日記
社会は、いつだって厳しかった。
ギャンギャンにやる気のある上司、彼は2週間もすれば辞めてしまうため、ごりんごりんに俺に業務を飲み込ませてきた。最初はよかった。二郎で鍛えられた喉のキャパは大きかった。でも徐々に息が詰まり始め、酸素が脳にいかなくなった。「いま問題なのは、わからないことをメモしてないこと」「これ3回目」「引き継ぎシート見ればわかるのに見てないから、必要ないね」おれの耳はどんどん遠くなる。「一回落ち着いて」「ゆっくりやろう」かすかに聞こえているが、呼吸は整わない。くそっ。自己嫌悪に襲われる。目の前の膨大なデータ、溢れかえるファイル、タブ、それらが俺の首にまとわりついて、どんどん海の底に、沈んでいく、、、
あの感覚、俺は覚えている。
------ hudousan.
そう、何を隠そうその上司は不動産で長く叩き上げられた不動さんだった。不動さん(仮名)は最初は優しくて、「苦労したって聞いたからロードマップを用意した」と、エンジニアになるための勉強環境を教えてくれたり、引き継ぎシートをまとめてくれてたり、俺は感動していた。しかし俺の社会人見習い2年目の拙さにゴン詰めを開始した。俺はもうかつての恐怖と挫折を思い出し、身動きが取れなくなって、バグを起こしたみたいに固まった。
でも俺だっていちおうは社会人見習い2年目だ。溺れながらもなんとか顔面左側の細胞ひとつひとつに神経を集中し、持ち前のエラを進化させてエラ呼吸を体得した。そうしてなんとか今は水中でも命を継続させている。
酷いことみたいに書いているけど、上司はいい人だ。俺の欠点である、コミュニケーション取ることが苦手、整理が苦手、失敗を恐れる理想の高さなどに対して的確にごん詰めしてきている。「タブ多いから今消して」と躾られ、実際、整理しながら長いタスクを消化できるようになった。「できないことは仕方ない、直せばいいだけ、落ち込む時間は無駄」と教え込まれた。
「考えるな、行動しろ。」
トムが耳元で囁いてる。
そんなことは俺が1番よくわかってるんだ。
でも、思い出しちまうんだよ。
あの日、俺がF14で飛行訓練に臨んでいたとき。
気づかなかったんだ、俺の船はジェット後流に巻き込まれた。
「ダメだ、落ちるぞ!!!!早く部活辞めろ!!!!キャノピーに気をつけろ!!!!」
ゴンっ
自信家としてのもう1人の俺は、あの日、部活を辞めた日に、亡くなってしまった。
俺は今もあの自分を探している。
fin.
メモ
・落ち込む時間が勿体ないのは勿論だけど、落ち込む人間こそ俺であることも勿論なんだよな。
・人間関係の悩みというよりも俺個人として精神病を患ってる説が濃厚になってきた。
・何があっても続ける。