餘部橋梁物語 第45話
> そんな折、14:00頃になった頃でしょうか。
> 下のほうから、声がしてきました。
> どうも聞き覚えのある声でした。
> そして、それを見て猫尾はびっくりするやら、ほっとするやら。
>その声の主は誰だったかって?
> それは明日のお楽しみといたしましょう。
「おっちゃん、今日も手伝いに来たでー」
二郎の声が現場に響きます。
猫尾が顔を上げると、二郎が子分を連れて立っていました。
昨日よりも2・3人増えています。
猫尾が、
「おい、昨日より人が増えていないか?」
と言うと、二郎は少し自慢げに
「おいらが声かけたら、一緒に手伝いたいと言って集まってきたんだ。」
二郎の顔は自信満々に答えます。
猫尾の顔も少しほっとしたと言うか、子供たちが手伝いに来てくれたことに安堵する猫尾でした。
早速、猫尾は二郎に、指示を出します。
「この辺りの、大きな石をどけているので、石を運ぶのを手伝ってくれるか。くれぐれも怪我のしないようにな。」
2日目ということもあり、猫尾もどもらずに喋れたようでした。
二郎は、頷くと早速子分たちに指示を出しています。
どうやらバケツリレー方式で石を運ぼうとしているようです。
猫尾は感心するばかり。
あの、二郎というガキ大将、煩いだけのやつかと思ったけど中々仕事の仕方をわかっているなぁ。
むしろ大人の方が仕事が遅れ気味になっています。
親方の怒声が響きます。
夕方までに、ここまでするぞ。
まだ半分しか終わっていないぞ・・・。
のろのろとでは有りましたが、人夫たちのピッチも早くなってくるのでした。
やはり、子供たちの頑張りが無言のプレッシャーになっていたのでしょう。
良い意味でプレッシャーがかかったと言えましょう。
遅れ気味だった大人の作業のほうは、むしろ子供たちの頑張りで追いつくことが出来ました。
餘部の山間に日が傾き始める頃、親方の声が響きます。
今日の作業は終わりだ・・・。
猫尾は、二郎に声をかけます。
「坊主、今日の仕事は終わりだ。」
二郎は、猫尾に
「おっちゃん、もう仕事終わりか?」
猫尾は二郎に、
「今日の仕事は終わりだ、良く頑張ってくれたなぁ。」
二郎と子分の子供たちは、りんごの様な頬をさらに赤くさせて照れているようです。
二郎は口にこそ出しませんでしたが、とても嬉しい気持ちを抑えることが出来ませんでした、そしてそれは他の子供たちも同じだったのです。
二郎は子分の子供たちに、
「おい、帰るぞ。みんな俺についてくるように。」
そして、振り返るともう一度猫尾に
「おっちゃん、明日は土曜日だけど、仕事するんか。」
猫尾が答えます。
「ああ、明日も夕方まで仕事だ。」
そこまで言いかけると、その言葉を遮るように二郎が答えます。
「おっちゃん、明日昼から来るわ。」
そう言ったあとそそくさと子供たちを引き連れて帰っていくのでした。
それを見送る猫尾、気がつけば親方もそばに立っています。
親方が呟きます。
「子供たちに教えられるとはこのことだな。」
その言葉に深く頷く猫尾でした。
さて、次回はどんな話になっていくのでしょうか?
実は私にもわかりません。(^^ゞ
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