餘部橋梁物語 第48夜
長々と続けてきたこの物語も今日を入れて後3回となりました。
どうか最後までお付き合いくださいませ。
> やがて、親方はその長老格の男に話しかけるのでした。
> その答えは、意外なものでしたが、長老格の大人を納得させるには十分な言葉でした。
> それは?
親方は、言葉を選びながら、朴訥とそれでいて、長年の経験からの言葉でしょう。
自信を持った口調で、長老格の人に話しかけるのでした。
「あなたの申し出は。大変ありがたいことです。でも、われわれはこれを仕事として受けている以上、きちんと仕上げなくてはなりません。」
「子供たちも石を運んだりしていますが、あくまでも遊びの延長で手伝っているという位置づけで説明しています。」
そこに、大人の皆様も加わってということになると、正直現場は混乱するでしょう。」
「ということは、われわれがお手伝いすることはむしろ迷惑ということでしょうか?」
少し不満げに、長老格の男が返答すると、言葉を遮るように、話を割り込ませるのでした。
「いえいえ、そういう意味ではなくむしろ、子供たちを監督するという位置づけでお願いしたいのです。」
「といいますと?」
「はい、子供たちが来る前に来ていただき、私のほうで段取りを考えますのでその指示をあなたにお願いしたいのです。」
「子供を監督しながら、子供では出来ないところをお手伝いしてあげてほしいのです。」
「そうすれば、私たちももっと力仕事などに人を割くことが出来ます。」
親方から出た言葉は、意外なものでしたが。
長老格の男を納得させるには十分な言葉でした。
彼は実は、ガキ大将の二郎の父親だったのです。
自分の子供が毎日毎日、学校が終われば駅を作るんだといって飛び出していく、あまり毎日その話を家でするものだからついついこちらも気になってしまう。
そこで、二郎が学校に行っている間にこっそりやってきたというわけでした。
親方は当然そんなことは知りませんから、子供たちは一生懸命がんばってくれているが、子供たち怪我をさせるわけにも行かないこと・・などなど、初対面の二郎の父親に話しかけるのでした。