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f'w/50

懐かしい思い出

まだ鮮明によみがえる

あの小道の奥の曲がり角

そしてもう一度曲がり角

古い物干し竿と自転車と

日当たりの悪い玄関と

手押し車と木の杖と

欠けた茶わんで囲んだ花壇と

くもの巣と 幾つもの回想と

いつか年老いたらもう一度

迎えに行って抱きしめたいと

願って支えに生きていた

だけどもう戻れない

戻りたい 戻れない 小さな家



懐かしい思い出

写真と夢でたぐりよせ

ただいま一つ聞けない昨日

お帰りなさいを言えない今日

いずれ離れていく記憶

命ある人の命の言葉

我が身のような町並みの

幻影重なる牙のあと

持て余しては笑ってる

埋もれた涙の片隅に

見つけた心の 聴こえる先の

近くて遠い明日の明日を

いつ鳴らしに行こうか

遠ざかる 懐かしい 去り行く日へ



懐かしい思い出

あの眼差しもおぼろげに

戻したい時間の無い

あの頃に時間戻せたら

明日の休みは晴れるかなと

友に向けた笑い顔

来月またねと約束を

交わしたお喋りのあの声と

感謝も別れも喧嘩も悔いも

今はすべてガラスの向こう

ガラスへ我が腕千切れと伸ばす

伸び足りぬ手の両脇縫って

言無しの葉が茂りゆく

優しく手 放していく 彼の面影

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