして固い絆を確かめ合うのもいいかな
双子の繋がりは、海より深く、血より濃く、ダイアモンドよりも固く結ばれているのだから
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