スリーピング・ジャイアントたちよ、覚醒せよ。 タンバイ・マットソンヘッドコーチ
ジャパンラグビー リーグワン 2023-24を10位の成績で終え、入替戦を経験したブラックラムズ東京。2024-25シーズンを迎えるにあたっては、新体制へと舵を切った。新たにチームを率いることになったのは、タンバイ・マットソン氏。
現役時代はヤマハ発動機ジュビロ (現・静岡ブルーレヴズ) にも所属し、フィジー代表など5か国での指導、フィジー・ニュージーランド両国での代表出場歴など、国際経験豊かな新ヘッドコーチの元で、チームは新シーズンを戦う。
チーム合流から約1ヶ月が経ち、プレシーズン初の練習試合当日試合前にインタビューを行なった。
久しぶりの日本の生活は、いかがですか?
長いこと日本には住んでいなかったのですが(2001-2006年 ヤマハ発動機ジュビロ選手・コーチ)、日本に戻ってきてからとても楽しんでいます。日本に行くと判断をした時に、家族はとてもハッピーでした。日本での前回の経験も素晴らしかったので、どちらかというと家に帰ってくるような印象でした。そして今回は東京の世田谷区がホストエリアになりますので、前回の経験とも違っていて、とても楽しんでします。
ヘッドコーチ就任以前の、ブラックラムズ東京の印象は?
ラッキーなことに、たくさんの友人が日本でコーチングをしていました。それもあって、リーグワンには純粋に興味を持っていて、試合ダイジェスト動画もずっとチェックしていました。世界のベストプレイヤーが何人もプレーしているリーグです。そしてブラックラムズの試合ダイジェスト動画を見ていて、コーチングをしていた友達と話をしていると、ブラックラムズは長年『スリーピング・ジャイアント:眠れる巨人』と思われているという印象を受けました。
試合結果に関しては一貫性が無かったものの、ポテンシャルはたくさんある『スリーピング・ジャイアント』だという印象を持っていました。
これまで合宿などを経て、実際にチームメンバーと過ごした今の印象は?
私の印象はポジティブです。質の高い選手たちが揃っていると感じています。一番感心しているのは、みんながもっとうまくなりたい、去年よりも良いパフォーマンスをしたいと思っていて、全員が高い向上心を持っているところです。新しいチームのヘッドコーチに就任して、みんながうまくなりたい、聞きたい、学びたいと思っていることは、ヘッドコーチにとっては非常に大きなことです。
これからどんなチームにしていきたいと考えてますか?
スポーツにとって重要なのは、一貫性です。前進するため、良くなっていくためには、一貫性があることが必要です。ですから、チームが最初に達成して欲しいことは、一貫性のあるパフォーマンスです。もちろん、そのためには、練習での一貫性が必要です。
そして、世田谷区の代表としてプレーをしたいと思っていますし、素晴らしいチャンスをもらっているとも感じています。世田谷区のために、一貫性のあるハイパフォーマンスをしていく姿を、応援に来てくださる方、サポーターの方にお見せしたいと思っています。
一貫性を達成するために、練習中にフォーカスしていることは?
2つのやり方があると考えています。まず一つ目は、若い選手、つまり1年目や2年目、そして3年目の選手たちを成長させることです。その子たちを素早く成長させることによって、練習のクオリティが上がり、高いレベルになっていきます。
2つ目は、練習でプレッシャーをかけることです。練習するたびに見られているという環境を作り、結果に対して高い期待を与えて経験させることです。それらに対して選手たちは、うまくやれていると思っています。
チームのストロングポイントと、その活かし方は?
バランスの良いチームだと思っています。経験がある重いフォワードパックがいて、良い選手が揃ったバックラインもいるし、バランスが良いところが強みだと思います。過去数年間を見ていると、大学でハイパフォーマンスをしている選手たちをリクルートしています。質の高い若い選手たちがチームに入ってきていて、そこも強みだと思います。
選手育成に関して?
まず1つ目としては、リーダーシップのチャンスを与えていくことが重要だと思っています。今シーズンは、若い選手たちがリーダーとなって引っ張るチャンスを与えていきたいと思っています。
他に重要なのが、若い選手たちに試合に出るチャンスを与えることです。若い選手たちは、プレーすることによって成長していきます。コーチンググループにとってチャレンジングなことは、勇気を持ってリーグワンの試合に若い選手をセレクションしていくことだと思います。若い選手たちは、まだ準備ができていないかもしれませんが、試合に出ることによって経験を得て、素早く成長できていくと考えています。
リーダーシップ育成に関しては、タンバイHC自身の経験によるところがありますか?
リーダーシップは、とても重要です。ラグビー選手を引退した後の成功を確かにするものだからです。引退後にどんな役割をするにしても、全ての職業にはリーダーが必要です。選手たちがリーダーシップを取れる準備をしていく責任が、私たちコーチンググループにはあると思います。リーダーシップは、ラグビーから学べる重要な特性のうちの一つであり、引退後の人生に使えるものです。
良いリーダーになるためには、セルフアウェアネス(自己認識)が必要です。プロフェッショナルな選手であるためには、自己認識が必要です。リーダーシップの役割を与えて教えることで何が成長するのかというと、セルフアウェアネスが育っていきます。組織の中で自分はどこにフィットするのか、他の人たちとどうコミュニケーションを取ったらよいのか、何かを説明する時にどういう方法で説明したほうがより良いか学びます。リーダーシップのスキルを教えることによって、彼らはよりプロフェッショナルなラグビー選手になっていきます。より良いラグビーをするためには、セルフアウェアネスが鍵なのです。
ただ単にラグビー選手という以上の、人として優秀な人材を育てたいと考えているのですか?
その通りです。ラグビーチームとして、重要な責任があると考えます。私たちはラグビーで成功をしようとしています。また選手たちが今できる時に、将来のコミュニティに貢献できるようにする準備もしています。選手たちがラグビーを引退した時に、それが仕事であろうと、家庭であろうと、コミュニティの中であろうと、素晴らしいお手本になれるように準備をすることは、私たちが持っている大きな責任だと思っています。
そんな選手が育っていっていく姿を想像すると、ワクワクしますね
私たちのチームは、リコーによってサポートされています。リコーのビジョンとして三愛精神というものがあります。『人を愛し、国を愛し、勤めを愛す』ということですが、そのリコーの価値感が、このチームの根底に根付いていると思います。
ファンの皆さまへ
私はまだ、ほんの少しのサポーターにしか会ったことがありませんが、私たちには素晴らしいファンがいると聞いています。サポーターの皆さまが、必死に良くなろうとしているこのチームを、これからも継続してサポートしてくださることを願っています。
2024-25シーズンが始まり、皆さまにお会いできることを楽しみにしています。
新体制スタッフとしては、さらに三菱重工相模原ダイナボアーズでの指導経験を持つカール・ホフト氏をFWコーチに、昨シーズンまで静岡ブルーレヴズでアシスタントコーチを務めていた有賀剛氏をアシスタントコーチに加えた体制で、2024-25シーズンに挑みます。どうぞご期待ください!