狭間
夜も更け、皆が寝静まった王城には最小限の明かりしかなく、最低限の見張りしかおらず、門番も二人しかいない。
そこから、離れた森に一人の女が湖のそばに立っている。
しかし、その女には腰の所から足元まで一本の尻尾のような、いや尻尾が生えており、さらには頭には獣の耳が生えている。
彼女は獣人だ。人間でも魔物でもない。
名前はエイダ。最初は王子軍に敵対していたが、王子軍に加わり、魔物を倒している。
湖に写る自分をエイダは見つめる。ふと、上に目をやると月が満ちていた。
「・・・。王子・・・」
エイダは呟く。
最初は敵対していたが、温かく迎えてくれた王子。
獣人と人間いう種族を超えて、受け入れてくれた王子。
今では、吸血鬼や多種多様な種族がいる王子軍。
エイダは嬉しかった。魔物でも人間でもない自分が受け入れてくれたことが、しかし、同時に恐ろしさも感じているのである。
もし、受け入れられなかったら。
そう考えると、夜も眠れなくなる。
「私は・・・獣人・・・」
なんで、尻尾があるのだろう?
なんで、毛があるのだろう?
なんで、人間じゃないのだろう?
「私は・・・わたしは・・・」
その場にしゃがみ込み、身を震わせる。
そして、一言
「人間だったら、いいのに・・・」
そう呟いたのだった。