餘部橋梁物語 第46話子供に教えられる。
ここ数日、色々とすべきことが重なっておりまして中々時間が取れません。
> それを見送る猫尾、気がつけば親方もそばに立っています。
> 親方が呟きます。
> 「子供たちに教えられるとはこのことだな。」
>その言葉に深く頷く猫尾でした。
> さて、次回はどんな話になっていくのでしょうか?
「負うた子に教えられる」と言う言葉がありますが、まさに子供たちに教えられるな。
俺たちは、仕事だと割り切って作業をしているから、多少理不尽なことがあってもそれは仕方がないことと思ったりするが、子供たちは純真な気持ちで手伝ってくれているんだな。
子供たちのためにも俺たち大人が頑張ろうじゃないか。
最初は、邪魔しにきたのかと思って鬱陶しかったが、あれだけテキパキと俺たちの仕事を手伝ってくれたら今度は俺たちの立場がなくなってしまうってもんだ。
親方は、猫尾に話しかけます。
猫尾は黙ったまま頷くだけでしたが、思いは一緒でした。
最初は、うるさいガキが仕事の邪魔をしにきたと思っていたが、そうではなくてむしろ自分たちの仕事すらとってしまうような勢いで仕事をしている。
特に、二郎の働きには親方も猫尾も一目置いているのでした。
子供とはいえ、見事なまでに他の子たちを仕切っている姿は見事なものでした。
そんなこんなで、子供も帰り、他の人夫たちも三々五々と帰っていくのでした。
・・・・明けて次の土曜日。
猫尾たちの仕事は基本的に日曜日だけであり土曜日と言えども仕事をするのは当たり前でした。
今のように週休2日制などは夢のような時代だったのです。
その日は土曜日ですので、12時半頃になると二郎がまた昨日と同じように子分を引き連れてやってくるのでした。
「おっちゃん、今日も手伝いに来たぜ。」
「また、昨日みたいに石を運んだらいいのか?」
そういうが早いか、二郎は早速子分たちに整列させて準備を始めていきます。
二郎が声をかけているのか否かはわかりませんが、昨日よりもまた人が増えているような気がします。
猫尾が二郎に声をかけます。
「なんか、毎日増えていないか?」
「ああ、そうさ、おいらが声をかけているんだ。俺たちの駅が出来るから手伝いたいやつは来いって。」
そうすると、みんな少しづつ集まってくるのさ。
二郎は少し自慢げに話します。
こうして少しづつ、工事の進捗とともに二郎たちの手伝う人数も多少の増減はあるにせよ増えていくのでした。
そして、その中に知事に手紙を書いた少年「鈴木一郎」が居たのですが、まさか自分が書いた手紙が発端で、駅が建設されることになったなんて夢にも思わなかったことでしょう。
一郎は、二郎と同級生であり気の置けない仲間だったのです。
二郎は一郎に話しかけます。
「一郎、ここに駅が出来たら良いなぁ。お前のお父ちゃん何て言うだろうな。」
一郎も答えます。
「うちの父ちゃんも喜んでるよ、ここに駅が出来るって言って、だから家に帰ったら父ちゃんにいつも言うんだ。今日はこんなことしたよ・・・って。」
「父ちゃん、嬉しそうに僕の話を聞いてくれるんだぜ」
そんな二人が手伝っている餘部駅ですが、やがて少しづつその姿を現してくるのでした。
と言うところで今日は筆をおきたいと思います。