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あたしの心臓あげる≠ダ・カーポ

風が強く吹いて髪の毛が顔に大きく被さって視界が損なわれた。手でかきあげて前を見た。

親譲りの太くて、多くて、枕に刺さるほどの硬い髪の毛。

今日短くする。向こうが長めの方が好きだって言うから、何となく合わせていた。正直五分刈りにしても良かった。髪の毛に未練なんてない。

でもそこまで短くする勇気がなかったし、似合うのか分からなかった。

心臓をあげてもいい=その人のためなら死んでもいい、そう思えるほど好きになった人と別れた。

いつも恋愛する時は心臓をあげたくなるほど好きになる人としか付き合ってこなかった。だってもし、結婚したら?子どもができたら?全てをコミコミで考えてしまうのは気持ち悪いのだろうか?

ギターの穴の中に真実があるような気がしていた。だからアコースティックギターを練習していたけど、真っ暗な闇に見えてきて吸い込まれそうで長いこと覗くのは怖くなってやめた。

2人でピアノとギターで弾き語りもした。好きな曲があって、ずーっと同じ曲を1時間ループしていたこともある。そこまで2人の趣味は完璧にあっていた。

残響を聴くためにガード下で演奏してみようとキーボードももってえっちらおっちら行ったこともある。

緊急事態宣言がとけて何やる?って話した時、やっぱり2人には音楽しか残ってなかったから、以前行った人気のなさそうな場所にやってきた。2人とも残響、エコーが好きだった。

ループしては消える、ループしては消える。

ループしては消える。

同じように愛したはずなのに。

ちゃんと愛したはずなのに。

精一杯愛したはずなのに。

何がダメだったのだろうか。

思い切ってお店の扉を開けた。

「いらっしゃい」

オーナーが笑いながら挨拶してきた。覚悟してきたのがわかったのだろうか?

「いい加減五分刈りにする?」頭を指さしながら聞いてきた。

「まだ覚悟できないんだけど、、、、」元の髪型が好きだから。





「アリス、今日もやめるか」

オーナーと会話をしてまた好きな元のショートカットにした。

ルイス・キャロルはどこにいるの?


イラストレーター by 妙太郎




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